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しおりを挟む王妃様は全く悪いとは思っていないのか、開き直ったように言った。
「アンジェリーナが婚約者になって安心していたのに、私を騙そうとするからよ。
来年の結婚式がダリウスとあの伯爵令嬢のものだって聞いて驚いたのはこっちよ。
それに、アンジェリーナはアデルと婚約し直すだなんて……
何のためにあなたたちを婚約できないように止めていたと思ってるのよ。」
やっぱり私とアデルの婚約が受理されなかったのは王妃様が原因なのね。
「すまないな。
王妃はダリウスと公爵令嬢が婚約解消を言い出した頃から新たな婚約の届け出を止めさせたんだ。
公爵家と侯爵家の令嬢のものに限ってな。」
アンジェリーナが侯爵令嬢だから、アデルとの婚約は受理されなかったのね。
しかも高位貴族令嬢は下位貴族より少ないし、王太子殿下との年齢差を考慮するとアンジェリーナしかいなかったのかもしれない。
「当たり前じゃない。
ダリウスの次の婚約者も公爵家か侯爵家じゃないと。伯爵令嬢なんて冗談じゃないわ。
だけど、アンジェリーナが無事で良かったわ。あのスザンヌという女はとんでもないことをしたわね。
でも、見たところ傷もないようだし問題ないわね。
ダリウスの歳を考えると、今更違う令嬢に王太子妃教育をして結婚を遅らせるなんて王家の恥だわ。
結婚してから王太子妃教育をしようだなんて忙しくてそんな時間などないのだから。
予定通り来年の結婚式はダリウスとアンジェリーナのものよ。
それ以外に相応しい令嬢などいないのだから。」
「王妃よ。以前にも確認したが、王太子妃になれる爵位の条件はわかっているか?」
「……ええ。一応は伯爵令嬢からの爵位となっているわね。
だけど、伯爵令嬢よりも高位の令嬢がいればその方がいいはずよ。」
「王妃がどう思おうが、決まりでは伯爵令嬢でも可能なのだ。
そして、ダリウスの望んでいる伯爵令嬢は既に王太子妃教育を済ませている。
伯爵家は侯爵家に陞爵できるほど我が国に貢献してくれているのだ。
息子の望む令嬢を迎えてやろうではないか。」
王太子殿下の恋人である伯爵令嬢は、才色兼備な令嬢であるらしい。
アンジェリーナが王太子殿下の婚約者になる前、つまり『目くらましの婚約者』を了承する前に伯爵令嬢がどんな令嬢であるかは調査されたそうだ。
そして、王太子妃に問題なく相応しい令嬢になれると確信できたので、計画は実行されたという。
「どういうこと?側妃になるための教育をしていたんじゃなかったの?……それも騙したのね。
いえ、それでもアンジェリーナの方が相応しい。私は意見を変えません。」
「あの……王妃様。申し訳ございませんが、私は王太子妃にはなれません。」
私がそう言うと、王妃様は鼻で笑うように言った。
「何を言うの?婚約者はあなたなの。伯爵令嬢が王太子妃教育を受けていようが関係ないわ。
政略結婚なのです。好きな人と結婚したいなどと思い通りにはなりません。」
王妃様はピシャリとそう言ったけど、私の言いたいことはそうではない。
「いえ、そういうことではありません。
私は階段から突き落とされたときに頭を打ちました。
目が覚めると、自分のことも他の誰のことも覚えていませんでした。
ですが、一般常識や学業の知識は残っていました。
ただそこに、王太子妃教育で学んだ知識は一切ないのです。記憶にありません。
ということで、王太子妃にはなれませんので婚約の白紙撤回を望みます。」
王太子妃教育は一般常識に当てはまる知識ではない。
自国の歴代の王家に関することや近隣国の言語や主要取引内容、王族などの名前や好み、特徴などを一般に知られているよりも深く学ぶらしいが、記憶にない。
本当にきれいさっぱり何も覚えていないのだ。
王妃様は驚愕の顔をされているけれど、私が記憶を失うことになった原因の一端は王妃様にもあるのですからね。
自業自得ですよ。
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