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しおりを挟む男たちの話を一緒に聞いていたルキウスも顔色が悪かった。
時間も遅くなったので、そのまま帰ることにした。
「ソフィ、ごめん。もっと早くあの男たちから離れるべきだった。」
「いいの。自分のことを自分の知らないところで噂されてるって仕方のないことだけど、殿下のはひどいわね。」
「だが、自業自得だ。」
「そうね。すっかり騙されていたわ。」
前に、あの男性たちの会話をルキウスがどこから聞いていたのかがわからなかったので、ディオンの野心の話を伝えた。
「王太子殿下よりも自分が方が優秀、か。それはどうだろうな。勉強の成績がいいだけでは国政は上手く回らないだろう。それに、ディオン殿下は第三王子だから王太子教育は受けていない。フロレンティア王女の夫にはなれたが、意外と自分の思い通りにならなくてイライラしているかもな。」
「そうね。しかも私にはフロレンティア王女とそれほど会話もしたことがないと言ったのに、本当は自分を売り込むかのように王女を慰めに行っていただなんて。正直に話してくれた方がマシだったわ。ほんと、自分がバカみたい。」
「ソフィだけじゃない。侯爵夫妻も知らないだろう。殿下を信じていた。社交界でもそうだ。
殿下の女遊びもそうだ。高級娼婦は客のことは話せない。未亡人も性欲を発散させる遊び相手。仮面パーティーの乱交は令嬢がいてもお互いに身分は秘匿しなければならないし一夜限りの遊びが目的だ。
誰も殿下の相手をしたことがあると名乗れる状況にないから品行方正だと思われているんだ。
鬼畜なショーとかも、変装して誰かわからないようにして行っていたんだろうな。
取り締まるどころか自分が楽しむ。そんな殿下が国のために何ができるっていうんだ。」
本当にそうだ。
ディオンに侯爵領を任せていれば、領地に違法な何かができていてもおかしくはなかったかもしれない。
自分の欲望に忠実な彼は、盲目になるほど私に自分を愛させて綺麗なものだけ見せ、裏では鬼畜非道なことを楽しむ。女が私一人で我慢できる男ではなかったのだから。
証拠もないのに耳にした会話だけでディオンがそういう男だと断定するのはよくないとは思う。
だけど、もう私の中でのディオンはそういう男になってしまった。
昔、ディオンの近くにいた友人たちがコソコソと嘘を語り合う理由もない。
たとえ、それが嘘であったとしても、二度と私とディオンの線は交わることはない。
私が彼を拒絶することは、不自然ではない。
ディオンはこの一時帰国で私との再会を望むだろうと思っている。
彼は、自分が悪いことをしたと本当に思っていないから。
ディオンに再会することになれば、彼は私に何を言うだろうか。
彼は未だに私が彼のことが好きだと思って話しかけてくるだろう。
そして、いつまでも私だけを愛すると言ったことを信じないのかと訴えてきそう。
更に、結婚して子供もいる私を裏切ったのかと言い出しそう。
あるいは、過去のことを持ち出して脅すように関係を迫ってくるかもしれない。
私とディオンにあったことを知っているのは、両親と侍女のピア、そしてルキウスだけ。
全員が私の味方。
もし、ディオンに仄めかされても何の証拠もない。
だから脅しにもならない。
「ねぇ、ルキウス様。もし、一時帰国した殿下と会ってしまったら。そして、過去の関係を匂わせて迫ってきたり脅してくるようなことがあれば、私は白を切るわ。」
「白を切る?なかったことにするのか?」
「ええ。彼は、ただの元婚約者。国交の関係で婚約を解消することになっただけ。それだけよ。」
私が純潔を誰に捧げたかなんて証明できないこと。
私が認めなければ有耶無耶になるだけ。
そもそも、声高に言えることでもないのだ。
私が心から純潔を捧げたのはルキウス。そう思っていれば、それが私の中の事実。
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