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しおりを挟むゲオルド様と夜会に行った数日後、結果がわかった。
結果というのは、イリンさんがサラーナに会ってどういう態度を取るかという結果のこと。
その結果は、サラーナが思っていた通りだった。
つまり、イリンさんはサラーナが睨んだと怯えて泣いたのだ。
しかし、会ったのはサラーナではない。侍女のエマだった。
サラーナはイリンさんが勘違いするであろうことを見越し、エマに頼んだのだ。
ゲオルド様は、イリンさんがそんな態度を取るはずがないと信じており、どうしてもイリンさんと一度会ってほしいと言うのだ。
だけど、そこに契約が立ちはだかる。
なので、騙し討ちをすることにした。
代役としてエマを行かせるとサラーナは言ったのだ。
ゲオルド様は渋い顔をしていたけれど、イリンさんは会えば満足するはず。
ただの挨拶で済むならそれでいい。そのうちゲオルド様が『あれはサラーナの侍女』だと言ってもいいし、言わなくても特に支障はないはずだし。侍女の姿を見られたらバラす程度でいいと思った。
もし離婚後にイリンさんがエマをサラーナだと思って声をかけたとしても人違いで済ますことができるだろうし。
しかし、挨拶だけで済むことにはならなかった。
イリンさんに会う日、エマはゲオルド様と別宅に向かった。
ゲオルド様はサラーナを連れて来るとイリンさんに伝えていた。
別宅に入り、イリンさんが待つ部屋をゲオルド様とエマが入室した。
エマはゲオルド様が紹介する前に、イリンさんに言った。
「あなたがイリンさんね?」
エマはそう言っただけだった。
なのに、イリンさんは急に震え始めて妊娠中にも関わらず跪いて泣きながら謝り始めたという。
「ごめんなさい。ごめんなさい。睨まないで!私が悪いのです。ですがこの子だけはっ!」
ゲオルド様は呆気に取られたが、エマはサラーナと同じ考えだったため驚かなかった。
「イリンさん?睨んだ覚えはないわ。ソファに座ってくださる?話ができないわ。」
イリンさんは顔を上げるとゲオルド様に手を伸ばしたという。妻と思っているエマの前で。
ゲオルド様は縋りつこうとしているイリンさんを引き離しながらソファに座らせたが、腕を離さないのでそのままゲオルド様はイリンさんの隣に座ることになった。
「急に跪くから驚いたわ。私が悪いことをしたみたいじゃない。」
エマがそう言うと、イリンさんはゲオルド様から離れることなく怯えたように言った。
「奥様はやはり平民の私がルド様の子供を産むことに反対なのですね?だからそんなに睨むのだわ。
ルド様、この子は大丈夫でしょうか。虐められたりしませんか?私が育てた方がいいと思います。」
あぁ、それが狙いなのか、とエマは思った。
「子供は乳母と私の母が中心になって育てる。妻は最低限しか会わないことになっているから虐めたりすることなどあり得ない。」
「ですが、心配です。私を、どうかわたしを乳母として伯爵家に置いてくれませんか?」
なるほど。伯爵家で育てられるからイリンさんは子供とは会えなくなる。
乳母になれば一緒にいられるからだ。
しかし、狙いは我が子と共にいることか、伯爵家で実母として扱われることか。
エマは白けた目でイリンさんを見ていたという。
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