突然の契約結婚は……楽、でした。

しゃーりん

文字の大きさ
上 下
16 / 31

16.

しおりを挟む
 
 
ゲオルドと契約結婚することになったサラーナは清楚な女性だった。

だが話をしていると、契約内容を知らなかったので驚いた。

今更なかったことにはできないぞ?と内心焦りながらも説明すると、受け入れてくれた。

なんと理想的な妻が見つかったのかと部屋に戻ってから大喜びしたほどだ。



だが、しばらく経ったある日、夜会に行く馬車の中でイリンに会ってほしいと頼めば契約を盾に断られた。

確かに契約に書いてあるけど、あれはご両親が考えたものでサラーナが望んだことじゃないだろ?


イリンに会うのが無意味?
そんなことないだろう?妻と愛人なのだから。

あ、だからか?ひょっとして嫉妬してるのか?ゲオルドの子供を産むイリンに。 

そう言ったら、ならば、白い結婚の条件を反故にしてもいいのかと言われれば確かに契約は守らなければならないと反省した。


 
サラーナの評判をイリンが落とそうとする?

イリンはそんなことしない!

怯えて泣く?サラーナを悪者に仕立てる? 


平民の愛人が貴族の妻に会いたいと言うのは、夫が妻を嫌うように仕向けるとしか思えないという。 


サラーナとの話は平行線だった。

ゲオルドはイリンの望みを叶えてやりたいが、契約によって実現しない。
サラーナはわざわざ陥れられる可能性が高いのに会う意味がわからないと拒否する。


そこで、サラーナは自分の代役を立てると言い出した。

侍女のエマをサラーナとして向かわせて、イリンがどういう態度をとるかを見ると言うのだ。


丁寧に挨拶をするだけであれば、エマが侍女だと明かしても問題ない。
ただ、害はないとわかってもサラーナは会う気はない。

怯える、泣く、睨まれた、怖い、など非礼な言動をすれば泳がせる。
イリンが接するのは別宅の使用人くらいなので、彼らにイリンの言葉を報告させる。


イリンがそんなことをしないと信じているゲオルドは、サラーナのその案を受け入れた。
 


だが、結果はサラーナの言う通りだった。

イリンが何かを言うたびに、『彼女は妻ではなく侍女だ』と言いたくなった。
いや、妻ではなく侍女だったとしてもイリンの態度は失礼だった。
相手は貴族だぞ?平民のイリンがそんな態度を取るなんて、私が一緒だからか?
貴族だからと距離を取られるのが嫌で気安く話してほしいとは言ったが、それは私限定だぞ?

エマは全く睨んでなどいなかったのに。

乳母になる?子供の隣の部屋?平民の愛人を妻がいる家に入れられるわけがないだろう?

何度も話し合ったじゃないか。
イリンは、子供は伯爵家で育てることに同意しただろう?
その他のことは、今までと何も変わらない。

ゲオルドがイリンの住まいに通うだけ。使用人も妊娠中だけだぞ?

イリンは平民じゃないか。
妊娠前まではちゃんと自活していただろう?その生活に戻るだけだ。
家賃と生活費はこっちが払っているのだから、金に困ることもなかったはずだ。


それなのに、伯爵家で暮らしたいと言い出すなんて全く予想もしていなかった。

 



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚姻契約には愛情は含まれていません。 旦那様には愛人がいるのですから十分でしょう?

すもも
恋愛
伯爵令嬢エーファの最も嫌いなものは善人……そう思っていた。 人を救う事に生き甲斐を感じていた両親が、陥った罠によって借金まみれとなった我が家。 これでは領民が冬を越せない!! 善良で善人で、人に尽くすのが好きな両親は何の迷いもなくこう言った。 『エーファ、君の結婚が決まったんだよ!! 君が嫁ぐなら、お金をくれるそうだ!! 領民のために尽くすのは領主として当然の事。 多くの命が救えるなんて最高の幸福だろう。 それに公爵家に嫁げばお前も幸福になるに違いない。 これは全員が幸福になれる機会なんだ、当然嫁いでくれるよな?』 と……。 そして、夫となる男の屋敷にいたのは……三人の愛人だった。

この婚姻は誰のため?

ひろか
恋愛
「オレがなんのためにアンシェルと結婚したと思ってるんだ!」 その言葉で、この婚姻の意味を知った。 告げた愛も、全て、別の人のためだったことを。

【完結】姉の婚約者を奪った私は悪女と呼ばれています

春野オカリナ
恋愛
 エミリー・ブラウンは、姉の婚約者だった。アルフレッド・スタンレー伯爵子息と結婚した。  社交界では、彼女は「姉の婚約者を奪った悪女」と呼ばれていた。

もう、愛はいりませんから

さくたろう
恋愛
 ローザリア王国公爵令嬢ルクレティア・フォルセティに、ある日突然、未来の記憶が蘇った。  王子リーヴァイの愛する人を殺害しようとした罪により投獄され、兄に差し出された毒を煽り死んだ記憶だ。それが未来の出来事だと確信したルクレティアは、そんな未来に怯えるが、その記憶のおかしさに気がつき、謎を探ることにする。そうしてやがて、ある人のひたむきな愛を知ることになる。

【完結/短編】いつか分かってもらえる、などと、思わないでくださいね?

雲井咲穂(くもいさほ)
恋愛
宮廷の夜会で婚約者候補から外されたアルフェニア。不勉強で怠惰な第三王子のジークフリードの冷たい言葉にも彼女は微動だにせず、冷静に反論を展開する。

貴方に私は相応しくない【完結】

迷い人
恋愛
私との将来を求める公爵令息エドウィン・フォスター。 彼は初恋の人で学園入学をきっかけに再会を果たした。 天使のような無邪気な笑みで愛を語り。 彼は私の心を踏みにじる。 私は貴方の都合の良い子にはなれません。 私は貴方に相応しい女にはなれません。

【完結済】侯爵令息様のお飾り妻

鳴宮野々花@書籍2冊発売中
恋愛
 没落の一途をたどるアップルヤード伯爵家の娘メリナは、とある理由から美しい侯爵令息のザイール・コネリーに“お飾りの妻になって欲しい”と持ちかけられる。期間限定のその白い結婚は互いの都合のための秘密の契約結婚だったが、メリナは過去に優しくしてくれたことのあるザイールに、ひそかにずっと想いを寄せていて─────

始まりはよくある婚約破棄のように

喜楽直人
恋愛
「ミリア・ファネス公爵令嬢! 婚約者として10年も長きに渡り傍にいたが、もう我慢ならない! 父上に何度も相談した。母上からも考え直せと言われた。しかし、僕はもう決めたんだ。ミリア、キミとの婚約は今日で終わりだ!」 学園の卒業パーティで、第二王子がその婚約者の名前を呼んで叫び、周囲は固唾を呑んでその成り行きを見守った。 ポンコツ王子から一方的な溺愛を受ける真面目令嬢が涙目になりながらも立ち向い、けれども少しずつ絆されていくお話。 第一章「婚約者編」 第二章「お見合い編(過去)」 第三章「結婚編」 第四章「出産・育児編」 第五章「ミリアの知らないオレファンの過去編」連載開始

処理中です...