17 / 24
17.
しおりを挟むマデリーンの義母であるランクス伯爵夫人は、マデリーンが王都に、社交界に出てくることはない、出て来させないつもりで領地に追いやり冷遇していた。
あとは老い先短い老人に嫁がせて田舎に籠らせ、若い体が蹂躙された後は介護をさせて、その後は使用人として雇ってもらえばいいと思っていたのだ。
だが、夫であるランクス伯爵が自分に黙ってマデリーンに嫁ぎ先を見つけて結婚させていた。
しかも伯爵家。次期伯爵の後妻として。
後妻ということで少し溜飲が下がったが、相手がまだ20代半ばと聞き、憎らしくなる。
つまりそれは、マデリーンはこれから社交界に出てくるということを意味していたのだ。
そのため、義娘がずっと領地にいた理由を、一緒に暮らさなかった言い訳をしなければならなかった。
マデリーンを悪者にして、自分が同情してもらえるように。
なので、マデリーンがなぜ領地に行くことになったのか、領地でどういう暮らしをしていたかを悲痛な顔をして友人たちに語ったのだ。
信じなくても味方になってくれればよかった。
噂になれば、マデリーンの夫もクイン伯爵夫妻も、騙されたと離婚するのではないかと思ったから。
だけど、マデリーンに会った人たちは『過去は知らないけれど感じの良い女性だった』とマデリーンに好感を持っていたから、躍起になってマデリーンの嘘の本性を広めようとしていた。
それが、逆効果?
夫に離婚されるのは自分?
大切な娘、キイナの縁談の邪魔になっている?
アークライトの母、クイン伯爵夫人はランクス伯爵夫人の様子が変わったのを見て言った。
「自分の生んだ娘を跡継ぎにしたいと思う気持ちを否定することはしないけれど、マデリーンから父親まで取り上げる必要はなかったと思うわ。まぁ、それも今更ね。
あなたの思惑とは少し違ったけれど、マデリーンはランクス伯爵家から出て結婚したわ。
あなたの娘が跡継ぎになれるの。それなのに、いつまでマデリーンを貶めるつもり?
お嬢さんが社交界に出てきた時に、マデリーンの妹であることをよく思われなくてもいいのかしら?」
「……そんな、つもりは……」
「あなたにとってマデリーンは他人でもお嬢さんとは血が繋がっているわ。
お嬢さんのためにも、もうマデリーンを悪く言わないでほしいの。私はマデリーンが素敵な女性だと思っているわ。息子も離婚する気なんてない。だからランクス伯爵家に戻ることはないの。
別に親戚付き合いしましょうって言うわけじゃないわ。ただ、こうした夜会で挨拶を交わしたり、たまには伯爵とマデリーンの父娘の会話くらい許してあげてほしいの。どうかしら?」
「ええ。……そうですね。キイナのためにも。」
アークライトは母がランクス伯爵夫人を言い包めたことに尊敬の念を抱いた。
母の方がランクス伯爵夫人よりも10歳ほど年上ということもあり、周りがよく見えていることもある。
同じように前妻の子を冷遇して離婚された例もあるのだろう。
離婚の可能性があるということと、マデリーンを悪く言うと娘にも影響が出るということ。
他人では指摘し難いことを母が言ったことで、ランクス伯爵夫人は自分の置かれている立場を改めて理解することになっただろう。
もう、マデリーンの悪口を広めることはないはずだ。
1,327
お気に入りに追加
1,318
あなたにおすすめの小説
ある辺境伯の後悔
だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。
父親似だが目元が妻によく似た長女と
目元は自分譲りだが母親似の長男。
愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。
愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。
不妊を理由に離縁されて、うっかり妊娠して幸せになる話
七辻ゆゆ
恋愛
「妊娠できない」ではなく「妊娠しづらい」と診断されたのですが、王太子である夫にとってその違いは意味がなかったようです。
離縁されてのんびりしたり、お菓子づくりに協力したりしていたのですが、年下の彼とどうしてこんなことに!?
結婚相手の幼馴染に散々馬鹿にされたので離婚してもいいですか?
ヘロディア
恋愛
とある王国の王子様と結婚した主人公。
そこには、王子様の幼馴染を名乗る女性がいた。
彼女に追い詰められていく主人公。
果たしてその生活に耐えられるのだろうか。
【完結】私、四女なんですけど…?〜四女ってもう少しお気楽だと思ったのに〜
まりぃべる
恋愛
ルジェナ=カフリークは、上に三人の姉と、弟がいる十六歳の女の子。
ルジェナが小さな頃は、三人の姉に囲まれて好きな事を好きな時に好きなだけ学んでいた。
父ヘルベルト伯爵も母アレンカ伯爵夫人も、そんな好奇心旺盛なルジェナに甘く好きな事を好きなようにさせ、良く言えば自主性を尊重させていた。
それが、成長し、上の姉達が思わぬ結婚などで家から出て行くと、ルジェナはだんだんとこの家の行く末が心配となってくる。
両親は、貴族ではあるが貴族らしくなく領地で育てているブドウの事しか考えていないように見える為、ルジェナはこのカフリーク家の未来をどうにかしなければ、と思い立ち年頃の男女の交流会に出席する事を決める。
そして、そこで皆のルジェナを想う気持ちも相まって、無事に幸せを見つける。
そんなお話。
☆まりぃべるの世界観です。現実とは似ていても違う世界です。
☆現実世界と似たような名前、土地などありますが現実世界とは関係ありません。
☆現実世界でも使うような単語や言葉を使っていますが、現実世界とは違う場合もあります。
楽しんでいただけると幸いです。
幼馴染みとの間に子どもをつくった夫に、離縁を言い渡されました。
ふまさ
恋愛
「シンディーのことは、恋愛対象としては見てないよ。それだけは信じてくれ」
夫のランドルは、そう言って笑った。けれどある日、ランドルの幼馴染みであるシンディーが、ランドルの子を妊娠したと知ってしまうセシリア。それを問うと、ランドルは急に激怒した。そして、離縁を言い渡されると同時に、屋敷を追い出されてしまう。
──数年後。
ランドルの一言にぷつんとキレてしまったセシリアは、殺意を宿した双眸で、ランドルにこう言いはなった。
「あなたの息の根は、わたしが止めます」
夫から国外追放を言い渡されました
杉本凪咲
恋愛
夫は冷淡に私を国外追放に処した。
どうやら、私が使用人をいじめたことが原因らしい。
抵抗虚しく兵士によって連れていかれてしまう私。
そんな私に、被害者である使用人は笑いかけていた……
そんなにその方が気になるなら、どうぞずっと一緒にいて下さい。私は二度とあなたとは関わりませんので……。
しげむろ ゆうき
恋愛
男爵令嬢と仲良くする婚約者に、何度注意しても聞いてくれない
そして、ある日、婚約者のある言葉を聞き、私はつい言ってしまうのだった
全五話
※ホラー無し
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる