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しおりを挟むミルフィーナではなく妹のルナセアラと話をすることになったパトリックは、昨日には言えなかった祝いの言葉をルナセアラに伝えた。
「誕生日おめでとう、ルナセアラ嬢。」
「あ、ありがとうございます。」
パトリックは念のためにと持ってきていたプレゼントも渡した。
「わあっ!きれい。」
ルナセアラに渡したのはリボンだ。喜んでもらえてよかった。
実は、昨日の誕生日パーティーは、ミルフィーナだけでなくルナセアラの誕生日パーティーでもあった。
昨日はミルフィーナの誕生日で、今日がルナセアラの誕生日。
1日違いの年子姉妹の誕生日パーティーは、ミルフィーナの誕生日に合わせて行われているらしい。
「あ、あの、お姉様が、求婚は赤い薔薇でするものでしょ?っておっしゃっていました。」
「……オレンジ色だったから断られたってことか。」
「ごめんなさい。お姉様、オレンジ色がすごく好きなのに。」
「いや、君が謝ることじゃないよ。気にしないで。」
そう。悪いのはルナセアラじゃない。悪いのは……誰だ?
結局、婚約は纏まらず、来年の誕生日に再び求婚することを望まれた。
こうして1度目、14歳の求婚は失敗に終わった。
母の勧めで、ミルフィーナの15歳の誕生日までに仲を深めようと思った。
何しろ、パトリックはミルフィーナのことを全く知らない。
政略結婚なんてこんなものだとミルフィーナに求婚したが、また来年とダメ出しを食らったのだ。
月に一度、ミルフィーナを誘ったが、その日は都合が悪いと断られることもあった。
断られなくても、エメット公爵家を訪れればやって来るのはなぜかルナセアラだった。
「ごめんなさい。お姉様が起きたばかりでお会いできないって。」
「具合が悪いのか?」
「いえ、違うの。夕べ遅くまで侍女と一緒にボードゲームをしていたらしくって。」
申し訳なさそうにルナセアラがそう言うのを、パトリックは苦笑して言った。
「元気ならいいさ。ルナセアラ嬢、僕の相手をしてくれる?」
「はい。もちろんです。」
パトリックはルナセアラと一緒にお茶の時間を楽しんだ。
こうしたことが何度もあった。
そしてミルフィーナの15歳の誕生日。
パトリックは赤い薔薇を持ってミルフィーナに求婚した。
「ミルフィーナ嬢、僕と婚約してください。」
「……赤い薔薇だけなの?これだけじゃ枯れてしまって形に残らないわ。
あ、そうだわ。赤い宝石、ルビーやガーネットを薔薇の形にしたらどうかしら。また来年、求婚してね。」
とミルフィーナは誕生日プレゼントとして赤い薔薇を受け取りながら言った。
こうして2度目、15歳の求婚も失敗に終わった。
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