突然の契約結婚は……楽、でした。

しゃーりん

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半年後、クルズと入籍した後に、両親に会って告げた。


「行方がわかったと思えば、また結婚しただと?今度は契約などしていないのだろう?苦労して倒れたらどうするんだ?離婚して帰ってきなさい。また私たちが面倒見てあげるから。」

「万が一倒れても夫も義父も医師なのですから何の心配もありません。というか、私はもう元気です。
10年間の間に風邪を引いたのも2回だけだったのですよ?侍女たちよりも元気でした。
もう私に構わず、孫を可愛がって暮らしたらいかがです?」


4年前に結婚した弟リックスに子供ができたのは1年前のことだった。


「リックスは子供をあまり私たちに会わせてくれないのよ。」


まぁ、その気持ちはわからなくもない。
娘を過保護に、息子を放ったらかしに育てた両親に会わせると何を言われるかと嫌になるだろう。

10年、サラーナがいなくても弟は両親のことをよく思っていないままらしい。
そのことに両親が気づいていないということも変わっていなかった。


「私たちにはお前が生きがいなんだ。いろんなところに旅行に行かないか?そのためにリックスに仕事を任せたんだ。私たちも元気なうちに楽しみたいからな。」


旅行って……。相変わらず自分たちが望むことに私が従うと思っていて、私の意思はどこにもない。
私を生きがいにされても、こっちは息が詰まりそうになるの。
だから、もう会わない。嫌いになりたくないから。恨みたくないから。


「お二人でどうぞ。もう本当はわかっていますよね?私が健康になったということは。
惜しみなく治療してくれたことは感謝しています。ですが、せっかく元気になったのです。私も幸せになりたい。そしてその幸せは夫と子供と共に分かち合いたいのです。もう私を自由にしてください。
お元気で。さようなら。」


もう私はこの家に戻ることはない。縋るような両親に別れを告げた。
 


息子になったジャックはとても可愛い。
クルズに似ているので、親子だと言われても違和感もない。
クルズとジャックの本当の父親は従兄弟なので、2人が何となく似ているからだろう。

『医師の仕事に興味を持ってくれたら嬉しいな』とクルズはジャックと一緒に仕事をすることを期待している。
それが叶うことになるのは20年ほど先の話だった。
 


元夫ゲオルド様と妻になったルミアとの間にはなんと子供ができた。
ルミアは子供が産めないからと離婚されたのに、妊娠して驚いたという。
ゲオルド様もまさかと思っていたので避妊することはなかったのだろう。

驚いたが、喜ばしくもあった。産まれたのは男の子。
誰よりも喜んだのはロゼリアだった。跡継ぎは弟に任せると言い出したのだ。
『自分は子爵家か男爵家に嫁ぐ。頭が悪すぎる自分に伯爵家は重い』そうだ。

婿養子の話はまだ進めていなかったため、ロゼリアの望む通りになるだろう。
ゲオルド様は60歳くらいまで伯爵で頑張らなければならなくなった。
まぁ、ルミアがいるから何とかなるだろう。
 


なんだかんだと10年、遠回りしたような気もする。
 
だけど、遠回りしなかった人生が今よりも幸せだったかどうかはわからない。

どちらかと言えば、過保護生活が嫌になって逃げ出して………うん。最悪だったかも。

両親には感謝の気持ちもあるけれど、やはり自由を知ってしまうともう戻れない。

なので、10年遠回りしたからこそ、愛する夫と可愛い子供との幸せを得ることができた。

そう思うことにするわ。




 
<終わり>
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