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しおりを挟む廊下でローザリンデの侍女と話をしていたソレーユは驚いた。
いつの間に、ベネディクトが近づいて来ていたのか。
「ソレーユ嬢はこの公爵家の客だろう?
どうして侍女の君が彼女に仕事を押し付けようとするんだ?」
「ご、誤解です。ローザリンデ様はソレーユ様の将来のために侍女の仕事を教えていて。
私もその手伝いをしようと思ったのです。」
「だけど、聞こえた話は君のミスをソレーユ嬢に被せるようなことだったよ?
それは間違ったことで君が責任を持って対応すべきことだと思うが。」
「そんなつもりでは……」
「それに、ソレーユ嬢は学生だ。侍女としてまだ働いているわけじゃない。
もちろん、奴隷でもない。
まさかローザリンデ嬢がそんな指示をしているのか?」
「い、いえ、違います。ローザリンデ様はとてもお優しいのでそのような扱いはしておりません。」
「じゃあ、君の独断なんだね。
ここのタフレット公爵の姪であるソレーユ嬢は他家の令嬢でお客様なんだ。
僕はソレーユ嬢を侍女だと紹介された覚えはない。
今後、彼女がどういう立場になろうが、今現在の関係を忘れるな。
公爵家の使用人として、自分の振る舞いが主にどう影響するか、考えた上で行動するべきだ。」
「はい。申し訳ございませんでした。」
「謝る相手は僕じゃないよ?」
「……ソレーユ様、申し訳ございません。」
「ええ。謝罪は受け取ります。」
侍女は頭を下げて去って行った。
「ソレーユ嬢、いつもこんな感じなのかい?」
「いつもというわけでは……大体は断っています。普段は学園で忙しいので。」
「公爵は知っているのかい?」
「知らないです。私は王宮の侍女になるつもりなのですが、皆様、勘違いされているのです。
私がローザリンデ様の侍女になる気だと。
ベネディクト様に嫁がれる時についていく侍女になりたくて必死なのですよ。」
「あぁ、そういうことか。専属侍女全員というわけにはいかないからな。
ソレーユ嬢にソノ気がないのにどうしてなんだろうな。」
それは、ローザリンデ様が侍女たちの前で王宮侍女じゃなくて自分の侍女になれって言ってるからなんです。ってベネディクト様に言えるわけないんです。
この人は、ローザリンデ様と仲睦まじく見えて、本心では別のことを考えていそうだから。
もし、ローザリンデ様が私を侍女として連れて行くことを望んでいると知ったら、喜んで同意するかもしれない。
そうなれば、王宮侍女になる道が閉ざされてレジャード公爵家の侍女にされてしまう。
もし、事あるごとにこの人に絡まれたらローザリンデ様に何をされるか……
あぁ……言葉の端々に優越感を潜ませるローザリンデ様の侍女になるくらいなら、知らないお客様にお茶出ししている方が気が楽だわ。
だから、ベネディクト様にはあまり近づきたくないの。
今もこうして話をしていると、誰かがローザリンデ様に報告しそうで怖いっ!
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