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しおりを挟む離婚して実家に戻ったシェルニアは、予定通りだというのに何かすっきりしない気持ちでいた。
本来、結婚2年経っても子供がいなければ離婚はできるが、通常はその前に第二夫人を迎える場合が多い。
第二夫人が妊娠すれば、夫の生殖能力に問題はなく、妻側にあったのだということになる。
となると、妻が離婚して実家に戻っても再婚できる可能性が下がるため、妻として嫁ぎ先に残ることを選ぶのだ。
シェルニアとハリソンの場合、白い結婚だということは兄と侍女以外誰も知らない。
そんな中で離婚した2人は、どちらが先に再婚して子供ができるかと密かに噂される。
そのことをシェルニアは失念していた。
ハリソンが先に再婚して子供ができると、シェルニアが子供を産めない女性だと認識されることを。
子供ができずに出戻った令嬢を非難してはいけないことになっているが、純潔なのにそう思われるということを。
再婚相手はみんな、シェルニアが子供を産むことを期待しない男性ばかりになるということを。
結婚前は、ジャレッド王太子殿下の婚約者に選ばれなかったことで、もう愛する人と結婚することができないのだと悲観し、結婚自体する気がなくなっていた。
だが、公爵令嬢として結婚しないわけにはいかず、また、王妃様のお心遣いを無下にするわけにもいかないと思い、ハリソンとの白い結婚を選んだ。
だけど、今となっては自分がどうしてそこまで頑なに愛する人にこだわったのかがわからない。
貴族令嬢として、誰もが望む相手に嫁げるわけではないとわかっていたのに。
ハリソンに抱いてもらおうと思ったこともあるのだから、愛がなくとも大丈夫なはず。
でも20歳を過ぎてしまった今、自分に相応しい男がどれだけいるだろうか。
結婚しないつもりだったのに、男女の交わりを知らない自分が女として劣っているように感じてしまい、愛がなくともそこそこの男であれば再婚したいと思うようになっていた。
それもこれも、ハリソンに経験がないと男女の性欲を理解できないと言われ、シェルニアには欲情しないと言われたことが悔しかったから。
再婚して、子供を産んで、幸せになる。これが今の目標になった。
ハリソンよりも先に再婚相手を見つければ、子供ができなかった原因が私だとは言われない。
ハリソンに子供ができても、私たちの相性が悪かったということになるだけだから。
シェルニアは兄に再婚相手を見繕ってもらおうとお願いに行った。
「お兄様、お願いがあるのですが。」
「ん?何か困ったことでもあったのか?」
「いえ、再婚相手を探してもらおうかと思いまして。」
「……どういうことだ?お前は結婚歴をつけるためにわざわざハリソン殿と白い結婚をしたのだろう?」
「そうなのだけど、その時は愛する人としか結婚したくないと思っていたの。だけど、貴族の結婚ってそうでないことも多いでしょう?それに、結婚してから愛するかもしれないし。」
「だったら、ハリソン殿と離婚せずに続けてもよかったんじゃないのか?」
「それも考えたのだけど、言い出しにくくて、意地を張っているうちに失言とかしてしまって、離婚の流れから逃れられなくなってしまったの。」
兄は大きなため息をついた。
「正直言って、お前の再婚相手に釣り合うような男はいない。」
いない?一人もいないの?
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