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食堂近くの応接室に入り、伯爵夫妻が昼食を食べ終えるとここに来てもらうように頼んだ。

ソファに隣同士に座った夫とアビゲイルがイチャイチャしているのをどうでもいいと思いながら窓の外を見ていると、伯爵夫妻がやってきた。


「ボルト、どういうことだ?そちらのお嬢さんは?」

「彼女はアビゲイル・グレイ男爵令嬢。僕の子供を妊娠しています。
 僕はユーフィリアと離婚して、アビゲイルと再婚します。」


伯爵夫妻は息子夫婦がうまくいっていないことを知っているし、ボルトが遊んでいることも知っていた。
だが、ユーフィリアは伯爵令嬢でアビゲイルは男爵令嬢。
礼儀作法の面で不安を覚えたし、自分が愛人という立場で妊娠したのに堂々とこの場にいてボルトとイチャつき、ニコニコとしている姿にも不安を覚えた。
しかし妊娠している以上、通常であれば庶子として引き取るところだが、離婚して妻にすると息子が言い、妻であるユーフィリアがそれを認めたようであったので、反対するわけにもいかなかった。


「ユーフィリアが認めているようだから、私も離婚・再婚を認めよう。
 リディアはどうする?」

「リディアは私が連れて行きます。
 アビゲイル嬢との新しい生活にリディアはご迷惑になるでしょうから。」

「だが、腹の子が女の子の可能性もある。」

「ええ。ですが、いずれ男の子が生まれるかもしれません。
 もし女の子ばかりでも、やはり自分の子に継いでもらいたいと思うでしょうから。」

「まぁ、そうだろうな。わかった。では手続きをしよう。ユーフィリアは実家に戻るんだな?」

「ええ。遣いを出せば、明日にでも馬車を用意してくれるはずです。」

「そうか。では慰謝料は後日送ることにする。」

「っ父上!慰謝料などどうして渡すのですか。」

「この阿呆が!お前の不貞は明らかだろうが!
 子供を1人生み、次期伯爵夫人としての社交をこなし、ユーフィリアに瑕疵はない。
 お前が離婚して再婚する妻が生む子供は月足らずだ。不貞の証拠だ。
 慰謝料もなく放り出せば、この伯爵家が非難されるんだ!」

「……わかりました。問題なく離婚に至った証明ということですね。
 離婚できるなら、それでいいです。」


いや、問題があって離婚に至ったのだし、揉めたとしても慰謝料を払うのは当然のことだけど?

お義父様……オラン伯爵がまともな考えの人で良かった。



実家に手紙を送り、明日の朝に迎えを頼んだ。

装飾品は伯爵家由縁の物以外は持って行っていいと言ってくれた。
多くはないが、誕生日に義母から頂いた物や婚約時や結婚当初に夫からプレゼントされたものもある。
義母からのプレゼントはいつかリディアに、夫からのプレゼントはお金に変えよう。。。
ドレスは全部持って行っていいと言ってくれたので、これもお金になる。
明らかに新しい嫁とはサイズが違うし、手直しして着せることも難しいから邪魔なのだと思った。

アビゲイルほど胸がなくてすみませんね。だけど、標準はあるわよ!



リディアの荷物はそれほど多くない。
小さくなった服は置いていくし、4歳児の服はまだまだ小さいから。
一晩かけて侍女たちと荷物をまとめた。運べない服は後日送ってもらおう。


あとは明日の朝、離婚届にサインをしてリディアと出て行くだけ。
 
いろいろとスッキリした気分で眠りについた。


しかし、翌朝になって想定外のことを言われることになった。 


 


 
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