男女の友人関係は成立する?……無理です。

しゃーりん

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ロベルトのキスがお仕置きではなく拷問のようだったとローゼマリーが話すと、目の前の友人三人は顔を真っ赤にしていた。

怒ってくれているのかしら?でも、そんな表情でもないし……
 

「あ、ひょっとして、私と違って息継ぎが下手じゃないから同意できないのかしら?」

「……そうじゃないわ。ローゼマリー、あなたたちって、その、深いキスをしているってことよね?」


深いキス?
 

「呼び方はわからないけれど、触れ合うだけのキスじゃないって意味では、そうね。」


あ、彼女たち、恥ずかしそうにしているわ。そのせいで、顔が赤くなっていたのね。
 
 
「いつから、そんなキスを?」


ユミリアが恥ずかしそうなのに、興味津々そうに聞いてきた。


「いつから……15歳になる少し前からかしら?13歳の途中までは額や頬だったの。それから唇へのキスも加わって、って感じ?違うの?」

「……まだそこまで深いキスはしたことがないわ。」


ユミリアの言葉に、他の二人も頷いていた。 
二、三秒、唇を触れ合わせる程度らしい。


「どうして、そんなに長い時間二人きりが許されているの?」

「二人きりじゃないわよ?」

「え……どういうこと?」

「侍女はいるし。私たちがキスしている間も出たり入ったり、いろいろしているわよ。お茶を入れ替えてくれたり、甘味や果物を用意してくれたり。それをつまみながらキスしているわ。」


あれ?変なのかな。


「ご両親も侍女たちも、何も言わないの?」


カティアが不思議そうに聞いてきた。

 
「何も言われたことはないわ?でも、ロベルトは父に許しを得ているみたいなことを言っていたわね。
それに、両親がどこでもいちゃついているんだもの。侍女たちも慣れているわ。」


婚約者ならそういうものだと思っていたけれど、違うみたい。
そう言えば淑女教育の時に、たとえ婚約者でも二人きりになることは許されないって言っていたわね。
でも、侍女もいるし問題ないでしょ?
 

「こ、侯爵夫妻も?そうなのね。」 


友人たちは、公爵家の跡継ぎよりも母を選んだ父のことを情熱的で素敵だと言っていた。
確かに、ローゼマリーも父をかっこいいと思った。

でも、父の関心は、母が八割、子供が二割といった具合であり、子供は母を逃がさないための足枷だったのではないかと思うときがある。
 
思い返して見ればそれくらい、母への愛情が深く、重い。


父は友人として母のそばに六年間いた。
母には聞けないけれど、ひょっとすると父が自分のことを友人以上に見ているのではないかと気づいていたのかもしれない。

それでも友人として過ごした期間、母は心を揺れ動かすことはしなかったのだと思う。

それこそ、婚約者の交換など簡単な話ではないし、父と母の元婚約者たちは継ぐ爵位もなかったのだから。


父とロベルトは少し似ている。顔じゃなくて、性格が。
最近、それをよく感じる。

となると、魔が差したら……と言ってしまったことは確かに失言だった。

 
おそらく母も、同じような失言を重ねて父からお仕置きされた結果で、今の夫婦関係が出来上がったのだと思った。

 

 
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