愛人契約は終わったはずじゃ?

しゃーりん

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シグルドにエスコートされて食堂に入ると、息が止まりそうになった。

(ヒッ!)

お陰で声にならない声を出さずに済んだけど、驚きのあまり固まってしまった。

食堂にはシグルドの両親、バンドール公爵夫妻がいたのだ。
 

「あら。ご機嫌ね、シグルド。うまくいったのね。」

「母上、父上もどうしてここに?」

「ここは公爵家の別邸だぞ?やあ、初めまして。シグルドの父バードンだ。」

「いや、そうだけど。」

「初めまして。ユリア・コルソーと申します。お会いできて光栄です。」


何とか言葉が出てきたけど、何だろう。若干会話がカオス気味だ。
シグルドが両親を呼んでいたわけではないみたい。

とりあえず座って昼食を、ということになった。

 
「ユリアさんはシグルドに嫁いでくれるってことでいいのかしら?」

「父上と母上の反対がなければ、と言っています。」

「もちろん反対しないわ。シグルドが選んだ女性を信じているもの。ね?」

「ああ。ただ、コルソー伯爵令嬢として結婚するのならあと3年と少し待つ必要がある。
 だから、早く結婚したいのであれば養女になった方がいい。」

「3年も待てません。その間に『面倒な侯爵家』がうるさくなりそうですし。
 ユリア、真剣に養女になることを考えてくれないか?」


ユリアがコルソー伯爵令嬢として結婚するには、弟アールが伯爵の手続きを済ましてからになる。
引き継ぐ領地があるわけではないので、学園を卒業してからの手続きになる。

つまり、ユリアとアールは伯爵家の令嬢と令息ではあるが、現状は伯爵がいない状態なのだ。
アールが伯爵になると、伯爵の姉としてコルソー伯爵家の令嬢となる。

もちろん、ユリアが伯爵になればシグルドとの結婚も問題ない。
でもそうなってしまうと、コルソー伯爵という爵位がバンドール公爵家の保有爵位に組み込まれてしまい、アールが継げなくなってしまうのだ。

それはしたくない。


「……名前だけ養女にして下さるという貴族家はどちらなのでしょうか?」

「ブリッジ侯爵家。ユリアの母上の実家だ。」

「……一度もお会いしたことはありません。母は絶縁されたそうなので。」


母が流行り病で亡くなった時でも葬儀に来なかった。
それなのに、養女にしてくれる?会ったこともないのに?


「だからいいんだ。
 養女の手続きと、僕との婚約と結婚の手続きで名前が必要なだけだ。
 王太子妃と親戚でもあるから、変な野望も抱かない。
 結婚後も干渉されることもないから安心だ。」


なるほど。本当に名前だけなのね。
今更親戚付き合いなんてしたくないもの。必要以上に会わないで済むのならいいわ。


「わかりました。こちらの公爵家に迷惑をかけないのであれば養女の手続きをします。」

「よし!早く婚約して早く結婚しよう。」 


シグルドはとても嬉しそう。まぁ、3年待つのは長いわよね。私も嫌だわ。
 



バンドール公爵夫妻を見送った後、シグルドの部屋に入る。
まだ昼間だけど、彼はすっかりソノ気だ。
我慢の限界というように、キスをしてくるシグルドに言った。


「シグルド、私、明日は仕事なの。寮に帰るわよ。」

「わかってる。ちゃんと送っていく。1回で終わる。抱き潰したりしないから。」


久しぶりに体を触られて、体が疼いている。
シグルドを受け入れたくて、濡れていくのがわかる。


「ユリア、好きだよ。またユリアに触れることができて嬉しい。」

「私も。好きよ。
 恋人を探そうと思ってたのに、シグルドがキスしてくるから忘れられなくなっちゃったじゃない。」 

「作戦成功か?」

「そうよ。見事にね。あなたしか知らなくていいわ。」


たとえ、誰かに抱かれてもシグルドを思い出すだろうから、シグルドだけでいい。

 
久しぶりの体を丁寧に解されて、シグルドを体の奥まで受け入れた。
ユリアの中は満足そうにソレを受け入れて、蠢く。


「ユリア、ごめん。すぐに出そう。1回じゃ終われない。」

「いいわ。気持ちよくなって。」


シグルドは激しく突き、ユリアと共に果てた。
だが、固さを保ったまま再び動き、じっくりユリアを堪能するように体位を変えながら、結局は3回ユリアの中に精を放った。
 

早く一緒に暮らしたい。毎晩この温もりを感じながら眠りにつきたいと思う2人だった。


 

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