貧乏伯爵令嬢は従姉に代わって公爵令嬢として結婚します。

しゃーりん

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その夜、ローザリンデは父親である公爵に、自分が側妃になる決心をしたと打ち明けた。


「どういうことだ?お前にはベネディクト君がいるだろう?
 候補に挙がっているのはソレーユなんだよ?」

「はい。ですが、ソレーユにはその気がありません。
 それに、あの性格ですと王太子妃殿下と上手く付き合えるとは思えません。
 彼女がこのタフレット公爵家の親戚であることは周知の事実。
 彼女の評価がこの公爵家にも影響を及ぼすでしょう。
 私はお父様やお兄様を守りたいのです。」

「いや、しかし……まだソレーユに決まったわけじゃない。
 それにソレーユが問題を起こすとは思えないが……」

「何を言っているのです。あの子は意外と我が儘なのですよ?
 私はいつも困らせられています。
 外面がいいだけなので、王宮で不満が爆発することを考えると恐ろしくて。」

「そ、そうなのか?だが、お前が側妃になってしまうと私は寂しいぞ?」

「お父様、嫁ぐ娘にあまり会えないのは誰に嫁いでも同じことです。
 ですが、私は王子を産むことを望まれているのです。王族になるのですよ?
 もう少し早く私が産まれていれば、確実に王太子妃になっていたことでしょう。
 残念ながら側妃ではありますが、光栄なことだと思っています。
 ベネディクト様も婚約解消に同意してくださいました。
 レジャード公爵様にも上手く伝えるので、あとは親同士に任せるとのことでした。」

「ベネディクト君も同意を?……そうか。決心は固いんだな。
 側妃に名乗りを挙げるともう逃げることは許されない。いいんだな?」

「はい。私が望んで立候補していると選定者たちにお伝えくださいませ。」

「わかった。伝えよう。早ければ卒業後すぐに呼ばれるかもしれない。あと2か月だな。」

「ええ。ですが、出て行くのが少し早まるだけです。」
 
「……そうだな。お前もソレーユもいなくなると思うと寂しいよ。」

「そうですね。……ソレーユもここから出て行くのですね。」

 
父親との話を終えて部屋に戻ったローザリンデは、とてもいいことを思いついた。

ソレーユを私専属の侍女にすればいいのよ。王宮侍女には変わりないわ。
あの子の希望する王城勤務じゃないけれど。
でも国に雇われて働くということでは同じだわ。
あの子の望みと私の望みが合うじゃないの。

王宮で王太子様に大切にされる私を目の前で見せつけるの。
場所と相手が変わるだけで、私が思い描いた通りに過ごせるじゃない。
すぐに口答えするあの子を手元に置いてあげるのよ?感謝してほしいわ。

私は公爵令嬢でソレーユは伯爵令嬢。
もうすぐ王太子の側妃とただの王宮侍女。
立場の違いを理解させるには身近で目の当たりにさせるべきなのよ。 



 
 
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