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しおりを挟むアークライトはふと思いついただけでも後妻に望む条件はいくつもあった。
「まず、不貞をしない。当然だよな。托卵されるなんて冗談じゃない。」
「まぁ、そうだよな?離婚の原因だからな。他は?」
「結婚式はしない。婚姻届に記入して入籍するだけだ。」
「その方が早く結婚できるからいいな。爵位は?」
「爵位は、そうだな。伯爵家か子爵家が望ましいかな。格上は面倒だし、格下も援助を期待される貴族家は困る。」
「だよな。わざわざ援助してまで結婚するメリットはもうないな。」
元妻の不貞による離婚で共同経営していた事業は全て慰謝料としていただいた。
「あと、子供を望まない。うちはもう2人いるから。」
子供が何人もいればそれだけ費用もかかるし、結婚相手にも困る。
下位貴族であれば結婚させずに働かせることはよくあるが、伯爵家で結婚していなければワケアリのように見られてしまう場合もあるからだ。
子供全員が良縁に恵まれなければ、他の子供に迷惑がかかる場合もある。
だから、伯爵家より上は子供は2,3人が多い。
「だよな。産めば前妻の子よりも自分の子の方が可愛いだろうし。」
「ああ。あと、子供たちの母親になってくれたら有難いな。」
「お前の妻の役割だけでなく、子供たちの母親にもなってほしいんだな。なるほど。他には?」
「後は、そうだな。浪費は困るな。割り当てられた中だけにしてほしい。あとは夫婦参加の社交にだけ付き合ってくれれば問題ないんじゃないか?」
今思いついたのはそれくらいだが、どれも無茶な条件ではないと思う。
初婚の女性なら不満はあるかもしれないが、再婚の女性なら納得するはずだ。
恋や愛も期待されると困るけど、それを条件に入れるのはどうかと思うし。
「ひとまず、こんなもんか?あ、あと年齢は?」
「30歳を過ぎていなければかまわないよ。」
フォレスターが不釣り合いな年齢の女性を勧めるとは思わないが、相手があまり年上すぎると気を遣ってしまいそうになるから避けたい。
「わかった。できるだけ早く返事をもらうようにするから、お前は両親や子供たちにも話をしておいてくれ。受け入れる準備は早めにしておいても損はない。」
「ああ。じゃあ、頼んだ。」
なんとなく、フォレスターの中ではもう誰にするか決まっているような気がした。
彼が選ぶ相手なら、悪い相手ではないだろう。
家に戻って両親にフォレスターから聞いた話をした。
「公爵令嬢か。面倒だな。彼の情報は信じるが、間違っていたとしても確かに再婚は早めがいいだろう。」
「そうね。知り合いのお嬢さんにいい人がいないか声をかけてみる?それとも縁談の申し込みの中から会ってみてはどうかしら。」
「いえ、フォレスターが何人か心当たりがあるようです。母上が声をかけてしまうと、それこそ公爵の耳に届いて待ったがかかると動けなくなります。」
「そうだな。公爵は今、この国の貴族に娘の失態を悟られずに帰国させることで頭がいっぱいに違いない。悟られないように動くべきだから、彼に任せよう。」
アークライトは後妻に望む条件に挙げた内容を両親にも告げた。
「まあ。結婚式はしないの?相手が初婚のご令嬢でも?」
「しないという条件を飲める令嬢なので、初婚でもそうですね。」
「いや、それでいい。のんびり婚約して招待状を出して、としている間に公爵令嬢が帰ってくる。」
父はよほど公爵令嬢が嫌らしい。それはアークライトもなのでホッとした。
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