17 / 22
17.
しおりを挟む離婚してそれほど経っていない今であれば、ハリソンはまだシェルニアを受け入れてくれるかもしれない。
その思いがどうしても頭から離れなかったシェルニアは、もう何もするなと兄から言われたにも関わらず、ハリソンに手紙を書いた。
あれからシェルニアは一つ思いついたのだ。
ハリソンとの子供ができるまで再婚しなければいいのではないか、と。
離婚した後も未練があって体の関係を続けていたことにすれば、再婚前に子供ができたとしても復縁なので非難され難いのではないかと思ったのだ。
そうなれば、公爵夫人も孫を妊娠したシェルニアを再び嫁として受け入れてくれるはず。
そんな思いで。
シェルニアの手紙に対する返事が届き、ハリソンが指定した場所で侍女のリコッタと待っていると、ハリソンの侍従がやってきた。
彼に従って馬車に乗り、着いたのはどこかわからない屋敷だった。
「……ここは?」
「中でハリソン様がお待ちです。どうぞ。」
ハリソン個人の別宅のようなものだろうか。そう思いながら中に入った。
応接室で待っていたハリソンに、前のソファに座るように促されて座った。
「それで?いったい何の話があるんだ?」
「あの、ごめんなさい。私、ずっと勘違いをしていて。あなたはカサンドラ様が好きなのだと思っていたの。だから、私との結婚は不本意なのに王妃様のお心遣いを無下にできないからだと思い込んでいて白い結婚だなんて言ってしまって。
あなたが私と結婚してくれたのは厚意からだと聞いたわ。気づかなくてごめんなさい。」
「いや、もう終わったことだ。話はそれだけ?」
「いえ、あの……私たち、やり直せないかしら?」
「それは無理だな。母を怒らせる前、いや、離婚する前なら可能だったけどな。」
つまり、もう少し早く素直になっていれば後悔せずに済んでいたってこと?
「じゃあ、こういうのはどうかしら。私が妊娠したら再婚するの。どう?」
「ハハハッ!君は愛する男にしか体を許す気がないと言っていたじゃないか。俺が好きになった?
違うな。このままじゃ再婚相手も見つからないし、純潔だと知られるわけにはいかない。
俺以上にいい相手がいないとようやく気づいたんだろう?愛がなくても構わないと思えるようになった。
それに、経験のないまま未婚で一生過ごすのも不満に思うようになった。
今ならまだ、俺が許してくれるかもしれないと思って厚顔無恥にも手紙を出した。違うか?」
図星過ぎて顔が熱くなった。
「残念だが、もう次の相手はいるんだ。どう頑張っても君が戻って来られる場所はうちにはない。
あぁ、純潔を捨てたいのであれば協力くらいはするよ?だが妊娠はさせない。どうする?」
どうする?って……
「それって、愛人、ってこと?」
「愛人になりたいのか?公爵令嬢がの君が?冗談だろう?一夜の遊び、だよ。」
遊び。一夜、の遊び。一晩だけ。それって愛人以下……
「あぁ、君にはジャレッドの方がいいか。頼んでやろうか?喜んで引き受けてくれると思うよ。」
「なっ……。ジャレッド王太子殿下にはカサンドラ様が……」
「別に側妃や愛妾にしようってわけじゃない。というか、君はなれないけどな。一夜の遊びだよ。」
え……ジャレッド王太子殿下も妃がいるのにほかの女性を抱いたりするってこと?
358
お気に入りに追加
651
あなたにおすすめの小説
【完結】愛に裏切られた私と、愛を諦めなかった元夫
紫崎 藍華
恋愛
政略結婚だったにも関わらず、スティーヴンはイルマに浮気し、妻のミシェルを捨てた。
スティーヴンは政略結婚の重要性を理解できていなかった。
そのような男の愛が許されるはずないのだが、彼は愛を貫いた。
捨てられたミシェルも貴族という立場に翻弄されつつも、一つの答えを見出した。
完結 そんなにその方が大切ならば身を引きます、さようなら。
音爽(ネソウ)
恋愛
相思相愛で結ばれたクリステルとジョルジュ。
だが、新婚初夜は泥酔してお預けに、その後も余所余所しい態度で一向に寝室に現れない。不審に思った彼女は眠れない日々を送る。
そして、ある晩に玄関ドアが開く音に気が付いた。使われていない離れに彼は通っていたのだ。
そこには匿われていた美少年が棲んでいて……
【完結】王太子殿下に真実の愛だと見染められましたが、殿下に婚約者がいるのは周知の事実です
葉桜鹿乃
恋愛
「ユーリカ……、どうか、私の愛を受け止めて欲しい」
何を言ってるんだこの方は? という言葉を辛うじて飲み込んだユーリカ・クレメンス辺境伯令嬢は、頭がどうかしたとしか思えないディーノ・ウォルフォード王太子殿下をまじまじと見た。見つめた訳じゃない、ただ、見た。
何か否定する事を言えば不敬罪にあたるかもしれない。第一愛を囁かれるような関係では無いのだ。同じ生徒会の生徒会長と副会長、それ以外はクラスも違う。
そして何より……。
「殿下。殿下には婚約者がいらっしゃいますでしょう?」
こんな浮気な男に見染められたくもなければ、あと一年後には揃って社交界デビューする貴族社会で下手に女の敵を作りたくもない!
誰でもいいから助けて欲しい!
そんな願いを聞き届けたのか、ふたりきりだった生徒会室の扉が開く。現れたのは……嫌味眼鏡で(こっそり)通称が通っている経理兼書記のバルティ・マッケンジー公爵子息で。
「おや、まぁ、……何やら面白いことになっていますね? 失礼致しました」
助けないんかい!!
あー、どうしてこうなった!
嫌味眼鏡は今頃新聞部にこのネタを売りに行ったはずだ。
殿下、とりあえずは手をお離しください!
※小説家になろう様でも別名義で連載しています。
結婚式の日取りに変更はありません。
ひづき
恋愛
私の婚約者、ダニエル様。
私の専属侍女、リース。
2人が深い口付けをかわす姿を目撃した。
色々思うことはあるが、結婚式の日取りに変更はない。
2023/03/13 番外編追加
【完結】おまえを愛することはない、そう言う夫ですが私もあなたを、全くホントにこれっぽっちも愛せません。
やまぐちこはる
恋愛
エリーシャは夫となったアレンソアにおまえを愛することはないと言われた。
こどもの頃から婚約していたが、嫌いな相手だったのだ。お互いに。
3万文字ほどの作品です。
よろしくお願いします。
あなたが私を捨てた夏
豆狸
恋愛
私は、ニコライ陛下が好きでした。彼に恋していました。
幼いころから、それこそ初めて会った瞬間から心を寄せていました。誕生と同時に母君を失った彼を癒すのは私の役目だと自惚れていました。
ずっと彼を見ていた私だから、わかりました。わかってしまったのです。
──彼は今、恋に落ちたのです。
なろう様でも公開中です。
今日は私の結婚式
豆狸
恋愛
ベッドの上には、幼いころからの婚約者だったレーナと同じ色の髪をした女性の腐り爛れた死体があった。
彼女が着ているドレスも、二日前僕とレーナの父が結婚を拒むレーナを屋根裏部屋へ放り込んだときに着ていたものと同じである。
旦那様は私に隠れて他の人と子供を育てていました
榎夜
恋愛
旦那様が怪しいんです。
私と旦那様は結婚して4年目になります。
可愛い2人の子供にも恵まれて、幸せな日々送っていました。
でも旦那様は.........
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる