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離婚してそれほど経っていない今であれば、ハリソンはまだシェルニアを受け入れてくれるかもしれない。

その思いがどうしても頭から離れなかったシェルニアは、もう何もするなと兄から言われたにも関わらず、ハリソンに手紙を書いた。


あれからシェルニアは一つ思いついたのだ。

ハリソンとの子供ができるまで再婚しなければいいのではないか、と。 

離婚した後も未練があって体の関係を続けていたことにすれば、再婚前に子供ができたとしても復縁なので非難され難いのではないかと思ったのだ。

そうなれば、公爵夫人も孫を妊娠したシェルニアを再び嫁として受け入れてくれるはず。

そんな思いで。 



シェルニアの手紙に対する返事が届き、ハリソンが指定した場所で侍女のリコッタと待っていると、ハリソンの侍従がやってきた。
彼に従って馬車に乗り、着いたのはどこかわからない屋敷だった。


「……ここは?」

「中でハリソン様がお待ちです。どうぞ。」


ハリソン個人の別宅のようなものだろうか。そう思いながら中に入った。

応接室で待っていたハリソンに、前のソファに座るように促されて座った。


「それで?いったい何の話があるんだ?」

「あの、ごめんなさい。私、ずっと勘違いをしていて。あなたはカサンドラ様が好きなのだと思っていたの。だから、私との結婚は不本意なのに王妃様のお心遣いを無下にできないからだと思い込んでいて白い結婚だなんて言ってしまって。
あなたが私と結婚してくれたのは厚意からだと聞いたわ。気づかなくてごめんなさい。」

「いや、もう終わったことだ。話はそれだけ?」

「いえ、あの……私たち、やり直せないかしら?」

「それは無理だな。母を怒らせる前、いや、離婚する前なら可能だったけどな。」


つまり、もう少し早く素直になっていれば後悔せずに済んでいたってこと?


「じゃあ、こういうのはどうかしら。私が妊娠したら再婚するの。どう?」

「ハハハッ!君は愛する男にしか体を許す気がないと言っていたじゃないか。俺が好きになった?
違うな。このままじゃ再婚相手も見つからないし、純潔だと知られるわけにはいかない。
俺以上にいい相手がいないとようやく気づいたんだろう?愛がなくても構わないと思えるようになった。
それに、経験のないまま未婚で一生過ごすのも不満に思うようになった。
今ならまだ、俺が許してくれるかもしれないと思って厚顔無恥にも手紙を出した。違うか?」 


図星過ぎて顔が熱くなった。


「残念だが、もう次の相手はいるんだ。どう頑張っても君が戻って来られる場所はうちにはない。
あぁ、純潔を捨てたいのであれば協力くらいはするよ?だが妊娠はさせない。どうする?」
 

どうする?って……


「それって、愛人、ってこと?」

「愛人になりたいのか?公爵令嬢がの君が?冗談だろう?一夜の遊び、だよ。」


遊び。一夜、の遊び。一晩だけ。それって愛人以下……


「あぁ、君にはジャレッドの方がいいか。頼んでやろうか?喜んで引き受けてくれると思うよ。」

「なっ……。ジャレッド王太子殿下にはカサンドラ様が……」

「別に側妃や愛妾にしようってわけじゃない。というか、君はなれないけどな。一夜の遊びだよ。」


え……ジャレッド王太子殿下も妃がいるのにほかの女性を抱いたりするってこと? 




 


 
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