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しおりを挟む落ち着いた日々を過ごしていたある日、ローゼマリーが学園に行くと、ユミリアが少し怪訝な顔をした。
「おはよう、ローゼマリー。何か、少し唇が腫れていない?」
「おはよう、ユミリア。まだちょっとわかってしまうかしら。ロベルトにお仕置きをされたの。」
「お仕置き、で唇が腫れる理由がよくわからないけど、何をしたらお仕置きされることになるのかしら。」
「あー……ここではちょっと?またお昼にね。」
さすがに、ローゼマリーも誰が聞き耳を立てているかもわからない教室で話す気はなかった。
ロベルトのお仕置きだと口にした時点で、『またお仕置きが必要かな?』というようなロベルトの表情が目に入ったからという理由でもあったけれど。
ユミリアも空気を察し、また後でと苦笑していた。
昼休憩時、ユミリアは中庭に移動することを提案し、みんなで移動した。
「それで?お仕置きって、なに?」
ユミリアは、経緯を知らない友人たちにも朝の会話を話し、それを聞いて興味津々の三人がローゼマリーに詰め寄ってきた。
「えっと……ロベルトをちょっと怒らせちゃったのよ。大したことではないのよ?失言しただけで。」
「失言ね。何て言っての?」
どうしてそんなに知りたがるの?
別に話しても構わないけれど、なんだかいつも笑われている気がするわ。
そんな面白い話しているつもりはないのだけれど。
「あのね、『つい魔が差して浮気しちゃっても私には言わないでね』って……」
そう言うと、友人三人は『あー……』と声に出さずに同じような表情をしていた。
「ロベルト様に限って、魔が差すってことは絶対にないわね。」
「でも、わからないじゃない?酔っ払って誘われたらソノ気になったとか、私と間違ったとか。」
「「「ないでしょ。」」」
三人揃ってそう言われてしまうと、『……ないわね。』と思えてしまった。
「その失言でお仕置きされたの?お仕置きって言葉、久しぶりに耳にしたわ。」
子供のころに兄が、とか、弟が、とか三人が話しているのを聞くと、16歳の令嬢がお仕置きされることは普通はないのだとローゼマリーは理解した。
うん。ロベルトに苦情を言おう。
「それで、どんなお仕置きだったの?唇が腫れるって、何?」
「一時間以上、ずっと、ずっとキスされ続けたの。死ぬかと思ったわ。舌も疲れたし。」
「「「え…………?」」」
三人は絶句といった感じで固まったけど、私は息継ぎが下手なのよ。
「私ね、キスする時の息継ぎが下手で、息を止めてしまうのよ。鼻呼吸を忘れてしまうのね。普段は、私が苦しくなる前にロベルトが息継ぎするために離してくれるんだけど、お仕置きの時は倍の時間くらい続けるの。しかも、今回はそれが繰り返し一時間以上も続いたから、本当に窒息するかと思ったわ。お仕置きというか、拷問よね?」
ローゼマリーは三人に同意してもらおうと思って聞いたのに、目の前の友人たちは揃って顔を真っ赤にさせていた。
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