貧乏伯爵令嬢は従姉に代わって公爵令嬢として結婚します。

しゃーりん

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結婚式は明日。

ベネディクトとの触れ合いにもなれた。

明日の初夜も……多分、大丈夫。  

本来なら、ベネディクトの隣はローザリンデがいる場所だった。
ベネディクトはローザリンデが相手でも、私と同じように触れ合ったのかな。
そうだよね。公爵家の跡継ぎは必要。
家同士の釣り合いのとれた政略結婚でも、演技をしていても、夫婦となるはずだったのだから。

そう思うと、胸が少し苦しくなる。
前の婚約者と婚約解消したときには、仕方がないと諦めて何も感じなかった。
でも、ベネディクトと他の人が……と考えると嫌な気持ちになる。
つまり、私はベネディクトが好きになったのだろう。

彼が私をどう思っているかはわからない。
嫌われていないのはわかるし、結婚に向けて仲良くなろうとしてくれていたのもわかる。
結婚したら子作りのために閨事をする気があるのもわかる。
でも、恋愛感情があるかどうかはわからない。

聞いてみたいけど、聞けないよねぇ。
もし『妻としては尊重するけど、恋愛感情は期待しないで』って言われたらショックだもの。

とりあえず、私は好きになった人と結婚できる。そのことを幸せに思いたい。

そんなことを考えていると、ベネディクトがやってきた。


「いよいよ明日だね。楽しみだ。」

「ふふ。結婚式を楽しみにするのは女性だと思っていました。」

「だって、ずっと我慢してたから。唇に口づけるのを。それに初夜も。」

「あ……もう!そういう楽しみだなんて。」

「だって、ソレーユが婚約者になってからは結婚後の生活がすごく楽しみになったんだ。
 僕はね、愛人なんて持つ気はないから。面倒事はお断りだからね。
 だから、ローザリンデと仮面夫婦になって仕事を生き甲斐にしようと思っていたんだよ。
 だけど、ソレーユとなら幸せな生活になるだろうって思うと待ち遠しくてね。」

「……そんなに楽しみに思ってくれてるなんて知らなかった。」

「そう?このひと月は触れ合うことで伝わっているかと思ったよ。
 やっぱり言葉にしないと気持ちってわからないね。
 わかってると思うけど、恋愛なんてしたことがなかったから。
 僕はソレーユが好きだよ。君と結婚できるのが嬉しい。
 ソレーユは?まだそこまでの思いはなくても嫌われてないとわかるからいいけど。
 でも、いつか愛し合えたらいいなと思う。」


驚いた。さっきの悩みはいったい何だったのかしら。


「好きよ。ベネディクト様が好き。あなたと結婚できるなんて嬉しい。
 ほんとに、言葉にするって大事ね。胸の中が温かくなるわ。」


自覚したばかりの思いが通じ合えて涙が出そうになっていると抱きしめられた。


「うわっ!嬉しいな。
 正直に言うと、毎日抱いてドロドロに愛したら好きになってくれるかもって企んでた。」


ドロドロって……


「うーん。キスしたいけど、ここまで我慢したから結婚の誓いのキスを初めてにしよう。」

「そうね。明日を楽しみにしてる。」
  

誓いのキスに拘るベネディクトは少し可愛い。
こんな幸せな気持ちで結婚できるなんて思ってもみなかった。

明日は最高の一日になるわ。



 
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