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さすがに3度も求婚を断られると、周りはそういう趣向だと思うようになっていた。

求婚を受けるのではないかと思わせながら、やはり断る。

求婚を受けるのはいつなのか。来年か?再来年か?いや、来年で決まりだろう。指輪を望んだんだ。

あるいはもう正式に婚約を交わしているのに、誕生日パーティーを盛り上げるための寸劇なのでは?

そう聞かれても、ミルフィーナは笑って誤魔化していると耳にした。 


令嬢たちのそんな話題を耳にしたのか、パトリックの友人が聞いてきた。


「なあ、パトリック。演出なわけじゃないよな?」

「ああ。でも見世物にされているようなものだ。」

「断れない……んだよな?」

「何を?公開求婚を?それとも、求婚しなきゃいけないことを?」 

「どちらも。やっぱりお前が望んでのことじゃないんだよな?」


友人は聞きたくても聞けなかったのだろう。
おそらく、求婚することになった事情をほとんどの貴族は知らない。
いや、伯爵家以上の親世代だけには伝わっているかもしれない。
ミルフィーナとパトリックに縁談の話が行かないように。

だから、同世代はパトリックがミルフィーナを望んでいて、求婚を続けていると思っているはずだった。


「ミルフィーナ嬢が13歳の時、オリバー殿下の婚約者候補になりたくなくて、僕と結婚するって名前を出したらしい。エメット公爵夫妻がうちの両親に婚約の打診をしてきた。そして14歳の誕生日にミルフィーナ嬢に求婚をしてほしいと頼んできたんだ。」

「え?え……?でも断られた、よな?」

「意味不明だろ?しかも、『また来年』って何だよな。」

「ミルフィーナ嬢って変わった令嬢だったんだな。でも、個人的にも会っていたよな?」


彼女と一緒にパーティーに出たこともあるから、不思議に思うよな。


「年に数回程度。彼女のことを知ろうと思って毎月誘っているんだけど、半分以上は会えない。」

「何だそれ?約束してるんだろ?」

「ああ。観劇や友人のパーティーの約束は守る。だが、公爵邸でのお茶の約束はほぼ妹が来る。」

「屋敷にいるのに?」

「いる時もあれば、出かけてしまった時もある。」

「意味不明だ。よく耐えてるな。」

「逃げようがないからな。少しでも彼女のことを理解したいと思いながらも、それに意味があるのかと疑問を感じる時もある。年々時間の無駄じゃないかとも感じてる。」
 
「だよなぁ。婚約者なら仲良くなるための努力は報われると思うけど、それ以前の話だもんな。案外、お前が別の令嬢に婚約を申し込んでも、ミルフィーナ嬢は気にしなかったりするかもな。」
 

別の令嬢に?そんなことは可能か?

いや、エメット公爵家が怒ると両親が窮地に立たされるかもしれないし、エメット公爵を敵に回してまでパトリックの求婚を受ける令嬢もいないだろう。
 
ミルフィーナ嬢が『また来年、求婚してね』と言わずにパトリックからの求婚を正式に断るしか、パトリックが別の令嬢と結婚することなど不可能だ。


 
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