素直になれなかったことを後悔した私は自分を見つめ直し幸せになる。

しゃーりん

文字の大きさ
上 下
14 / 22

14.

しおりを挟む
 
 
再婚相手が一人もいないと兄から言われ、シェルニアは驚いた。 


「お兄様、いない、ってそんなことはないでしょう?」

「お前は公爵令嬢だ。公爵家・侯爵家が望ましいが伯爵家までが嫁ぎ先としての許容範囲だろう。
そして、目ぼしい貴族家は既に妻がいるか婚約者がいる。残るのは借金があるなどして嫁のなり手がいない貴族家くらいだ。それでもいいなら嫁げるが。使用人はほとんどいないだろうな。」
 
「嫌よっ!」

「あとは、家を継がない次男・三男だな。」

「……それって貴族らしい暮らしができるの?」

「できないな。どちらかと言えば、平民に近い暮らしだろう。」


シェルニアはそこまでいないとは思っていなかった。


「それに、お前は子供が産めるかどうかわからないと思われているから、持参金や援助目的で縁談を申し込まれることはあっても子供が既にいる相手か、夫の愛人が子供を産むことを許すことになる。
つまり、お前が期待するような結婚相手は誰もいない。」

「……そんな。」 


お金目当ての相手なんて、どんな扱いをされるかわからないわ。私を人質のようにして公爵家から金を引き出そうとするかもしれないのだから、そんな相手は嫌よ。


「そもそも、お前はずっと思い違いをしている。ハリソン殿との結婚は王妃様の心遣いではないし、王妃様が次々と紹介してくれるような令息など当時からいるはずがない。」

「え……?王妃様じゃないの?」

「ああ。本来は、王太子妃候補から落ちた場合でも結婚に困らないように各家で受け皿となってくれる令息を打診しておくんだ。でないと、お前みたいに高位貴族令嬢の結婚相手がいなくなってしまうから。」

「じゃあ、ハリソン様はお父様が打診してくれていたってこと?」

「いや、それも違う。父上はお前が王太子妃になるだろうと思っていた。いつもお前は自信満々だっただろう?だが、一応打診はしておこうと行動したが遅かった。婚約者がいないと思えば他の王太子妃候補から打診を受けていたり、それにお前は従弟のことも拒んだだろう?」


従弟は2歳下で、万が一の結婚相手と言われたとき、拒絶した。
本人の前で、ジャレッド王太子殿下と比較したことを言った覚えがある。従弟は……睨んでいた。
その後、交流はない。 


「ハリソン殿は、ジャレッド王太子殿下が選ばなかった令嬢が、誰の受け皿もなかった場合に念のためと婚約者を作らずにいてくださったのだ。もちろん、テック公爵夫妻とハリソン殿本人の意思でね。
最後まで残った王太子の婚約者候補なんだ。家柄や素質に問題はないはずだ、とね。
それぞれに相手がいれば、彼の出番はなかった。彼は公爵令息だから、何歳になろうと相手には困らない。」

「……私に相手がいなかったから、ハリソン様が結婚してくれた?」

「そうだ。お前が白い結婚だなんて言い出す前は、いろいろと贈り物をしてくれたりデートしたりしてくれていただろう?婚約者としてお前のことを知ろうとしてくれていたんだ。」


そうだった。嬉しかったのを覚えている。


「だけど、ハリソン様はカサンドラ様が好きだったのよ?彼女が王太子妃に選ばれなかったら結婚しようと思って待っていたのに私になったから、彼も結婚を望んでなかったはず。だから白い結婚に同意したのでしょう?」

「前にも、彼がカサンドラ妃殿下のことが好きだと言っていたが、本人から聞いたのか?」

「……違うわ。昔、学園かどこかで誰かが言ったの。『ハリソン殿もカサンドラ様だ』って。」

「それは、ジャレッド王太子殿下が誰を選ぶかの予想のことじゃないか?毎年のように男たちはやっていたぞ?」

「そうなの?」


確かに、今思えば公爵令息の好きな人が王太子殿下の婚約者候補って知られている方がおかしいわ。
 




 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

嘘をありがとう

七辻ゆゆ
恋愛
「まあ、なんて図々しいのでしょう」 おっとりとしていたはずの妻は、辛辣に言った。 「要するにあなた、貴族でいるために政略結婚はする。けれど女とは別れられない、ということですのね?」 妻は言う。女と別れなくてもいい、仕事と嘘をついて会いに行ってもいい。けれど。 「必ず私のところに帰ってきて、子どもをつくり、よい夫、よい父として振る舞いなさい。神に嘘をついたのだから、覚悟を決めて、その嘘を突き通しなさいませ」

今日は私の結婚式

豆狸
恋愛
ベッドの上には、幼いころからの婚約者だったレーナと同じ色の髪をした女性の腐り爛れた死体があった。 彼女が着ているドレスも、二日前僕とレーナの父が結婚を拒むレーナを屋根裏部屋へ放り込んだときに着ていたものと同じである。

旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます

おてんば松尾
恋愛
彼女は二十歳という若さで、領主の妻として領地と領民を守ってきた。二年後戦地から夫が戻ると、そこには見知らぬ女性の姿があった。連れ帰った親友の恋人とその子供の面倒を見続ける旦那様に、妻のソフィアはとうとう離婚届を突き付ける。 if 主人公の性格が変わります(元サヤ編になります) ※こちらの作品カクヨムにも掲載します

【完結】忘れてください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。 貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。 夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。 貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。 もういいの。 私は貴方を解放する覚悟を決めた。 貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。 私の事は忘れてください。 ※6月26日初回完結  7月12日2回目完結しました。 お読みいただきありがとうございます。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

第二王子は私を愛していないようです。

松茸
恋愛
王子の正妃に選ばれた私。 しかし側妃が王宮にやってきて、事態は急変する。

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。

松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。 そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。 しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす

まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。  彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。  しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。  彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。  他掌編七作品収録。 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します 「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」  某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。 【収録作品】 ①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」 ②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」 ③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」 ④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」 ⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」 ⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」 ⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」 ⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」

処理中です...