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しおりを挟む隣国の第4王女様が離宮に滞在して2か月が経ったけど、結婚式の具体的な日取りは決まっていない。
どうやら先に結婚する第3王女様の結婚式後に決まるらしい。
第3王女様の結婚式には、この国の王太子夫妻と隣国第4王女様、そして婚約者のシグルドが出席するらしく、結婚式に向けて旅立つ準備が慌ただしく行われていた。
にもかかわらず、当事者であるシグルドはまたもやユリアを空き部屋に連れ込んで深く口づける。
本当にここの警備はどうなっているのか。それとも、ここを通る私が悪いの?
こっそり舐めていた飴もシグルドの舌が奪っていってしまった。
「ん。この飴、美味いな。」
「先輩の領地で作られているものだから、王都には売ってないわ。」
「先輩って男?」
「……女性です。じゃなくて、これって浮気現場よ。見られたら私が処分されちゃうじゃない。」
ようやく言いたいことが言えた。婚約者のいる身だと自覚してほしい。
「大丈夫だよ。誰もいないから気づかれない。心配性だな。」
「そうじゃなくて。愛人契約は終わったでしょ?なのに……」
「ユリアは愛人じゃないよ。」
じゃあ、一体何なんだと言う前にシグルドが言った。
「明後日から予定では10日間ほど出かけることになってるけど、すぐに帰るから浮気するなよ。」
「もう!またそんなこと言って。……気をつけてね。」
「大丈夫。すぐ帰るから。……待ってて。」
シグルドはまたキスをして部屋から出て行った。
相変わらずキスが好きで、意味不明なことを言う男。
口では文句言いながらも、キスを受け入れている自分も同類に違いない。
結婚式から戻ってきたら、今度こそどういうつもりなのか聞きださないと。
そして、王太子様一行は隣国第3王女様が結婚する国に向けて出発した。
往復と結婚式で約10日間の予定だった。
しかし………2日後に帰ってきた。…………え?
しかも、シグルドの婚約者である第4王女様はいない。一体どういうこと?
情報を聞いた人によると、隣国でクーデターがあったらしい。
父と兄を捕らえて、第2王子が上に立った。
なので、結婚予定だった第3王女と第4王女は強制送還。父と兄寄りの王女だったからだ。
王女の乗った馬車は、わが国の騎士たちに囲まれて隣国国境まで送り届けているらしい。
離宮に残った隣国の使用人や護衛も一人残らず国境まで送り届けられた。
もちろん、シグルドとの婚約は解消。
ナニソレ。
クーデター???
つまり、第2王子は好戦的な父や兄を否定して、平和的思想ってこと?
平和的思想でクーデターというのもどうかと思うけど、各国と兄弟姉妹を結婚させて属国化しようとする考えはないということでいいのかな?
すぐに帰るといったシグルドは、前もって知っていたのかな。
王女様との結婚がなくなるとわかっていたから、私と密会?していたのかな。
でも………たとえ、王女様との結婚がなくなっても私と結婚はできないよ?
愛人じゃないって言ってくれたけど、恋人になったとしても領地なし親なし令嬢が公爵令息と結婚なんて誰も許すはずはないもの。
すぐにシグルドには縁談話が沢山持ち込まれるんだから。
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