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15.
しおりを挟む妹ルナセアラとパトリック様の婚約パーティーとなった誕生日パーティが終わった。
その夜、ミルフィーナはまだ現実が受け止め切れていなかった。
表面的にはパーティーの時と同じく妹の婚約を祝福する姉のように見えていただろう。
両親ですら、まるでミルフィーナがこうなることを望んでいたのだと納得した顔をしていた。
パトリックが言ったことが、両親が言ったことが、ミルフィーナが言ったことが、もう事実であるかのように自分たちにも貴族たちにも浸透していくことだろう。
しかしまだ、ミルフィーナの心は混乱中。
それでもミルフィーナは姉の顔をして妹ルナセアラに言った。
「婚約おめでとう。私も嬉しいわ。」
「ありがとうございます。お姉様。」
妹は綺麗な笑みを浮かべた。
この子はまさかパトリック様が言ったことが事実だと思ってる?
ミルフィーナはルナセアラにも自分の本心を語ったことがなかった。
『パトリック様が素敵すぎて一緒に過ごすなんて恥ずかしすぎる』ということを。
『パトリック様が好き』だということを。
ちゃんと話しておけば、こんなことにはならなかった?
私たちは仲が悪い姉妹というわけじゃない。
特別仲が良いというわけでもないけれど、普通の姉妹だと思っている。
ただ、たった1歳違いでも、ミルフィーナは姉。
その姉という立場に自分で自分を縛り付けてきた。
妹に弱音は吐かない。悩みごとを相談しない。
自分は姉なのだから、弱音を聞いてあげたり、悩みごとの相談に乗ってあげる立場なのだ、と。
しかし、改めて考えてみると、ルナセアラから頼られたことはあっただろうか。
小さい頃はまだしも、ここ何年もないと気づいた。
正確にはいつから?
一緒に後継者教育を受け始めた頃?……違うわ。ミルフィーナの14歳の誕生日、ルナセアラの13歳の誕生日の頃からなのかもしれない。
最初にパトリック様の求婚を断った頃から。
あるいは、その前のパトリック様と結婚すると言った頃から?
あのミルフィーナの言葉で、ルナセアラは公爵家の跡継ぎになることが急に決まったんだわ。
だから、姉を頼らなくなった?
跡継ぎとしてしっかりしようと頑張っていた?
それなのに、ミルフィーナはパトリック様の求婚を断ってしまった。その翌年も。
その頃から、ミルフィーナも再び後継者教育を受け始めた。
父はミルフィーナがどうしたいのか何も言わないから、わからなくなったのでしょうね。
どちらが継いでも大丈夫なように考えたんだわ。
だけど、そのことがルナセアラも不安定な立場に置いてしまったのよ。
姉は嫁ぐのか、公爵家を継ぐのか。
はっきりしない姉に、ルナセアラが頼るはずもないのに。
あの子の婚約者が決まらなかったのも当然のことだったとようやく気づいたわ。
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