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しおりを挟む今日、王城に集められたのはジャレッド王太子殿下の婚約者候補とその両親。
初めは5人いた王太子殿下の婚約者候補は、今では3人になっていた。
テアンドル公爵家長女シェルニア
マーレン侯爵家長女カサンドラ
フレッツ侯爵家二女リアーヌ
14歳から4年間、ジャレッド王太子殿下と交流を続けてきた。
辞退した2人は、自分に王族となる素質がないと悟り割と早めに候補ではなくなったということになっているが、それぞれに仲の良い婚約者がいることを考えると、初めから辞退する気でいたのだろうと思った。
シェルニアも、彼女たちが選ばれることはないと思っていたし、婚約者候補の中で唯一の公爵令嬢である自分が選ばれる可能性が高いと思っていたのだ。
シェルニアはジャレッド王太子殿下のことを慕っていた。
王太子殿下だからではない。一人の男性としてすごく好ましく思っていた。
顔も体格も、声も話し方も、全てがシェルニアの理想の男性そのものだったのだ。
シェルニアは自分が選ばれるために、様々な努力をしてきた。
その甲斐あって、ジャレッドの母親である王妃様には好かれていると思っている。
しかし、国王陛下はカサンドラを気に入っているように見えた。
肝心のジャレッドの心はなかなか見えてこなかった。
だが、数週間前から、ジャレッドはシェルニアに一線を引き始めたように感じた。
ジャレッドには候補者の3人と一緒にお茶会をする時間が設けられている。
それとは別に、個別で会う時間も設けられている。
半年に一度は国王夫妻も交えての食事会も行われてきた。
ジャレッドの、3人の令嬢に対する距離はいつ見ても変わらなかった。
彼がまだ誰も選んではいないとホッとしていた。
彼が悩み続けた最後は、公爵令嬢であるシェルニアが選ばれるに決まっているのだ。
それを誰にも悟らせないように、ずっと誰とも距離を変えないでいる。
そう思っていたのに、少し前からジャレッドはシェルニアと距離を取ったように感じたのだ。
『まさか、今になって彼は私ではない誰かを選んだ?』
シェルニアは、自分が何かミスをした覚えはない。
となると、何か心境の変化があり、自分以外の2人のどちらかに惹かれた可能性があると怖くなった。
もうすぐジャレッドの相手が正式に決まる。
それまでにジャレッドと候補者が揃って会う日は設けられていなかったため、彼の心が誰かに向いたの確認する機会もなかったのだ。
しかし、そんな不安な胸の内を両親に告げることもできず、最後まで自分が選ばれるだろうと両親には報告していた。
そして、今から候補者3人から1人、ジャレッドが選ぶ。
彼が選んだのは、
「カサンドラ嬢、君を私の妻にしたい。」
……シェルニアではなかった。
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