上 下
5 / 10

5.

しおりを挟む
 

卒業パーティー後の王家と公爵家の話し合いの場。

自分が犠牲になることが納得できないとの発言をしたルカリオ。
どれだけ温情をかけられているのかが理解できていなかった。

「そもそも、リンダ嬢にはもう婚約者がいるが、お前と通じていたのか?」

「っいえ。まだリンダには言っていません。
 ですが、彼女もきっと僕を思ってくれているはずです。」

話にならない。 

「思ってくれている証拠は?いつ気持ちを確かめたんだ?」

「確かめなくても、リンダとは学園で何度も目が合いました。僕を見ているからです。」

それは視線を感じた先がルカリオだっただけでは?

「はぁ。リンダ嬢のことはひとまず置いておくとして…
 王太子をおりるんだな?子種を絶って臣下にくだるんだな?」

「それは嫌です。リンダを僕の妃にします。」

駄々っ子だろうか?

「…結局、リンダ嬢に話が戻るのか。
 いいか?彼女はもうすぐ違う男と結婚する。お前の妃にはなれない。」

「そんな!嘘だ。そうやって騙すつもりなのでしょう?」

ここで王妃が口を開いた。

「嘘ではないわ。
 あなたとの仮婚約を解消することになって次に婚約したのは私の友人の息子です。
 とても仲が良い二人のようで、友人はリンダが義娘になる日を楽しみにしてたわ。
 リンダはもう先に進んでいるのよ?あなたはいつまで愚かなことを言っているの?」

「ユリアナと結婚するか、王太子をおりるか。どちらを選ぶんだ?」

「………………ユリアナと結婚します。」

「ではそのように。」

ここでユリアナが口を開いた。

「お待ちください。
 まだルカリオに選ばせるのですか?
 ルカリオがこのような考えでも私をルカリオの妃にするのですか?」

「……………すまないが、結婚式ももうすぐだ。中止する理由が…」

「また王家の面子ですか?やっぱり早くに正すべきだったんです。
 それも今更ですけどね。
 兄を王太子にしても結婚式の問題が残りますしね。わかりました。
 結婚式は予定通り行いますが、ルカリオの私への誠意が感じられるまで初夜は延期です。」

「それでは子供が…」

「そうですね。ですが、いやいや触れられる私の身にもなってください。
 嫌悪感で子供など流れてしまいそうです。
 それに、ルカリオよりも私に正統性があるのです。
 結婚する以上、ルカリオが私に誠意を見せるのは当然だと思います。」

国王はユリアナの静かな怒りを感じ取っていた。
ルカリオは血の繋がったかわいい息子ではあるが、自分は国王だ。
国王として正しい血筋に戻す面子に拘ってユリアナを引き込んだ以上、ユリアナの意見を飲む必要があった。

「わかった。もっともなことだ。
 ルカリオ、夫としてユリアナに歩み寄れ。
 2年だ。その間にユリアナがお前を夫と認めなければ理由をつけて離縁させる。
 出ていくのはお前だ。わかったな?」

「そ、そんな…どうやって…」

自分で考えろ!とみんなが思った。


それにしても、ルカリオがこんなに愚かな男だったとは。

やはり温情をかけるべきではなかったのだと思った。





 
 




 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私を侮辱する婚約者は早急に婚約破棄をしましょう。

しげむろ ゆうき
恋愛
私の婚約者は編入してきた男爵令嬢とあっという間に仲良くなり、私を侮辱しはじめたのだ。 だから、私は両親に相談して婚約を解消しようとしたのだが……。

どうやら婚約者が私と婚約したくなかったようなので婚約解消させて頂きます。後、うちを金蔓にしようとした事はゆるしません

しげむろ ゆうき
恋愛
 ある日、婚約者アルバン様が私の事を悪く言ってる場面に遭遇してしまい、ショックで落ち込んでしまう。  しかもアルバン様が悪口を言っている時に側にいたのは、美しき銀狼、又は冷酷な牙とあだ名が付けられ恐れられている、この国の第三王子ランドール・ウルフイット様だったのだ。  だから、問い詰めようにもきっと関わってくるであろう第三王子が怖くて、私は誰にも相談できずにいたのだがなぜか第三王子が……。 ○○sideあり 全20話

【完結】不倫をしていると勘違いして離婚を要求されたので従いました〜慰謝料をアテにして生活しようとしているようですが、慰謝料請求しますよ〜

よどら文鳥
恋愛
※当作品は全話執筆済み&予約投稿完了しています。  夫婦円満でもない生活が続いていた中、旦那のレントがいきなり離婚しろと告げてきた。  不倫行為が原因だと言ってくるが、私(シャーリー)には覚えもない。  どうやら騎士団長との会話で勘違いをしているようだ。  だが、不倫を理由に多額の金が目当てなようだし、私のことは全く愛してくれていないようなので、離婚はしてもいいと思っていた。  離婚だけして慰謝料はなしという方向に持って行こうかと思ったが、レントは金にうるさく慰謝料を請求しようとしてきている。  当然、慰謝料を払うつもりはない。  あまりにもうるさいので、むしろ、今までの暴言に関して慰謝料請求してしまいますよ?

婚約破棄をしてきた婚約者と私を嵌めた妹、そして助けてくれなかった人達に断罪を。

しげむろ ゆうき
恋愛
卒業パーティーで私は婚約者の第一王太子殿下に婚約破棄を言い渡される。 全て妹と、私を追い落としたい貴族に嵌められた所為である。 しかも、王妃も父親も助けてはくれない。 だから、私は……。

姉の所為で全てを失いそうです。だから、その前に全て終わらせようと思います。もちろん断罪ショーで。

しげむろ ゆうき
恋愛
 姉の策略により、なんでも私の所為にされてしまう。そしてみんなからどんどんと信用を失っていくが、唯一、私が得意としてるもので信じてくれなかった人達と姉を断罪する話。 全12話

あなたの仰ってる事は全くわかりません

しげむろ ゆうき
恋愛
 ある日、婚約者と友人が抱擁してキスをしていた。  しかも、私の父親の仕事場から見えるところでだ。  だから、あっという間に婚約解消になったが、婚約者はなぜか私がまだ婚約者を好きだと思い込んでいるらしく迫ってくる……。 全三話

「貴女、いい加減コンロコ様から離れてくださらないかしら」婚約者の幼馴染み女からそんなことを言われたのですが……?

四季
恋愛
「貴女、いい加減コンロコ様から離れてくださらないかしら」 婚約者の幼馴染み女からそんなことを言われたのですが……? ※一部修正しました。そのため、見づらい等ありましたらすみません。(>_<)

追放された令嬢は愛し子になりました。

豆狸
恋愛
「婚約破棄した上に冤罪で追放して悪かった! だが私は魅了から解放された。そなたを王妃に迎えよう。だから国へ戻ってきて助けてくれ!」 「……国王陛下が頭を下げてはいけませんわ。どうかお顔を上げてください」 「おお!」 顔を上げた元婚約者の頬に、私は全体重をかけた右の拳を叩き込んだ。 なろう様でも公開中です。

処理中です...