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ディオンがソフィアナを抱いたと言い張るには、短時間での行為を卑劣あるいは強姦、そして早漏だと勘違いされることを認めなければならない。

さすがにそれを認めるには、ソフィアナの子供がディオンの子供ではないとわかった今、得策ではなかった。


「そ、そうだったな。アナは倒れたからベッドに寝かせたのだった。子供がいると聞いてなぜか勘違いをしたようだ。それにしても結婚が早かったんだな。驚いたよ。」


話を変えようとするディオンには笑えたが、こちらも有難かった。


「ええ。ルキウス様とは気が合って。元々、殿下と婚約する少し前に父が私の婚約者候補として侯爵家で雇ったそうなのです。ですが殿下と婚約が決まり、ルキウス様はそのまま侯爵家で働かれることを選んで父の秘書をしていました。
改めて婚約者にどうかと父から紹介されまして。素敵な人なので、婚約の間に誰かに取られてまた解消されることにならないように、勢いですぐに結婚することにしました。今はとても幸せです。」


ノロケるように幸せだとまで言っておいた。離縁をするディオンに向かって。

その時、国王陛下がディオンに言った。


「ディオン、どういうことだ?マロン侯爵の孫はお前の子供ではないし、ソフィアナ夫人もお前に未練はない。形だけの結婚だとお前が言うから二人の離縁もお前との結婚も認めてやろうと思って集まったが勘違いとは。
大方、フロレンティア王女が妊娠しないから自分が種無しなんじゃないかと悩んでおったのだろう?だからと言って他人の子供を自分の子供と血迷うほど追い込まれていたのか?」

「いや、それは……何というか、あの国に戻らなくていい理由が、必要で。」


何だかよくわからない言い訳だった。


「そもそも、お前が勝手にフロレンティア王女を口説いて結婚したにも関わらず、子供ができないから離縁したいとは問題だろう?もっとちゃんと話し合いを……」

「父上っ!そのことは……」


ハッとして国王陛下たちは私たちの方を見た。『やっぱりね』という感想だった。

気まずそうな陛下たちに、父が告げた。


「ディオン殿下がフロレンティア王女を口説きに国を訪れていたということは婚約解消後に耳にしていました。ソフィアナに対して不誠実な行動だと思いましたが、今の娘は幸せなので不問にします。
ですが陛下、誤魔化しても知っている人がいる限り噂されます。せめて、父親である私には事実を教えてくださるべきだったのではないかと思いますが。」

「……そうだな。話しておくべきだった。
言い訳にしかならないがディオンが勝手に動いて私たちにも事後報告だった。決してマロン侯爵家を婿入り先の確保として軽んじていたわけではないことは伝えておく。すまなかった。」


フロレンティア王女に求婚を断られた場合の婿入り先としてマロン侯爵家を確保したままにしておいたというのはディオンの魂胆であって王家は知らなかった。

それは事実なのだろう。

国王陛下は臣下を大事にしているし意見に耳を傾けることのできる方だ。傲慢な王ではない。

なんとか丸く婚約解消する方法として王女からの求婚にしたり国交を持ち出したりしたが、出国の記録は残るもの。ディオンがラーガ王国に通っていたのは調べれば簡単にわかることなのだ。 

謝罪は、国王としてというよりも、父親としての意味合いが強いものだと感じた。




 
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