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しおりを挟むベネディクトは両親にローザリンデとの婚約解消に同意したことを話した。
「ローザリンデ嬢が側妃に?……何を考えているんだ、全く。」
「あら。私は賛成よ?彼女とベネディクトは仮面夫婦のようにしかなれないでしょうから。」
「……母上は気づいていましたか?」
「ええ。彼女の本質は傲慢な令嬢だもの。完璧であり続けるのは無理があるわ。
いずれ使用人かあなたに本性を見せざるを得なかったでしょうね。
次期公爵夫人としては申し分なく振る舞えるでしょうけど、あなたが疲れるだろうと思って。」
「そうですね。お互いに本性を見せ合うと上手くいかなかったでしょうからね。」
「候補に挙げられているわけではないのに立候補するというのがローザリンデ嬢らしいわ。」
ほほほ。と母は笑っている。
ベネディクトはおそらくずっと彼女に愛情を抱くことなく、割り切った夫婦になるだろうと思っていた。
別にそれなら仕方がないと諦めていた。政略結婚なんてそんなものだ。
しかし、向こうから婚約解消を言ってくれるとは。
自分から言い出すには理由が難しかったが、向こうの都合なら喜んで同意するに決まっている。
「父上、どうしてもタフレット公爵家との縁が必要なわけではないでしょう?」
「まぁ、そうだが。貰おうと思えば慰謝料を貰えるぞ?身勝手な言い分だからな。」
「くれるというならば貰いますが、わざわざ請求しなくてもいいのでは?貸し一つで。」
「そうだな。となると、お前の婚約者を探さないと。5歳くらい年下になるかもな。」
「そうねぇ。年頃の令嬢は婚約者がいるもの。
他国の王族や、まだ7歳の王女様と婚約するように言われると困るわ。早く決めないと。」
「それは恐ろしく嫌ですね。……では、僕にいい案があるのですが……」
前々から気になっていた案件を自分の結婚と絡ませて運べないか提案してみた。
「それは……思っている通りになれば良縁にはなるかもしれないが、金を捨てるだけの恐れも。」
「ええ。ですのでタフレット公爵家も巻き込むのです。
失敗しても痛み分け。貸し一つを使うに相応しいと思いませんか?」
「まあ、投資みたいなものか。どっちの公爵家も傾くような金が動くわけでもないし。」
「いいのではないかしら?なんだかその不確かさが楽しみに思えるもの。」
意外にも母が乗り気になっていた。
こうした事業の話を聞ける夫人は少ない。今回はたまたま結びつけられる案件だからだ。
ベネディクトとローザリンデの婚約解消に合わせて、一つの事業を持ち掛ける。
ローザリンデが嫁ぐまでは、それは秘密にされる提案も含まれていた。
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