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しおりを挟むイリンさんからいろいろと間違った情報を植え付けられているロゼリアをどうしようか。
もうすぐ離婚するので、後のことは全てゲオルド様に押し付けるべきだと思うけど。
まぁ、せっかく部屋まで押しかけてくれたので少しだけ協力しましょうか。
「ロゼリアはお勉強が苦手みたいだけど、この国には貴族と平民がいるということは知っているわね?」
「バカにしないで。それくらいは当然よ!」
「よかったわ。それぞれの役割の話は今ここでするべきではないので省くわ。
貴族は貴族と、平民は平民との結婚が望ましいとされているの。育ってきた環境や価値観が合うから。
この国では貴族の爵位の一番下である男爵位だけは平民との結婚が一応認められているわ。それは、男爵には元平民が多いから。国に貢献したことで爵位を得たけれど、貴族の結婚相手はなかなか見つからない。だから認められているの。
ここ、クルーシャ家の爵位は?」
「伯爵。」
「そうね。伯爵は平民とは結婚できない。わかる?あなたのお母さんはお父様と結婚できないの。」
「……え?お母さんは平民なの?」
「あら。それは知らなかったのね。お父様はあなたのお母さんのことが好きだった。だけど結婚できない。
でも伯爵家のために子供は必要だったわ。あなたのお母さんはお父様の子供を産みたがった。その子供が伯爵家の跡継ぎになれるように。」
「……それが、私?」
「そうよ。でもお父様の妻が産んだ子供以外は庶子と言って、妻が産んだ子供の嫡子がいた場合は父親が同じ兄弟でも年齢に関係なく立場が下になるの。まぁ、私に子供はいないから関係ないんだけど。
だから、お父様はあなたを庶子ではなく伯爵家の嫡子としたくて私と結婚したの。
貴族籍上では、あなたは私の子供になっているわ。たとえ、あなたの本当の母親が平民だということは広く知られていてもね。」
「庶子だと跡継ぎになれないの?」
「ええ。絶対ではないけれど。」
本当は庶子でも爵位を継げないことはない。
だが、なるべきではないという風潮があり、肩身は狭いため、図太い神経でないとつらい。
「あなたのお母さんみたいに、結婚はできないけれど面倒を見てもらっている人は愛人と呼ばれることが多いわ。
愛人と妻は同じ家で暮らすものではないし、たとえ妻がいなくても愛人は家に入れるものではないの。
だから、あなたのお母さんは私がここにいなくても伯爵家で暮らすことはできなかったわ。」
サラーナがいなくても母親であるイリンさんと一緒に暮らせなかったと聞いて、ロゼリアは驚いていた。
「でも手紙にはいつもあなたのせいだって書いてあって。でも……それは違ったのね。
じゃあ、私はどうしたらお母さんと一緒に暮らせたの?」
「あなたの場合、お父様かお母さんのどちらか一人としか暮らせないの。お母さんと暮らして平民として生きていくという方法もあったわ。でもお母さんは伯爵家の跡継ぎを産みたがったの。だから、あなたはお父様と暮らすことになった。それなのに伯爵家で暮らせなかったとお母さんが文句を言うのは間違いなのよ。」
何とか入り込みたかったのでしょうけどね。お義父様やお義母様が許すはずがないわ。
ゲオルド様だけだったら絆されて伯爵家に住まわせて、だけど、使用人との軋轢が生じて頭を抱える結果になっていたでしょうね。
10年前のイリンさんが私に会いたがった出来事は、愛人が大切でも絆されて境界線を越えてはいけないことだとゲオルド様に認識させたこともあって良かったのかもしれないわね。
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