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しおりを挟むエメット公爵家を継ぐ気でいたミルフィーナは自分にオリバー殿下の婚約者の打診が来たことで、自分は必ずしもエメット公爵家を継がなければならないわけではないと気づいたのだろう。
そして、パトリックの名前を出した。
彼女の大好きな絵本の中の憧れの王子様に似たパトリックのことを。
「ミルフィーナ嬢が僕に嫁ぐと言い出したことで、君が公爵家の跡継ぎになる必要があった。だから、エメット公爵家はオリバー殿下の婚約者候補から辞退したということか。」
「そうです。父は姉の望みを叶えようとハリールス侯爵家に婚約の打診をして早々に婚約を結ぶことにしようと言いました。ですが、姉は『大勢の人の前で求婚されたい』と言い、誕生日パーティーを指定しました。」
それなのに、パトリックは求婚を4回も断られることになった。
「最初は『赤い薔薇じゃなかったから』でしたが、後のことは両親も私もなぜ断ったのかわかりません。姉に聞いても答えてくれないのです。
なので、父は姉が本当にパトリック様との結婚を望んでいるかがわからないし、パトリック様が姉に求婚することを止める可能性も考えて、私と一緒に学ばせているのです。」
なるほどなぁ。何を考えているのかわからない娘に公爵も困っているんだな。
「わかったよ。教えてくれてありがとう。」
「いえ。……もう姉を誘わないのですか?」
「公平じゃないと思わないか?結婚を望んだのは彼女で僕じゃない。だけど僕は彼女の意に沿うために何度も交流を望んできた。彼女からは一度もない。
だからね、今度の彼女の誕生日まで僕から誘う気はないんだ。」
「姉が誘うと……受けてくださる、と?」
「それはもちろん。いずれにしても、ミルフィーナ嬢の18歳の誕生日で決着をつけなければならない。『また来年』はもう、ない。」
「私はそのことを、姉に伝えるべきですか?」
「それは君の自由だ。今、こうして君と偶然会ったことで話したまでのことだから。」
「そうですか。」
聞きたいことは聞けたので、ルナセアラには先に店から出て行ってもらった。
ミルフィーナの誕生日から10か月。
エメット公爵家からは何もない……ことはない。2か月後に迫ったミルフィーナ18歳の誕生日パーティーの招待状が届いた。
出席で返信した。
ミルフィーナの誕生日から11か月。
エメット公爵家からは何もない。
しかし、学園でミルフィーナが友人と話しているところを耳にした。
「ミルフィーナ様、今年の誕生日こそ、ですよね?」
「あんな美形に5度も求婚させるだなんて、さすがミルフィーナ様!」
「お楽しみいただけているようで嬉しいわ。皆様の期待に応えて筋書きが変わってしまいましたけど、今度の誕生日はもっとご満足いただけると思いますわ。」
……筋書き、か。
趣向、寸劇、演出、見世物。噂のどれもが間違いじゃなかった。
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