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しおりを挟むディオンは泣いているソフィアナを抱きしめてくれても、フロレンティア王女との結婚をやめるとは言ってくれない。
「ごめん、ごめんな。でも私はいつまでもアナだけを愛している。それは自信を持って誓えるよ。
あぁ、アナ。こんなに愛しているのに………君を私のものにしたい。君の体に私を刻み付けて行きたい。そうすればアナも忘れないだろう?もしかすると、子供を授かるかもしれない。アナは私の子供を育ててくれる?」
「……ディオン様の子供を?私が、産むの?私が、育てるの?」
涙が止まらなかったソフィアナに届いたディオンの言葉は、ソフィアナの心に響いた。
『愛するディオンの子供を産みたい』
ひどく魅力的な提案に思えた。
ディオンがいなくても、子供がいればいつまでも繋がっている。
この後の人生を、ディオンを思いながら過ごすことができる。
いつもとは違う荒々しいキスでソフィアナの思考はそこで止まってしまった。
その後、抱き上げられても抵抗しないままベッドへと移った。
ソフィアナは、まだ陽の高い明るい時間にディオンに純潔を捧げた。
思った以上に痛くて、逃げる体を押さえつけられながらも、ディオンを受け入れた。
これが二人にとって最善の道なのだ、と。何も疑うことなく………
慌ただしい営みを終えた直後、ディオンが服を整えている最中に侍女のピアが部屋の扉を叩きながら言った。
「ソフィアナお嬢様、旦那様と奥様がお戻りでございます。」
両親が帰ってきたらしい。ソフィアナも服を着なければならなかった。
ディオンが服を着終えたので手伝ってもらおうとしたが、ディオンが言った。
「アナ、最後に素晴らしい思い出をありがとう。じゃあ元気で。」
「え……?ディオン様、少し待って。これでお別れなんて……」
「ごめん。侯爵夫妻にも父から婚約の解消を伝えらえたと思う。挨拶をして帰るよ。アナは私が帰ってからご両親に顔を見せた方がいい。だから、私とはここでお別れだ。私はすぐに国を出るからもう会うことはない。さよならだ。」
そう言ってディオンは部屋を出て行った。呆然とするソフィアナを残して。
入れ違いに入ってきた侍女のピアが裸のままベッドにいるソフィアナの姿を見て驚いた。
「お嬢様っ!何てことを……ご存知なのですよね?ディオン殿下との婚約はもう……」
「お父様から聞いたの?……ディオン様との結婚はできなくなったけど、子供ができたら繋がりは消えないわ。」
ソフィアナがどんなにディオンのことが好きだったかを知っているのでピアも喜んでくれると思っていた。
しかし、ピアはポロポロと泣き出した。
「どうしたの?ピア。」
「旦那様と奥様に、お嬢様が穢されたことを報告しなくては。」
「穢されたって……違うわ、ピア。言わないで!言ったら避妊薬を飲まされてしまうわ!
私はディオン様の子供を産んで、育てるの。そう約束したの。」
ピアは更に泣き出してしまい、両親に伝えないことを約束させるのにソフィアナは苦労したが、なんとか認めてもらった。
ソフィアナの妊娠がわかったのは、それから数か月後のことだった。
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