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しおりを挟むランジェとエンジュは侯爵家の姉妹。上に兄もいる3人兄妹。
姉妹は年子だが、双子のようにそっくりで見分けることのできる人物は少なかった。
そして、とても仲の良い姉妹であったことは間違いない。
姉のランジェは、公爵家のラルフと結婚して4年。
妹のエンジュは、侯爵家のドイルと結婚して3年。
それぞれ、幸せに暮らしていたが悩みはあった。
姉のランジェは、4年経っても妊娠しないことに焦っていた。
こっそり調べたところ、自分側に問題があるということがわかった。
このままでは離婚か、愛人に子供を産ませるか、養子か。
……自分に問題があるのに、ラルフの実子が跡を継げないというのは間違っている。養子はない。
しかし、愛するラルフと離婚したくはない。
自分が子供を産めないということを伝える勇気もない。
ランジェはどうしたらいいのかわからなくなっていた。
妹のエンジュは、妊娠しやすい時期を避けるように抱く夫を怪しんでいた。
まだ子供が欲しくないからなのか。他の理由があるからなのか。
夫に問い質してみたところ、結婚前に付き合っていた女性が別れた直後に妊娠していることがわかり、黙ったまま自分たちの結婚式直前に男の子を出産したということを結婚してから知ってしまったらしい。
関係を切ったつもりでいたのに、庶子が発覚した。
援助が欲しいと言われ、毎月、金を渡すうちに関係が戻ってしまったという。
エンジュが妊娠してしまうと、跡継ぎがこじれる。
もちろん、正妻のエンジュの子が跡継ぎに相応しいが、女の子であった場合は?
このままエンジュが妊娠しなければ息子を引き取れるのではないか、そう考えたらしい。
既に3歳になる息子が可愛いと引き取りを懇願する夫に驚き、エンジュは家出をした。
エンジュが訪れたのは、もちろん姉のランジェのところ。
家出の経緯を語り、離婚するか、庶子を引き取るか、庶子と愛人を無視するか。
夫を愛しているというエンジュに、『妊娠すれば自分の子供を跡継ぎにすると約束させればいい』と言われ、手紙を出した。
エンジュの夫からの返事は、『3歳の息子を跡継ぎにする。それを認めなければ離婚』というものだった。
夫の愛情が自分よりも愛人と庶子にあることを知り、エンジュはひどく落ち込んだ。
そして、自分が離婚届にサインをしないという方法を選んだ。家出の続行だった。
その決意を知り、姉のランジェは一つの案を思いついた。
家出中に、『エンジュにラルフの子供を産んでもらえばいいのではないか』というもの。
自分たちは似ている。そっくりだ。
ラルフは私たちを見分けることができる一人ではある。
だけど、酔った状態なら?
ベッドにいるのが妻だと思い込んでいる夫は気づかないかもしれない。
ラルフが自分ではない女を抱くのは嫌だ。
だけど、それが自分の大切な妹であるならば、許せる気がする。
チャンスは一度きり。
繰り返せば怪しまれるかもしれないし、何度も抱いてほしくないという嫉妬もあるから。
うまくいかなかったり、一度で妊娠しなかった場合は正直に子供が産めないことを話そう。
まず、妹のエンジュがこの話に乗ってくれるかどうか。それからだった。
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