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しおりを挟む後日、フォレスターから届いた手紙には、ランクス伯爵が長女の後妻入りを希望していると書かれてあった。
「父上、ランクス伯爵が明日、長女と僕の縁組について話をしたいと訪問するようです。」
「ランクス伯爵の長女?……確か、伯爵の今の妻は後妻だったな。前妻の娘ということか。」
「離婚されているのですか?」
「いや、死別だ。長女はおそらく初婚だろう。後妻に気遣っていい縁組がなかったのかもしれない。」
「ああ、確かに伯爵令嬢で婚約者がいなかったのであればそうかもしれませんね。」
この時点で、後妻と長女がうまくいっていなかったのだろうと想像できる。
我が子よりも前妻の子がいい嫁ぎ先に恵まれることが許せない後妻というのは意外といるものらしい。
だからこそ、アークライトも後妻に子供を産ませたくない理由の一つなのだから。
「ランクス伯爵は少し気弱だが、領地経営も堅実で特に問題もない。縁組としては悪くないな。」
「そうですか。伯爵お一人で来られるようですので顔合わせの前に言いたいことでもありそうですね。」
「そうだな。ま、明日だな。」
翌日、約束の時間にランクス伯爵はやってきた。
「急な訪問をお願いして申し訳ありません。」
「いえ、かまいませんよ。アークライトの後妻にご令嬢が手を挙げたとか。」
「ええ。……いえ、私の独断です。あの子は、マデリーンはまだ知りません。」
纏まるかどうかわからないから、まだ話していないということか。
「実は、マデリーンは5歳から領地で暮らしています。」
「伯爵たちとは別で、ということでしょうか?」
「はい。マデリーンが3歳の時に前の妻が亡くなり、4歳の時に今の妻と再婚しました。5歳の時にマデリーンに妹が産まれました。その直後から、妻がマデリーンを嫌い始めました。」
マデリーンが妹の頬に触れただけで抓ったと妻が大騒ぎしてマデリーンを叩き、妹の髪に触れただけで引っ張ったと大騒ぎしてマデリーンを叩いたのだという。
妹に会わないようにマデリーンに言い聞かせていたが、妻がマデリーンの姿を見ただけで妹をイジメにやってきたのだと折檻するようになったらしい。
頬を腫らし、手足にも傷を負ったマデリーンが可哀想で5歳で一人領地へと行くことになった。
伯爵は毎年、マデリーンに会いに行っているが、妻と下の娘キイナは一緒には行かない。
マデリーンも王都の屋敷に来ることがないまま19歳になった。
「妻が……あの子を後妻に、と。だが、自分の遠縁の年寄りばかり勧めるのです。しかも、3回死別したという男を勧めてくるのです。私の娘をそんな男に嫁がせるわけにはいかないと言っても、私がマデリーンを気に掛けることが気にくわないらしく。
このままでは無理やり結婚させられそうだと思っていたところ、フォレスター殿にアークライト殿の後妻の条件のことを聞き、手を挙げさせていただきました。」
ん?ということは、マデリーン本人はこちらの条件すらも知らない?
「ランクス伯爵、マデリーン嬢本人は私が出した条件を知らないのですよね?彼女が拒否することは?」
「大丈夫です。あの子は明るく優しい子で、いつも私を気遣って困らせるようなことはしません。
ですのでどうか、マデリーンを受け入れてくれないでしょうか。」
ランクス伯爵が恥も外聞も気にすることなく語ったことで、娘に対する愛情を感じた。
ここまで聞いてしまえば、アークライトが断った後のマデリーンが気になってしまう。
父も同じことを思ったようで、マデリーンと顔合わせをすることになった。
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