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リディアは4歳で母と別れることになった時のことを覚えていた。 

 
「あの朝、ユリナじゃない侍女に言われたの。
 おとうさまとおかあさまのどっちががいいか聞かれたら『おとうさまがいい』と答えなさいって。
 そうじゃないと、後で嫌いなお野菜をいっぱい食べることになるからって。
 言うことを聞いたらご褒美がもらえるって。……もらえなかったけど。」
 

いつまで経っても戻ってこない母親がいつ戻ってくるかをリディアの侍女ユリナに聞くと、戻ってこないと言われた。
お父様はお母様と別れて、新しいお母様が来ることになった。
リディアのお母様はその人になる。

それを聞いて、リディアは新しいお母様はいらない。お母様のところに行くと言った。

だが、リディアが『おとうさまがいい』と言ったから、ここにいることになった。
あの時に『おかあさま』を選んでいたら、一緒に行けたのだとユリナは説明したという。 

ユリナはリディアが期待しないように、ハッキリ言ったようだ。

リディアはしばらく泣き暮らし、伯爵夫妻も困った。
だけど、『頑張って勉強したら会わせてあげる』と言われ、また勉強し始めた。

しばらくは、父親にもアビゲイルにも会わないような生活だったらしい。
弟が産まれても会うこともなかった。
 
しかし、6歳になる少し前、伯爵夫妻の体調が悪くなり始めた。
その頃からリディアは構ってもらえなくなり、アビゲイルの嫌がらせが少しずつ始まった。

侍女ユリナはアビゲイルに意見を言ったため、辞めさせられた。
その後つけられた侍女たちは、アビゲイルの指示で嫌がらせばかり。
いらないと部屋から追い出した。

罰を与えるために食事を抜きにすると、コックがアビゲイルを批判した。
だから、リディアに優しかったコックも辞めさせられた。

家庭教師も嫌がらせ、食事も嫌がらせ、着るものも少なく、お湯も使えず。

だけど、8歳になる少し前に、アビゲイルが焦って言い出した。


「あ~。忘れてた。この子、8歳になるんじゃない。いたぶって遊んでる場合じゃないわ。
 いい男を掴まえてもらわないといけないのに、ガリガリじゃないの。
 もうっ!あ、でも同情して声かけてもらえるかも?
 服も買わないといけないし。あー面倒。」 


そして、アビゲイルが買ってきた数着の服はどれも8歳児には合うのだろう。
だけど、6歳児ほどの身長しかないリディアには大きかったのだ。


「あーもうっ!リボンで後ろを縛れば大丈夫。何年も着れるわ。」


という状態でお茶会デビューをしたらしい。




リディアの状況を聞いたユーフィリアがオラン伯爵家に来るとなった時、アビゲイルに言われた。
 

「あんたの母親は、あんたの他に2人も子供を産んでいるの。
 あんたはもう必要ないの。邪魔者扱いになる。
 母親についていったら、もっとひどい目に合うよ。
 いい?ここにいたいって言うの。わかった?」


そう言われていた。

だけど、久しぶりにあったお母様は優しく抱きしめてくれた。
食事や勉強、侍女についてもお父様に言ってくれた。
お母様と一緒に暮らす方がいいんじゃないかって言ってくれた。

それでもアビゲイルに言われた通り、再び『おとうさま』を選んだ。
そうしないと、二度とお母様に会えない気がしたから。
答えを間違えると、もう外にも出られないし、お母様も会いに来てくれない。そう思った。

お母様は愛してるって抱きしめてくれて……両手を握った隙に手紙を握らせた。
 

こっそり読んだ手紙には、必ず助け出してあげるから待っててほしい。次のお茶会で出席している子供かその母親に誘われたら付いていくようにと書かれていた。

お茶会が待ち遠しかった。アビゲイルの言うことよりもお母様を信じていた。
次に外に出たら、アビゲイルのところに帰らなくてもいいようにしてくれる。
そう思うと、以前よりかは減ったけど、それでも抓られたり叩かれたりすることにも耐えられた。

そして、そのお茶会で誘われた女の子についていくと、お母様が待っていて抱きしめてくれた。

体をあちこち確認されて、話を聞かれて、知らない家に連れて行かれた。

お母様の新しい家族の家だった。
それに、何度か会ったお母様の親、祖父母もいて抱きしめてくれた。

弟と妹もいて。新しいお父様と祖父母もいて。

それから15歳まで愛情たっぷりに育てられることになる。 


 

 
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