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しおりを挟む王族の愛情の執着…
何故か昔から王族は側室をとることが少なかった。
正妃に子供が多かったかというとそうでもない。1人または2人しか子供は産まないないのだ。
なので、周りは側室に産ませようとするが、正妃に子供がいる場合、側室に子供がいた記録はない。
逆に、正妃に子供がいなかった場合、側室に子供がいた記録はある。
執着が顕著に見られたのが、百年近く前の王族である。
当時の王太子が妻を亡くした。
子供は7歳の王子が1人だった。
王太子は妻の棺から離れることを嫌がり、毎日長い時間を霊廟で過ごすようになった。
父である国王は、息子を諦め孫を王太子として早くから教育を始めた。
国王にはわかっていた。息子の妻に対する愛情の執着が己の許容量を超えてしまっていたのだと。
代々、婚約者を決める頃に言い聞かせられることがある。
《王族としての役割を忘れてはならない。
なぜなら、伴侶に傾ける愛情が大きすぎるからだ。
自分の重い愛情を受け入れてくれそうな相手を見極める必要がある。
政略結婚が決まった場合、相手が自分の何割を見せたら受け入れられるか、慎重に探る。
自分の許容量の中に、王族の役割と自分の子供を受け入れる割合を残しておく必要がある。
残りの割合の大半を受け入れてくれる相手が望ましいが、過去には拒絶され、側室に愛情を注いだ者もいる。
自分で相手を見つける場合は、更に慎重さが必要になる。
相手は何かを探られている不思議な感覚になるからだ。
一目惚れはしないだろう。会話をして好印象を持つと探りたくなる。
5割~8割受け入れてくれそうな相手の中から選ぶことだ。
結婚後は執着が増す。愛情が許容量を振り切れないように気を付けなければならない。
決して、王族としての役割を忘れてはならない。》
当時の王太子は妻に執着し過ぎた結果、王族としての役割も子供も放棄してしまったのである。
それから徐々に、王族に側室を望む声が無くなっていった。
執着が知る人ぞ知るようになり、寵愛も出世も見込めないからである。
そしていつの間にか側室制度はあってないようなものになった。
今は、王族の執着はあまり知られていないが、政略結婚でも恋愛結婚でも夫婦仲を邪魔することが許されない風潮があるという。伴侶は一人だけ。暗黙の了解である。
この執着は、国の守りの女神様の祝福とも呪いとも言われている。
現王太子は、歴代の王族の中でも少し変わっている。
類稀なる自制心があるのだが、誰にも気付かれていない。
実際、妻のルナリーゼには振り切れんばかりの愛情の執着を持っている。
ルナリーゼも執着の理解はしているが、閨以外ではいつでも理性的な夫を見ているため愛情深い人だと思っているだけだ。
体を独占したいがために、子供は一人でいいと言うところを宥めて二人にしてもらい、まぁ今回三人目となったが。
国を大切に思っている王太子のためを思い、側室をとる気があるのか聞いてきたルナリーゼだったがやっぱり愛情の重さを把握しきれていないなと王太子は思った。実際はルナリーゼ>国である。
これ以上重くするとルナリーゼを監禁しそうになるため、我慢しているのである。
泣く泣く執着を自制し、国の未来も考えられる王太子となったのである。
ルナリーゼから、アダムとリリーベルの婚約の話を提案された時、『アダムが好意的に思ったのなら、そのうち執着するだろう。まだ理解しきれないだろうから、王族の役割は理解できる頃に言い聞かせないとな。』と考えていた。
ところが、夢の中のアダムはリリーベルに執着するより前に疎遠になり、学園の女性に執着していた。
前代未聞の馬鹿王子として罪人になる未来になっていただろう。
婚約後、アダムの周りを変えた僅か3ヵ月でリリーベルに対する執着の片鱗が見られるようになった。
(思った以上に早い。小さすぎて感情に素直すぎるからか?異常な執着にならないようにしないと…
王族としてやっていけないほどの執着が見られれば…三人目の子を跡継ぎにするかな。
リリーちゃんには申し訳ないけど、アダムに爵位をあげて仲良く暮らしてもらおう。)
王太子はルナリーゼが悲しまないための未来への道筋を、頭の中で考えていた。
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