愛人契約は終わったはずじゃ?

しゃーりん

文字の大きさ
上 下
11 / 19

11.

しおりを挟む
 
 
隣国の第4王女様が離宮に滞在して2か月が経ったけど、結婚式の具体的な日取りは決まっていない。

どうやら先に結婚する第3王女様の結婚式後に決まるらしい。

第3王女様の結婚式には、この国の王太子夫妻と隣国第4王女様、そして婚約者のシグルドが出席するらしく、結婚式に向けて旅立つ準備が慌ただしく行われていた。


にもかかわらず、当事者であるシグルドはまたもやユリアを空き部屋に連れ込んで深く口づける。

本当にここの警備はどうなっているのか。それとも、ここを通る私が悪いの? 

こっそり舐めていた飴もシグルドの舌が奪っていってしまった。


「ん。この飴、美味いな。」

「先輩の領地で作られているものだから、王都には売ってないわ。」

「先輩って男?」

「……女性です。じゃなくて、これって浮気現場よ。見られたら私が処分されちゃうじゃない。」


ようやく言いたいことが言えた。婚約者のいる身だと自覚してほしい。


「大丈夫だよ。誰もいないから気づかれない。心配性だな。」

「そうじゃなくて。愛人契約は終わったでしょ?なのに……」

「ユリアは愛人じゃないよ。」


じゃあ、一体何なんだと言う前にシグルドが言った。


「明後日から予定では10日間ほど出かけることになってるけど、すぐに帰るから浮気するなよ。」

「もう!またそんなこと言って。……気をつけてね。」

「大丈夫。すぐ帰るから。……待ってて。」


シグルドはまたキスをして部屋から出て行った。

相変わらずキスが好きで、意味不明なことを言う男。

口では文句言いながらも、キスを受け入れている自分も同類に違いない。 

結婚式から戻ってきたら、今度こそどういうつもりなのか聞きださないと。





そして、王太子様一行は隣国第3王女様が結婚する国に向けて出発した。
 
往復と結婚式で約10日間の予定だった。

しかし………2日後に帰ってきた。…………え?

しかも、シグルドの婚約者である第4王女様はいない。一体どういうこと?

情報を聞いた人によると、隣国でクーデターがあったらしい。
父と兄を捕らえて、第2王子が上に立った。
なので、結婚予定だった第3王女と第4王女は強制送還。父と兄寄りの王女だったからだ。
王女の乗った馬車は、わが国の騎士たちに囲まれて隣国国境まで送り届けているらしい。
離宮に残った隣国の使用人や護衛も一人残らず国境まで送り届けられた。


もちろん、シグルドとの婚約は解消。

ナニソレ。

クーデター???


つまり、第2王子は好戦的な父や兄を否定して、平和的思想ってこと?

平和的思想でクーデターというのもどうかと思うけど、各国と兄弟姉妹を結婚させて属国化しようとする考えはないということでいいのかな?


すぐに帰るといったシグルドは、前もって知っていたのかな。
王女様との結婚がなくなるとわかっていたから、私と密会?していたのかな。

でも………たとえ、王女様との結婚がなくなっても私と結婚はできないよ?
愛人じゃないって言ってくれたけど、恋人になったとしても領地なし親なし令嬢が公爵令息と結婚なんて誰も許すはずはないもの。 

すぐにシグルドには縁談話が沢山持ち込まれるんだから。


 


 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

【完結】私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね

江崎美彩
恋愛
 王太子殿下の婚約者候補を探すために開かれていると噂されるお茶会に招待された、伯爵令嬢のミンディ・ハーミング。  幼馴染のブライアンが好きなのに、当のブライアンは「ミンディみたいなじゃじゃ馬がお茶会に出ても恥をかくだけだ」なんて揶揄うばかり。 「私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね! 王太子殿下に見染められても知らないんだから!」  ミンディはブライアンに告げ、お茶会に向かう…… 〜登場人物〜 ミンディ・ハーミング 元気が取り柄の伯爵令嬢。 幼馴染のブライアンに揶揄われてばかりだが、ブライアンが自分にだけ向けるクシャクシャな笑顔が大好き。 ブライアン・ケイリー ミンディの幼馴染の伯爵家嫡男。 天邪鬼な性格で、ミンディの事を揶揄ってばかりいる。 ベリンダ・ケイリー ブライアンの年子の妹。 ミンディとブライアンの良き理解者。 王太子殿下 婚約者が決まらない事に対して色々な噂を立てられている。 『小説家になろう』にも投稿しています

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

記憶がないなら私は……

しがと
恋愛
ずっと好きでようやく付き合えた彼が記憶を無くしてしまった。しかも私のことだけ。そして彼は以前好きだった女性に私の目の前で抱きついてしまう。もう諦めなければいけない、と彼のことを忘れる決意をしたが……。  *全4話

私だけが赤の他人

有沢真尋
恋愛
 私は母の不倫により、愛人との間に生まれた不義の子だ。  この家で、私だけが赤の他人。そんな私に、家族は優しくしてくれるけれど……。 (他サイトにも公開しています)

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

元彼にハメ婚させられちゃいました

鳴宮鶉子
恋愛
元彼にハメ婚させられちゃいました

処理中です...