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しおりを挟むメルリーが実家に戻った次の日の夜、ディール伯爵からバーティ子爵宛に手紙が届いた。
今まで特に関わったことのない相手からの手紙に、少し困惑しながら手紙を開封した。
「……なんだ、これは。どういうことだっ!!」
手紙を持つ手が怒りで震えていた。
ディール伯爵はブレイズの上官だった。
そして、伯爵夫人がメルリーを虐めていたということだった。
ブレイズと女騎士の話をして嘲笑い、浮気の話を面白おかしく話した結果、メルリーは倒れて流産したのだという。
女騎士とのキスのことを知らず、お茶会で笑われていたとは聞いたが、ここまでとは思っていなかった。
しかも、流産までしていたとは。
メルリーは言わなかった。
いや、まだ自分の口から話せなかったのだろう。
ごく最近のことのようだ。
伯爵も、自分の屋敷で起こったことなのに詳細を昨日まで知らなかったと詫びていた。
今日、ブレイズにメルリーの体調を確認すると、昨日、離婚したと聞いたらしい。
しかも、ブレイズもメルリーの妊娠と流産を知らないまま離婚したようだという。
メルリーは誰にも話せないまま、一人で哀しんでいるのだ。
伯爵の手紙は謝罪と慰謝料についてだった。
夫人は社交禁止の上、謹慎させているらしい。
メルリーの流産の原因が、伯爵夫人によってもたらされた精神的苦痛という立証は難しいにも関わらず、伯爵は謝罪と慰謝料を支払うという。
伯爵自身は誠実な人柄のようだ。
しかし、隊員といい、妻といい、周りには恵まれていないらしい。
格上の伯爵がここまでしているのだから、謝罪を受けないわけにはいかないのだが。
「メルリーを慰めてやってくれ。」
バーティ子爵は妻に手紙を見せた。
妻は手紙を読みながら涙を浮かべ、娘メルリーの元へと向かった。
女親に任せるべきだろう。
妻にも、メルリーの後の子を流産した経験があるのだ。
一晩、妻は戻ってこなかった。
メルリーと共に眠ったらしい。
翌朝、少し目を腫らしたメルリーは、もう大丈夫だと言うように微笑んでいた。
つらい経験をしたが、乗り越える力がメルリーにはある。
「デュール伯爵から手紙が届いたそうですね。」
メルリーがそう聞いてきた。
「ああ。夫人は謹慎させたらしい。もし、それで許せないのであれば伝えるが。」
メルリーは首を横に振った。
「あの朝、少し気分が悪くてお茶会に行こうか悩んだのです。その時に妊娠の可能性に気付くべきでした。
なので、私の不注意でもあるのです。最後まで話を聞かなくても、子は流れていたかもしれません。
帰宅途中に倒れていた可能性もありました。」
確かに、妊娠に気づいていたら、精神的苦痛を味わうお茶会に行くことはなかっただろう。
不興を買おうとも出産までお茶会に出席せず、心の安寧に努めたに違いない。
そんなお茶会が無くなり、夫人が謹慎させられたのであれば、もうメルリーが言うことはない。
流れた子は、どうしたって戻らないのだから。
「そうか。ならばこのまま伯爵の申し出通りとしよう。」
伯爵も、自身の子供のために離婚するのは躊躇うだろう。
原因を知られては、子供たちの良縁も減る。
伯爵夫人の謹慎がどの程度の期間になるかは伯爵が見極めるはずだが、もう大きな顔はできないはずだ。
メルリーが伯爵夫人と顔を合わせる機会は、ないだろう。
その後は、メルリーの妊娠と流産のことを知ったブレイズから手紙が何度も届いた。
押しかけてきても会わせないが、謝罪して自分だけが気を楽にしたいというような迷惑な行動をとることはせず、メルリーを体調や心境を気遣う気持ちがあることだけはわかった。
ブレイズの両親、友人の男爵夫妻からも謝罪があったが、もう親しく付き合うことはできない。
そして、穏やかに実家で暮らすメルリーに結婚の打診があったのは、意外と早かった。
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