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別宅の使用人たちは管理を任されている一人を除きイリン同様に平民で最低限しかいない。
ゲオルドの子供を妊娠したイリンのために炊事や掃除、洗濯をしてもらうために伯爵家から回してもらった者たちだ。
もちろん、ゲオルドが通うのでイリンは普通の平民の暮らしより質は上がった。

だが、貴族ではないイリンに侍女などいない。
それがイリンには不満だった。

『私は伯爵家の跡継ぎを産むのよ?』
 
10年も貴族であるゲオルドと付き合ってきたイリンは、徐々に傲慢になっていたのだ。



 
12歳で街の食堂で働きだしたイリンは、13歳の時にゲオルドと出会った。客と店員として。
当時15歳だったゲオルドは学園に通い始めたばかりで、友人と街歩きをしていたようだ。

ゲオルドは自分より年下のイリンがちょこまかと笑顔で店を動き回っている姿を見て、働き者なんだなと好感を持ったという。だが、女性としてではなく一人の平民としてだった。

1年ほどが経った時、イリンは体つきが女性らしくなった。胸が特に成長したのだ。
客からもいやらしい視線を受けるようになるし、貴族からは一夜の誘いもあった。

そんな時、イリンを無理やり連れて行こうとした貴族にゲオルドは立ちふさがった。
男は男爵令息、そしてゲオルドは伯爵令息であったことから、男は逃げるように立ち去った。

それからだ。イリンとゲオルドが親しくなっていったのは。




イリンは、貴族のゲオルドが自分のことを気にしてくれていると嬉しくなった。
貴族の男は気前がいい。困ったことがあれば伯爵令息の知り合いだと言えばいいと言ってくれた。
だが、その好意を庇護欲ではなく恋愛の方に向けたかった。

最初、イリンはゲオルドのことを彼が結婚するまでの遊び相手になりたいと思っていたのだ。

貴族と平民との結婚は、男爵家しか認められていない。伯爵家のゲオルドとは結婚できない。
それはわかっていたから、それまで貢いでほしかったのだ。
貰った物は、困ったときに換金できるから。
それほど生活に困っているわけではないけれど、働いた給金は家族で使うから自由なお金が少なかった。


だから、武器でもある豊満な胸をさりげなく押し付けたり、上目使いで『好き』と告げた。
そこから初心なお坊ちゃまのゲオルドが落ちるのは早かった。


14歳で純潔は捨てていたが、15歳でゲオルドと体の関係に持ち込んだ時は初めてだと嘘をついた。
処女らしく振る舞い、ゲオルドは信じた。
回数をこなし、段々と彼を喜ばせるように動き、彼はイリンの体に溺れていった。

両親が続けて亡くなり、ゲオルドにまだ捨てられるのは困るため縋りついた。
他に目ぼしい男がいなかったからだ。口説いてくるのは体目当ての男ばかり。

『私以外の女性と関係を持ったら別れる』

そう告げると、ゲオルドは更に夢中になった。


捨てるならイリンの方からで、ゲオルドからイリンを捨てるのは許せなかった。








 
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