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ソフィアナと婚約したまま、ラーガ王国のフロレンティア王女を口説いて求婚していたことは事実であったとわかった。
ディオンが居心地の悪いような態度をしていたので、父親である国王陛下が言った。


「ディオン、過去のこととはいえ謝罪すべきだ。違うか?」


ディオンは、いかにも本意ではないと言いたげな顔をした後、演技がかったように言った。


「マロン侯爵及び夫人、そして……ソフィアナ夫人。大変申し訳ないことを致しました。
婚約者を亡くされた王女を慰めようと軽い気持ちで求婚をしたのです。ですが、王女に求婚を受けてもらえるとは思っておらず、私はソフィアナ夫人と結婚するつもりだったのです。しかし、王女から受諾されてしまっては後には引けず、ソフィアナ夫人との婚約を解消せざるを得なくなりました。私の軽率な言動が引き起こしたことです。申し訳ありませんでした。」


……何だか言い訳がましい謝罪だけど、これを受けてさっさと帰ろう。父もそう思ったようだった。


「謝罪を受けます。もしこの国に戻られるのでしたら……」

「もし、じゃない。あの国にはもう戻らない。戻ったら殺される。」


は……?殺される?

一体、ディオンは何をしたの?




「ディオン、どういうことだ。何をしたんだ?」


国王陛下も、殺されるとはただ事ではないと理由を聞いた。


「私は何もしていない。秘密を知ってしまったんだ!」

「秘密?それはラーガ王家にまつわることか?だったら離縁など無理だろうが。」

「違う。知ったのは、フロレンティア王女の兄は彼女に殺されたということだ。」


妹が兄を?理由は何だろう。


ディオンの話によると、フロレンティア王女の4歳年上の兄は王太子だった。フロレンティア王女は公爵令息と婚約を結び、18歳で嫁ぐはずだった。

だが、自分が女王になりたかったフロレンティア王女は邪魔な兄を事故に見せかけて殺したというのだ。
それがなぜフロレンティア王女の仕業と思われているのか。

それは王女は兄の死を悲しむことはなかったから。女王になれると喜んだから。

証拠が見つからないため、そして跡継ぎがいなくなるため、王女は罪を問われていない。


「お前はそれを誰から聞いたんだ?」

「それは、城の侍女から。」

「よく侍女がそんな話を口にしたな。処罰ものだぞ?だが、それをお前が知ったところで殺されるほどのことではないぞ?侍女でも知っている噂話というだけだ。」

「だけど、もう一つ聞いたんだ。婚約者を殺したのも王女だって。」

「証拠があるのか?」

「ないけど、王女の仕業だって言われてる。それを知ってから、馬車の車軸が壊れたり、毒を盛られたのか腹を下したり、部屋に蜂が入っていたり、興奮した馬に蹴られそうになったり、何度も死にかけた。」


………………微妙。いたずら?嫌がらせ?

呆れた王太子殿下がディオンに言った。


「お前、どうせその侍女と浮気して聞いたんじゃないのか?王女について弱みでも握ろうかと思って侍女に探りを入れたらそんな内容が返ってきた。そんなとこだろう?」


王太子である兄にそう言われたディオンは目を見開いて驚いていた。当たってるの?
  
 
「それは、侍女が言い寄ってきて……というか、その侍女が消えたんだ。王女に殺されたのかもしれないと思った。だから一時帰国させてほしいって逃げてきたんだ。」


ディオン以外の者は心の中で思っただろう。

『それは王女の夫との浮気がバレて解雇されただけだろう』と。
 

何もしていないことはない。王女の夫という立場でありながら、しっかり浮気をしているではないか。






 
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