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ハリソンの企みに嵌まるということは、シェルニアが白い結婚を止めるということ。

その手に乗るつもりはなかった。


「いかにも浮気してきましたって姿を見せれば私が白い結婚を止めると言うと思ったのでしょう?それをずっと待っていただなんて、もっと早くその気はないと言っておくべきだったわね。」
 

ハリソンと閨を共にしないで後悔しないかと悩んでいたことはもうどうでもよかった。

私は、愛する人としか抱き合いたくないもの。



ハリソンは眉をひそめた後、言った。


「何を、どう勘違いしたらそういう結論になるのかはわからないが、俺は君に遊んでいいか確認を取った後、少なくとも週に1度は女を抱いているぞ?」


まさか。そんなはずないわ。そんな時間がどこにあったというの?

 
「君には経験がないからわからないのだろう。男の欲の発散なんて、交わらない時は早ければ10分もあれば済むときもある。交わる場合も必ずしもベッドが必要なわけじゃないぞ?立ったままでも座ったままでもできるんだから。」


……夜にベッドの上で裸になって性器を挿入して、何時間も子種が出るのを待つものじゃないの? 

こんなことを聞いたら確実に笑われそうね。閨事に関する知識なんて私にはほとんどないもの。
早ければ10分?そんなに手早く終わることもできるのね。だから、部屋で男性と2人きりでいると不貞を疑われることになるのね。納得だわ。

男女の交わりがどんなものなのか、やっぱり知りたい。そう思った。頼めばハリソンは抱いてくれる?


「もういいだろう?早く寝たいんだ。部屋から出て行ってくれるか?」

「あ、……わかったわ。おやすみなさい。」


そうだった。今さっき誰かを抱いてきたばかりなのであれば、今日は頼んでも無理なのよね。
次はいつ頃ならできるようになるのかしら。
男性の性欲のことなんて全くわからないし、ハリソンと夫婦ということになっているから誰にも聞ける相手がいないわ。

実家に帰って、お兄様にでも聞こうかしら。





 
そんなことを考えた翌朝、ジャレッド王太子殿下とカサンドラ王太子妃殿下の間に王子が誕生したという知らせが王都中にもたらされた。


「妃殿下は婚姻後数か月で懐妊なさって王子をお産みになられるなんて、素晴らしいことだわ。
あ、ごめんなさいね。シェルニアさんにあてつけて言ったわけではないのよ?」
 

1年9か月を過ぎても妊娠しない嫁であるシェルニアに、義母は『妊娠はまだか』と直接言ってきたことはなかった。 
だけど、今の言葉には悪意を感じた。


「私がジャレッド王太子殿下に嫁いでいたとしても同じように産めたと思います。」


義母のあてつけに対して思わず出てきた言葉は白い結婚をしている私が言っていい言葉ではなかった。
 

「……あなたは自分が妊娠しないのはハリソンに問題があると言いたいのね。」


優しい義母を怒らせてしまった。


「いえ、そういうつもりで言ったのではありません。王太子殿下が優秀なのだという意味で……」


また言葉選びを間違ってしまった。素直に謝罪するべきだったのに。


「わかりました。ハリソンには第二夫人を検討するように伝えます。そうすればあなたたちのどちらに問題があるかはすぐにわかるでしょう。もう頑張らなくて構いませんよ。これ以上、月のものがくる不安や来た時に悲しむことも必要ありませんし、もうハリソンと閨を共にする必要もありませんね。
第二夫人が来る。その心構えだけ、しておいてください。」


義母はそう言い残して去って行った。

確実に、怒らせてしまった。





 
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