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しおりを挟むゲオルド様と結婚して10年が経ち、離婚する日が来た。
お義父様はもう引退しているが、お義母様がロゼリアの教育をしているため、領地で隠居生活をすることなくずっと王都にいた。
お義母様は半ばロゼリアの教育にお手上げらしく、年齢も60歳に近づいているので限界だろう。
サラーナと過ごす方が血のつながった孫ロゼリアと過ごすよりも落ち着くし楽しいというほど、ロゼリアは覚えの悪い子で疲れるらしい。
他にも教育係はいるが、ロゼリアはなかなか身につかないという。
申し訳ないが、離婚して出ていくサラーナには今更どうすることもない。
ゲオルド様とロゼリアが納得する婿養子を得られることを陰ながら祈っておこう。
「サラーナさん、10年間楽しかったわ。ありがとう。幸せにね。」
「こちらこそありがとうございました。お義母様もお義父様もご自愛下さい。」
そして何故か泣きそうな顔をしているロゼリアの元に行って、最後に助言をした。
「ロゼリア、お勉強や礼儀作法が嫌ならどうして嫌なのかを考えてみて。そして先生やお父様に伝えてみて。そうしたら、なぜ必要なのか教えてくれるはずよ。
自分が言われて嫌なこと、されて嫌だと思うことは他人にしてはいけないと覚えておいて。
苦手なことがあっても、他人を思いやれる心があれば、素敵な女性になれるわ。
新しいお母様が来たら、仲良くするのよ。」
「……はい。」
ゲオルド様とは……特に話すことがないかも。
「約束通り、今後の生活に困らないお金をありがとうございました。助かります。」
約束のお金と、例のハンカチや図柄の案などで得た報酬もたんまりとあるので困らない。
お金は、学びたい意欲があるのにお金に困っている子供に将来への投資として貸すことを考えている。
働き始めたら少しずつ返済してもらえばいい。そのお金はまた次の子への投資となるから。
「ああ。こちらこそルミア嬢を紹介してくれて助かった。大事にするから心配しないでくれ。」
ルミアというのは、サラーナと学園で同級生だった28歳の女性である。
伯爵令嬢で、別の伯爵家に嫁いだが子供ができずに離縁された後、家庭教師をしていた。
クルーシュ伯爵家にピッタリな女性ではないかと思い、サラーナはルミアに連絡を取った。
そして話はあっという間にまとまり、ゲオルド様との再婚が決まったのだ。
ゲオルド様はルミアを大事にしてくれるだろう。そこは心配していない。
だって、20年もイリンさんと付き合えた人なのだから。
一度手に入れると自分からなかなか手を放すことができない人なのだ。
イリンさんの浮気に、ゲオルド様は薄々気づいていたはず。
本当は10年前のあの時に、彼女への愛情は少し冷めていたのだろう。
だけど、自分の子供を妊娠しているイリンさんを子供だけ引き取って今更放り出すことなどできなかったし、イリンさんがそれをさせなかった。
惰性と責任感だけだったのだろう、後の10年は。
しかし、ようやくケジメをつけようと思って、約束してない日にイリンさんの元を訪れてわざと浮気を目の当たりにしたようだ。言い逃れをさせないために。
ゲオルド様はルミアを好きになるだろう。なぜならルミアはゲオルド様好みの豊満な胸の持ち主だから。
外見の好みから入ることもよくあることでしょ?
……どうせ私は貧乳よ。
そんなことを思いながら、新たな住まいへと向かっていた。
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