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ローゼマリーは、グレッグの下心を知らなかったので、万が一ロベルトに捨てられた後に求婚されていれば心が動いたかもしれないと想像するとゾッとした。


「ローゼマリー、どうした?」


ローゼマリーが急に眉間にしわをよせて不快そうな顔をしたからか、兄が聞いてきたので、想像してしまったことを伝えた。


「あぁ、なるほどな。さっきも言ったけれど、友人というのは知人よりも一歩進んだ関係だと思う。
たまにあるのが、お互い夫婦ぐるみで仲の良かった友人関係だったのに妻と夫、それぞれ配偶者を亡くしてしまうと残された二人は慰め合っているうちに男女の関係になってしまうと聞くよ。」


それに似たものだから、と兄は言った。


「……男女の友人関係って、実は危ういのね。」

「ああ。さっきの例で、夫一人だけ亡くなったとする。残された夫人を友人夫婦で慰めていたけれど、男一人で夫人を訪れる機会が出来てしまえば、不貞関係になることも有り得る。」

「奥様とも友人なのに?」

「友人関係にあったということは、心を許しやすい関係でもあるんだ。つい魔が差すこともある。」


魔が差す、ね。
友情に同情が加われば、愛情も芽生えるのかしら。
妻との修羅場になると思うけど。
不貞相手となってしまった友人は、男を奪う気で縋ってしまうのかな?
幸せになれるとは思えないけど。


「男女の友人関係が同性との友人関係と同等になれないとはわかったけれど、でもそれに近い関係はあるわよね?」

「そうだな。二人きりで会うような誤解される行動を取らないようにお互いが気を付けることで、クラスメイトだとか、それこそ友人の婚約者だとか、婚約者の友人とか、友人の兄弟とか、幼馴染とか、知人よりも親しければ友人といった括りに入れるしか、当てはまる言葉がない関係はあるな。」
 
「……友人って、幅が広いのね。」

「純粋な友人関係を主張しても周りは疑ってしまうから、貴族だと特に難しいだろうな。噂されても気にせずに堂々と何年も過ごせば認めてもらえるかもしれないが、それでも夫が女の友人に二人きりで会うことを許せる心の広い女性を探すのは難しいだろう。」 

「確かに。」


そうなると、お互いに独身のまま友人関係でいるしかないのでしょうね。
それでも、いつか相手が自分を望んでくれると片方が思い続けている可能性もあるわ。

そんなことを言い出したらキリがないけど。


ローゼマリーはマチルダから植え付けられた『男女の友人関係は同性と同等に成立する』という洗脳を簡単に解き、それどころか有り得ないと思う逆方向にまで振り切れて、すっかりと目が覚めていた。
 


 
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