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嫁ぐようにと言われた翌日、久しぶりに弟リックスから話しかけられた。


「あんなに大事にしていたのに、いざとなると娘を売るとは笑えるな。」

「……売るってどういうこと?」


いったい何の話なの?


「知らないのか?父上たちは都合の悪いことは教えなかったんだな。
姉上の結婚は損失の穴埋めの金と引き換えだ。大した損失でもないんだけどな。読み間違いをなかったことにしたいんだろうな。」


リックスの説明はよくわからなかったけれど、自分がお金と引き換えに嫁ぐことはわかった。
だけど、うちは別に貧乏でもないのに何故?よくわからない。

リックスと話していて、自分が誰と結婚するかを聞いていないことに気づいた。


「リックス、あなた、私の結婚相手が誰だか知ってるかしら?」


リックスは非常に驚いた後、大笑いした。


「まさか、それも知らないのか?」

「だって。結婚させるつもりはないとずっと言われてきたのに、突然私にピッタリの嫁ぎ先が見つかったって言われたのよ?その上、結婚式もしないし3日後に迎えが来るって言われて、驚いて何も聞けなかったわ。」
 

「なるほどな。そんなこと言いそうだ。ピッタリと言えばピッタリかもしれないな。
母上が望みそうな条件だと思うよ。よかったじゃないか。ずっとココで暮らすよりマシだろ?」


2日後には嫁ぐ姉とわかっていても、リックスはまだ憎しみの顔をサラーナに向けている。
両親に甘えたい時期に甘えられなかった弟の私に対する憎悪は15歳になった今でも深く、一生仲の良い姉弟になる気はないと言われている気がした。

 
「姉上は社交させてもらってないんだから、誰か教えてもわからないだろ?
どうせ2日後にはわかる。知らないままでいいじゃないか。
相手が訳ありだってことはさすがに気づいているだろ?事前情報は知らない方がいいんじゃないかな。
嫌だって言っても、もう逃げることはできないんだし。」


リックスはそう言って、笑いながら去って行った。


お母様が望みそうな条件?
何かしら。さっぱりわからないわ。

両親はおそらく、相手について話す気はなかったのよね。そして弟も。

すごく意味深な、訳ありの貴族って気がするけど、両親が端金で私を手放すということは、待遇が悪いとは思えない。ジェファーソン先生を往診させる約束をしているくらいだから。


だけど、せめて相手の方の年齢くらい、誰か教えてくれてもいいのではないかしら。


そう思ったけれど、それすらどうでもいい気がして嫁ぎ先に持って行く大切な物をまとめることにした。

 

 
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