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しおりを挟む赤い薔薇を渡した。それでも受け入れられなかった求婚。
パトリックは自分が何をさせられているのか、疑問を持つようになった。
『ミルフィーナは本当にパトリックとの婚約を望んでいるのだろうか』
これが最大の疑問だ。
パトリックは両親にも聞いた。
「僕は来年もミルフィーナ嬢に求婚しなければならないのでしょうか?」
「……エメット公爵夫妻はそれを望んでおられる。しかし、2度に渡る求婚拒否。何を考えているのか。」
「拒否っていう感じでもなかったわ?あれはそうね、楽しんでいたって感じかしら。」
「楽しんでいた?」
母が言うには、昨年、求婚を受け入れなかったにも関わらず今年も求婚にきたパトリックに、ミルフィーナは高揚感を得たのではないかということだった。
そしてまた同じことを経験したい。だから今年も『また来年、求婚してね』だったのではないか、と。
「本当なら今年は求婚を受けるつもりでいたということですか?」
「そうだと思うわ。でも、また試したくなった。そんなところじゃないかしら。」
「なら昨年はどうして?」
「おそらく、薔薇の色がオレンジ色ではなく赤が良かったっていうのは本当のことね。公爵夫人によると絵本の王子様が赤い薔薇で求婚していたらしいの。それと同じように求婚してもらいたくての『また来年、求婚してね』だったのだと思うわ。」
昨年のは単なる我が儘。今年のはいやがらせか?
「僕をからかっているってことでしょうか。」
「少し違うわね。ミルフィーナ嬢はあなたの気持ちは考えていないのかも。自分がそう望んだから。」
最悪だ。自分勝手すぎる。
「それでも来年も求婚しなければならないのですか?」
「お前には悪いが、もう逃げられないだろう。お前たちの婚約は既定事項として認知されている。お前への縁談の申し込みは無くなった。おそらく向こうもそうだろう。」
「そもそも僕は望んでいないのですが?」
「……格上からの打診だ。余程の理由がない限り断れない。」
ミルフィーナはオリバー殿下の婚約者になりたくないと言ったのに?
理不尽でも政略結婚は貴族の常。
特に利益もない政略結婚らしいが、パトリックは受け入れるしかなかった。
問題は、ミルフィーナから言われたこと。
ルビーやガーネットで薔薇の形を作れと言われた。
どう考えても無理難題ではないか。
「ルビーやガーネットに限らず、宝石で薔薇のような花びらの多いものを形作っては輝きが台無しになってしまうわ。削るのは大変よ?それにある程度の大きさも必要になるし。うちはルビーやガーネットの産地ではなくってよ?
ガラスで十分じゃないかしら。」
母のその一言で、来年のプレゼントはガラス細工の薔薇にすることにした。
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