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しおりを挟むゲオルド様は愛人のイリンに会いたくないのは嫉妬するからか?と的外れなことを言うので、サラーナはキッパリと言った。
「嫉妬というのは相手を羨ましいと思う感情があるということですよ?私にはイリンさんを羨ましく思う要素は全くありません。」
ゲオルド様からの愛情も子供も、私は別に欲していないのだから。
「だが、イリンは私の子供を……」
「ゲオルド様、何か勘違いされていませんか?私が一度でもあなたの子供を産みたいといいました?」
「……言っていない。だが、女なら子供を産みたいと思うだろう?」
「そう思っていながら、あなたはあの身勝手な契約に同意してくれる令嬢を何年も探し続けていたのですよね?ようやく見つかった病弱で子供が産めないと思っていた私は理想的だったのでしょう?そう思い続けていればいいじゃないですか。なのに、子供が産みたいから嫉妬している?侮辱しているのですか?」
「すまない。失礼なことを言った。だが、嫉妬していないのであれば会ってもいいんじゃないか?」
どうしてそんなに会ってほしいの?意味ないって言ってるのに。
「ゲオルド様は契約を軽く考えておられるのですね。ではゲオルド様が条件としてあげた白い結婚という契約をなかったことにしましょうか。そして私と子供をもうけましょう。もちろん、跡継ぎは私が産む子供です。その後でしたらイリンさんにお会いしましょう。いかがです?」
私が思っている以上に怒っていると気づいたゲオルド様は慌てて言った。
「悪かった。あの契約は君じゃなく君のご両親が考えたものだったから、そんなに嫌がるとは思っていなかったんだ。」
「嫌がっているのではありません。契約は守るべきだと思っているだけです。それと、イリンさんと会わないのは自己防衛の意味もあるのですわ。」
「自己防衛?」
「ええ。契約結婚中も離婚後も、不利なのは私です。ゲオルド様とイリンさんは子供で繋がっているのですから。それこそ、イリンさんに嫉妬して睨んだとか、見下したとか、実際にしたつもりがなくともイリンさんがそう感じて誰かに伝え噂になれば、私の貴族としての評判は落ちるでしょう。
契約があろうがなかろうが、私が妻でイリンさんは愛人という立場です。世間から見れば、愛人が産んだ子供が跡継ぎになるのですから、愛人を疎ましく思う妻は多いことでしょう。」
「イリンはそんなことしない!」
「そうかもしれませんが、絶対ではありません。
もしイリンさんと会ったとして、例えば、イリンさんは私に睨まれて怖かったと言ったとします。
私はイリンさんに夫に愛されず子供も産めない女と馬鹿にされたと言ったとします。
ゲオルド様はどちらの言い分を信じますか?」
「……それは。私が一緒だとそんなことにはならないだろう?」
「甘いですね。女同士はそう簡単ではありません。ゲオルド様に愛されているのは自分だという確固たる自信があるからこそ、私を悪者に仕立て上げることは簡単ですわ。怯えて泣くだけでいいのですもの。」
平民の愛人が貴族の妻に会いたいだなんて、夫が妻を嫌うように仕向けるとしか思えないもの。
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