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しおりを挟む事態が動いたのは2か月後にあった子供のお茶会だった。
リディアに話しかけた令嬢がおり、2人で仲良く席を離れた。
それはリディアの保護に動いたためだった。
ボルトとアビゲイルはそれに気づかず、リディアがどこに行ったのかも気にしなかった。
しかし少しして、ボルトとアビゲイルは違う部屋に案内されることになった。
訳の分からない2人が困惑していると、騎士たちが数人、部屋に入ってきた。
「これはなんだ?」
「オラン伯爵令息夫妻ですね。あなたたちをリディア嬢虐待容疑で取り調べします。」
「は?虐待?どういうことだ?」
「何かの間違いよ!」
「間違いではありません。リディア嬢の体を女性騎士が確認しました。
いろんなところに痣があります。
それをつけたのはほとんどが夫人、あなたですね。」
「は?アビィ?お前が?」
「ち、違うわ。使用人たちがやったのよ!」
「ええ。使用人たちがつけた傷もあります。あなたに指示されてね。
ですが、ほとんどがあなたがつけたものです。
使用人が自供及びあなたの行いを供述しました。
それに、食事も量を減らしたり味のないものにするように指示していたそうですね。」
「そ、それは太らないようにしてあげたのよ。太ってるよりも痩せてる方がラインが綺麗だわ。」
「限度というものがありますが?リディア嬢は8歳ですが、5歳児ほどの体重しかありません。」
「ユーフィリアか?あいつが通報したのか?」
「ユーフィリア、とは誰です?」
「元妻だ。少し前に家に来た。」
「勘違いなさっているようですが、前回のお茶会でリディア嬢の虐待の疑いは通報されています。
何件もね。痩せすぎだし、ぶかぶかの服の下に痣が見える、とね。
元奥様は、それを聞いて確認しに行かれたのでは?」
ボルトは、リディアが病気ではないかという噂を聞いたとユーフィリアが手紙をよこしたことを思い出した。
子供のお茶会に出ていないユーフィリアに告げ口した夫人がいるのだ。
通報があってもおかしくはなかったのだということに、ようやく気づいた。
「確かに、痩せすぎだとか髪や肌が荒れてるとか侍女をつけろとかいろいろ言ってたな。
だけど、それはリディアが嫌がったからだろう?
食事の量が少ないのも好き嫌いが多いからって聞いていた。
なんでアビィが痣をつけるようなことをしたのかは知らないが、躾じゃないのか?
虐待だなんて、言い過ぎだと思う。」
「あなた、自分の娘があんなに痩せているのに心配じゃなかったんですか?
昔から痩せていましたか?元奥様がいらした頃は娘さんはそんな姿ではなかったでしょう?」
確かにそうだ。
ユーフィリアがいた頃、そして両親がいた頃にたまに見かけるリディアに違和感はなかった。
ここ1年半ほどだろうか?アビゲイルがリディアの我儘を伝えてきたのは。
リディアの我儘を許す侍女やコックを辞めさせることにしたとアビゲイルは言った。
それからじゃないか?痩せて陰気な姿になっていったのは。
その後の調査で、マナーや勉強の家庭教師はアビゲイルが選んだ悪質な者たちで、痛めつけたり、学園で学ぶような授業をしたり、顔や体をベタベタ触る者だったりとリディアが部屋に籠って拒否するのが当然のような人選だったらしい。
両親がいた頃は両親に、両親が領地に行ってからはアビゲイルにリディアのことを任せていたボルトは何も知らなかった。
アビゲイルが言ったことをそのまま信じていたのだ。
無関心も虐待のようなものだが、貴族の男は子供が一定の水準なるまでは妻や家庭教師、使用人に任せるということも少なくないので、ボルトは無罪放免とされた。
アビゲイルは悪質な虐待を行ったということで、刑が確定するまでは捕らえられることになった。
その後の使用人の聴取で、アビゲイルがボルトの両親にも毒を盛るように指示したことが発覚し、アビゲイルには刑罰が科せられるだろうと言われた。
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