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しおりを挟むシェルニアは、チェルシーからハリソンが人気が高いと聞いて驚いた。
「ついこの間まで、いえ、今もかもしれないけれど、一番注目されていた人よ。」
「え……ジャレッド王太子殿下ではないの?」
「ジャレッド王太子殿下ももちろん憧れの存在よ。でもそれは12歳から15歳くらいの令嬢にとって物語の中の王子様のような存在だから。でもハリソン様は現実を見る令嬢たちに注目されているの。」
「王太子殿下は婚約者候補に選ばれなければ近づけないけれど、ハリソン様は公爵令息だから?」
「もちろん、公爵令息という理由もあるけれど、それ以上に容姿が好まれているわ。」
「え……私は好みじゃないわ。」
「それ、人前で言わないでね。それでなくともハリソン様と結婚したことであなたは恨まれているのだから。」
知らなかった。あんながっしりとした体形の人が人気なの?
「シェルニア様は王太子殿下のようなスラっとした体形で爽やかな男性が好みのようだけど、ハリソン様のようなキリっとした美形でがっしりとした男性に守られたいって思う女性は多いのよ?」
そうかしら。少し、暑苦しそうな気がするのだけれど。
「だから、結婚後もアピールしてくる女性は後を絶たないと思うから気をつけてね。」
「わかったわ。」
何を、どう、気をつければいいのかしら。
それどころか、その中から好みの令嬢を見つければいいと思うわ。
離婚後の再婚相手として。
カサンドラに似た令嬢はいるかしら?
シェルニアはハリソンに近づく令嬢を遠くで見ながら、そんなことを考えていた。
結婚して半年が経った。
シェルニアはずいぶんとテック公爵家に慣れてきたように思う。
白い結婚は誰にもバレておらず、妊娠はまだ?という声も聞こえたけれど、気にしない。
先日、ジャレッド王太子殿下とカサンドラ妃殿下が結婚した。
あの場にいるのは私だったはずなのに……と少し恨めしく思ったが、幸せそうでお似合いだと思った。
ハリソンはどう感じたのだろう。もしかしたら、ここにいるのはカサンドラだったかもしれない。
そうなっていれば、こんな離婚前提の結婚なんてすることもなかったと思ったに違いない。
ハリソンとは普通に接している。
周りから見れば新婚の空気など一切ないけれど、淡々と過ごしていればこんな夫婦なのだと思われ始めたようだった。
そして1年が経つ頃、ハリソンに話があると言われた。
「俺たちは白い結婚を2年続けるという約束をした。それは君の希望を俺が了承したわけだが、俺も希望を言わないと不公平だと思うんだ。だから、このまま白い結婚を続けるのであれば俺が遊ぶことを許してほしい。」
白い結婚はハリソンも望んでいたことよね?なのに不公平なの?
「遊ぶことを許してほしいのね?いいわよ。好きに遊べばいいわ。」
「……助かる。黙って遊んでもよかったんだが、一応確認しておきたかったんだ。」
そう言ってハリソンは部屋を出て行った。
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