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しおりを挟む離婚した日の夕方、仕事に集中できていないことをアイリーンに気づかれた。
彼女とは部屋に行ったあの日以来、少し距離を取るようにしていた。
「ブレイズ、どうかしたの?」
「いや、別に。」
「元気ないわよ?そうだ。たまには少人数で飲まない?イーサンたちにも声をかけるわ。」
少人数で、か。
離婚したことを話すにはちょうどいいかもしれないな。
仕事中に話すようなことではないし。
「そうだな。わかった。」
「じゃあ、仕事が終わったらいつもの店に来てね。」
「ああ。」
どうせ、家に帰ってもメルリーはいない。
飲んで帰るとあとは寝るだけで済む。
そう思った。
店に入ると、アイリーンの姿が見えた。
「まだ誰も来てないのか?」
「ごめん、誘いそこねたの。急だったしね。」
「そうか。……何か頼んだのか?」
「ええ。たくさん食べましょう。」
アイリーンと二人きりでの食事は初めてだった。
親睦会の時と違い、アイリーンはいくら飲んでも明るく話し続けるだけで、楽しかった。
「で?何があったの?」
だから、ふと心配してくれる声に素直に答えた。
「離婚、した。」
「……そう。傷ついているのね。」
そうか。自分は傷ついているのか。
アイリーンの言葉に、ブレイズは納得した。
泣きそうになり、ブレイズは酒を煽った。
ひどく酔ったブレイズを、今度はアイリーンが家まで送ってくれた。
出迎えた使用人のローザが、アイリーンが一緒なのを見てひどく軽蔑した視線を向けたことで少し酔いが醒めた。
ローザの視線から逃げるように、寝室に入るとアイリーンにキスをされた。
そんなつもりで送ってもらったわけではなかったが、抵抗する気も失せた。
ベッドに押し倒されながらキスを繰り返し、アイリーンはブレイズの下半身に触れて刺激し始めた。
そして自ら服を脱ぎ、ブレイズに跨って腰を振り始めた。
一度目はされるがままだったが、二度目はまるで犯すかのように乱暴に抱いた。
それでもアイリーンは嬌声をあげていた。
目覚めると朝になっていた。
仕事がある。
隣で眠っているアイリーンを慌てて起こした。
「時間がない、急ぐぞ。」
服を着て寝室から出ると、再びローザの冷たい目があった。
「先に仕事に向かってくれ。」
アイリーンを家から出した。
「……何が言いたい?離婚したんだ。俺の勝手だろう?文句があるなら辞めて出て行け。」
使用人に非難の目を向けられる覚えはない。
しかし、ローザの返答はブレイズに現実を思い出させた。
「私はあなたに雇われているわけではございません。それに、この家はメルリー様のものです。
離婚した昨日に出て行くべきはあなただったのですが、あなたの行く場所が定まるまでここにいてもいいというメルリー様の温情だったのです。
ですが、メルリー様と過ごしたこの家に、あなたは離婚したその当日に女連れで帰ってきて一晩を共に過ごした。
旦那様は即座にあなたを追い出せとのことです。荷物を纏めて今すぐ出て行ってください。」
ローザの言う旦那様とは、メルリーの父親であるバーティ子爵だ。
昨夜のうちに、ローザの夫ジムが子爵に報告したのだろう。
そうだ。
ここはメルリーの家だ。
使用人も子爵家で雇われている。
両親に愛されているメルリーは、結婚後も苦労しない暮らしをしていた。
金銭的に余裕があることはブレイズも、有難いと思っていたのだ。
それなのに、メルリーと何度も愛し合ったベッドで、アイリーンを抱いた。
この家も、あのベッドも、ブレイズのものではないのに。
軽蔑した視線を向けられるのは当然だった。
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