上 下
26 / 31

26.

しおりを挟む
 
 
ゲオルド様と結婚して10年が経ち、離婚する日が来た。

お義父様はもう引退しているが、お義母様がロゼリアの教育をしているため、領地で隠居生活をすることなくずっと王都にいた。

お義母様は半ばロゼリアの教育にお手上げらしく、年齢も60歳に近づいているので限界だろう。
サラーナと過ごす方が血のつながった孫ロゼリアと過ごすよりも落ち着くし楽しいというほど、ロゼリアは覚えの悪い子で疲れるらしい。

他にも教育係はいるが、ロゼリアはなかなか身につかないという。

申し訳ないが、離婚して出ていくサラーナには今更どうすることもない。

ゲオルド様とロゼリアが納得する婿養子を得られることを陰ながら祈っておこう。


「サラーナさん、10年間楽しかったわ。ありがとう。幸せにね。」

「こちらこそありがとうございました。お義母様もお義父様もご自愛下さい。」
 

そして何故か泣きそうな顔をしているロゼリアの元に行って、最後に助言をした。


「ロゼリア、お勉強や礼儀作法が嫌ならどうして嫌なのかを考えてみて。そして先生やお父様に伝えてみて。そうしたら、なぜ必要なのか教えてくれるはずよ。
自分が言われて嫌なこと、されて嫌だと思うことは他人にしてはいけないと覚えておいて。
苦手なことがあっても、他人を思いやれる心があれば、素敵な女性になれるわ。
新しいお母様が来たら、仲良くするのよ。」

「……はい。」


ゲオルド様とは……特に話すことがないかも。


「約束通り、今後の生活に困らないお金をありがとうございました。助かります。」


約束のお金と、例のハンカチや図柄の案などで得た報酬もたんまりとあるので困らない。
お金は、学びたい意欲があるのにお金に困っている子供に将来への投資として貸すことを考えている。
働き始めたら少しずつ返済してもらえばいい。そのお金はまた次の子への投資となるから。


「ああ。こちらこそルミア嬢を紹介してくれて助かった。大事にするから心配しないでくれ。」


ルミアというのは、サラーナと学園で同級生だった28歳の女性である。
伯爵令嬢で、別の伯爵家に嫁いだが子供ができずに離縁された後、家庭教師をしていた。

クルーシュ伯爵家にピッタリな女性ではないかと思い、サラーナはルミアに連絡を取った。
そして話はあっという間にまとまり、ゲオルド様との再婚が決まったのだ。

ゲオルド様はルミアを大事にしてくれるだろう。そこは心配していない。

だって、20年もイリンさんと付き合えた人なのだから。
一度手に入れると自分からなかなか手を放すことができない人なのだ。 
イリンさんの浮気に、ゲオルド様は薄々気づいていたはず。

本当は10年前のあの時に、彼女への愛情は少し冷めていたのだろう。
だけど、自分の子供を妊娠しているイリンさんを子供だけ引き取って今更放り出すことなどできなかったし、イリンさんがそれをさせなかった。
 
惰性と責任感だけだったのだろう、後の10年は。

しかし、ようやくケジメをつけようと思って、約束してない日にイリンさんの元を訪れてわざと浮気を目の当たりにしたようだ。言い逃れをさせないために。


ゲオルド様はルミアを好きになるだろう。なぜならルミアはゲオルド様好みの豊満な胸の持ち主だから。 

外見の好みから入ることもよくあることでしょ? 

……どうせ私は貧乳よ。


そんなことを思いながら、新たな住まいへと向かっていた。
 

 
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

(完)婚約解消からの愛は永遠に

青空一夏
恋愛
エリザベスは、火事で頬に火傷をおった。その為に、王太子から婚約解消をされる。 両親からも疎まれ妹からも蔑まれたエリザベスだが・・・・・・ 5話プラスおまけで完結予定。

お飾りの側妃ですね?わかりました。どうぞ私のことは放っといてください!

水川サキ
恋愛
クオーツ伯爵家の長女アクアは17歳のとき、王宮に側妃として迎えられる。 シルバークリス王国の新しい王シエルは戦闘能力がずば抜けており、戦の神(野蛮な王)と呼ばれている男。 緊張しながら迎えた謁見の日。 シエルから言われた。 「俺がお前を愛することはない」 ああ、そうですか。 結構です。 白い結婚大歓迎! 私もあなたを愛するつもりなど毛頭ありません。 私はただ王宮でひっそり楽しく過ごしたいだけなのです。

私を運命の相手とプロポーズしておきながら、可哀そうな幼馴染の方が大切なのですね! 幼馴染と幸せにお過ごしください

迷い人
恋愛
王国の特殊爵位『フラワーズ』を頂いたその日。 アシャール王国でも美貌と名高いディディエ・オラール様から婚姻の申し込みを受けた。 断るに断れない状況での婚姻の申し込み。 仕事の邪魔はしないと言う約束のもと、私はその婚姻の申し出を承諾する。 優しい人。 貞節と名高い人。 一目惚れだと、運命の相手だと、彼は言った。 細やかな気遣いと、距離を保った愛情表現。 私も愛しております。 そう告げようとした日、彼は私にこうつげたのです。 「子を事故で亡くした幼馴染が、心をすり減らして戻ってきたんだ。 私はしばらく彼女についていてあげたい」 そう言って私の物を、つぎつぎ幼馴染に与えていく。 優しかったアナタは幻ですか? どうぞ、幼馴染とお幸せに、請求書はそちらに回しておきます。

(完結)無能なふりを強要された公爵令嬢の私、その訳は?(全3話)

青空一夏
恋愛
私は公爵家の長女で幼い頃から優秀だった。けれどもお母様はそんな私をいつも窘めた。 「いいですか? フローレンス。男性より優れたところを見せてはなりませんよ。女性は一歩、いいえ三歩後ろを下がって男性の背中を見て歩きなさい」 ですって!! そんなのこれからの時代にはそぐわないと思う。だから、お母様のおっしゃることは貴族学園では無視していた。そうしたら家柄と才覚を見込まれて王太子妃になることに決まってしまい・・・・・・ これは、男勝りの公爵令嬢が、愚か者と有名な王太子と愛?を育む話です。(多分、あまり甘々ではない) 前編・中編・後編の3話。お話の長さは均一ではありません。異世界のお話で、言葉遣いやところどころ現代的部分あり。コメディー調。

私ってわがまま傲慢令嬢なんですか?

山科ひさき
恋愛
政略的に結ばれた婚約とはいえ、婚約者のアランとはそれなりにうまくやれていると思っていた。けれどある日、メアリはアランが自分のことを「わがままで傲慢」だと友人に話している場面に居合わせてしまう。話を聞いていると、なぜかアランはこの婚約がメアリのわがままで結ばれたものだと誤解しているようで……。

婚姻契約には愛情は含まれていません。 旦那様には愛人がいるのですから十分でしょう?

すもも
恋愛
伯爵令嬢エーファの最も嫌いなものは善人……そう思っていた。 人を救う事に生き甲斐を感じていた両親が、陥った罠によって借金まみれとなった我が家。 これでは領民が冬を越せない!! 善良で善人で、人に尽くすのが好きな両親は何の迷いもなくこう言った。 『エーファ、君の結婚が決まったんだよ!! 君が嫁ぐなら、お金をくれるそうだ!! 領民のために尽くすのは領主として当然の事。 多くの命が救えるなんて最高の幸福だろう。 それに公爵家に嫁げばお前も幸福になるに違いない。 これは全員が幸福になれる機会なんだ、当然嫁いでくれるよな?』 と……。 そして、夫となる男の屋敷にいたのは……三人の愛人だった。

一年後に離婚すると言われてから三年が経ちましたが、まだその気配はありません。

木山楽斗
恋愛
「君とは一年後に離婚するつもりだ」 結婚して早々、私は夫であるマグナスからそんなことを告げられた。 彼曰く、これは親に言われて仕方なくした結婚であり、義理を果たした後は自由な独り身に戻りたいらしい。 身勝手な要求ではあったが、その気持ちが理解できない訳ではなかった。私もまた、親に言われて結婚したからだ。 こうして私は、一年間の期限付きで夫婦生活を送ることになった。 マグナスは紳士的な人物であり、最初に言ってきた要求以外は良き夫であった。故に私は、それなりに楽しい生活を送ることができた。 「もう少し様子を見たいと思っている。流石に一年では両親も納得しそうにない」 一年が経った後、マグナスはそんなことを言ってきた。 それに関しては、私も納得した。彼の言う通り、流石に離婚までが早すぎると思ったからだ。 それから一年後も、マグナスは離婚の話をしなかった。まだ様子を見たいということなのだろう。 夫がいつ離婚を切り出してくるのか、そんなことを思いながら私は日々を過ごしている。今の所、その気配はまったくないのだが。

【完結済】政略結婚予定の婚約者同士である私たちの間に、愛なんてあるはずがありません!……よね?

鳴宮野々花@軍神騎士団長1月15日発売
恋愛
「どうせ互いに望まぬ政略結婚だ。結婚までは好きな男のことを自由に想い続けていればいい」「……あらそう。分かったわ」婚約が決まって以来初めて会った王立学園の入学式の日、私グレース・エイヴリー侯爵令嬢の婚約者となったレイモンド・ベイツ公爵令息は軽く笑ってあっさりとそう言った。仲良くやっていきたい気持ちはあったけど、なぜだか私は昔からレイモンドには嫌われていた。  そっちがそのつもりならまぁ仕方ない、と割り切る私。だけど学園生活を過ごすうちに少しずつ二人の関係が変わりはじめ…… ※※ファンタジーなご都合主義の世界観でお送りする学園もののお話です。史実に照らし合わせたりすると「??」となりますので、どうぞ広い心でお読みくださいませ。 ※※大したざまぁはない予定です。気持ちがすれ違ってしまっている二人のラブストーリーです。 ※この作品は小説家になろうにも投稿しています。

処理中です...