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目の前の、夫となったゲオルドという男は、笑うことを止めてサラーナに説明してくれた。


「もう結婚したのだから、やっぱり止めるとは言わないでくれよ?怒るなら両親に怒れ。
私には恋人がいる。平民だ。もう10年以上の関係だ。彼女はイリンという。
私の両親は結婚できないイリンとの関係を許してくれないんだ。
爵位を継ぐ条件を出された。それが貴族令嬢を正妻にすること。それも伯爵令嬢以上を、だ。
正妻が許すのであればイリンとの関係と子供を産むことが認められる。」


ゲオルド様は、私を見てそう言った。つまり、彼は爵位を継ぐために私と結婚したのだ、と。


「そして、私が求めた条件は、イリンが産む子供を正妻の子供とすることだ。つまり、庶子ではなく嫡子にしたいのだ。その条件を呑んでくれる令嬢をずっと探していた。伯爵令嬢以上で。
だが、どの貴族家でも自分の娘とも子供を作るべきだと言ってくる。だが、私にはその気はない。」
 

つまり、正妻とは閨を共にする気はないってことね。


「イリンの年齢的にも早く結婚相手を探す必要があった。焦っていたところに時に君の話を聞いた。
病弱で出産が厳しいから結婚させないで手元に置いている、と。」


私に来る縁談を断るために、両親は出産が厳しいと言っていたのね。


「私はホピット伯爵に、君との縁談を持ち掛けた。
こちらの条件と、ホピット伯爵の望むものを提示して。ホピット伯爵は考慮したいと言った。」


父が望むもの?それが損失の補填のお金?
 

「君は聞いていないかな。実は隣国との間の山にトンネルを掘ってもっと旅程が短くなるように検討されていたんだ。そしてその山の候補が2つあった。君の父親は決まると思われた一方に投資した。決まればその道沿いにはたくさんの集客が見込めるからね。だが、もう一方に決まった。ホピット伯爵は投資に失敗した。」


まぁ、そういうことでしょうね。でも、私を売るほど?


「ホピット伯爵家は別に金に困っているわけではないね?だが、伯爵は自分が損失を出したことが許せなかったんだ。それをなかったことにしたい。そういう思いがあった。だから、私はその損失の穴埋めとなる額と、私がもう一方に投資している一部を譲ることを提示したんだ。そうすればホピット伯爵の中では投資に成功したことになる。」


あぁ、あの思い込みの激しい父なら失敗したことを忘れて自分は成功したのだと思いそう。

そうか。損失の穴埋めというお金目的ではなく、自分の失敗を忘れるために娘を売ったということなのね。

その方が納得できるわ。


つまり、ゲオルド様は子供が産めないサラーナを妻にする。そして、子供は恋人のイリンさんが産んでサラーナの子供にする。そして閨は共にしない。それが条件。

そのために父が望むものを提示した。それはわかった。

だけど、母が言っていた私にピッタリな条件って何?今まで通りの穏やかな生活って? 



 
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