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しおりを挟む国王陛下即位10年の祝賀会の日になった。
セラフィーネもフィリーナもリシェルもリディアもアリシアも無事でこの日が迎えられた。
カシュー伯爵が大人しいのは不気味だ。
ひょっとすると、セラフィーネだと確証を得て諦めたか。
それならそれでもよい。
誰も傷つくことがないのが一番だ。
今日の舞台に上がらなくても、一年半後が伯爵を下りる舞台になるのだから。
問題なく式典が済み、夜会が始まった。
セラフィーネは国王陛下が登場している間しかいるつもりがない。
つまり、カシュー伯爵もその間しか機会がないということだ。
国王陛下が入場する時間となり、セラフィーネと共に夜会場に入った。
国王陛下の入場と挨拶が終わり、国王とセラフィーネが一言会話を交わして下がる時、カシュー伯爵が向かって来るのが見えた。
ショコルテ公爵も気づいたようだ。こちらに来る。
セラフィーネは貴族をほとんど知らないので注目されようと気にも留めない。
「セラフィーネ、あれがカシュー伯爵だ。言いがかりをつけられるだろうが相手にするな。
ショコルテ公爵が対応する。毅然とした態度でいればいい。」
万が一に備えてさりげなく目立たない位置まで移動しつつ、騎士にも合図を送る。
そしていよいよご対面となった。
「アラモンド公爵令息殿、何度もお手紙で断られましたが今日こそは奥様にお目にかかりたい。
奥様は私の姪なのです。よろしいですかな?」
「あなたは頭がおかしくなったのか?妻は王弟公爵の娘です。あなたの姪ではありません。」
そこにショコルテ公爵がやってきて言った。
「カシュー伯爵、お前はどんなに不敬なことを述べているのかわかっているのか?
セラフィーネは私の娘だ。何の根拠でお前の姪だと言う?」
「公爵様、私は知っているのですよ?あなたの娘は既に亡くなっていることを…」
ショコルテ公爵の顔色が変わった。
この一角の空気がおかしいと周りも気づいたのだろう。
注目する人が増えた。
「カシュー伯爵を不敬罪及び名誉毀損罪で捕まえろ!」
合図を待っていた騎士たちがカシュー伯爵を拘束する。
「っな!事実ではありませんか。だから、そこのセラフィーネはあなたの娘ではない。
私の姪のフィルリナだ!アリシアも返せ!」
「連れて行けっ!!」
ショコルテ公爵の尋常じゃない剣幕に周りは唖然としていた。
カシュー伯爵が連れ出され、ショコルテ公爵はその後を追って出た。
俺は両親に目配せをして、セラフィーネを連れて会場を出た。
両親がうまく場を取り成すだろう。
しばらく控室にいると、両親が戻ってきた。
「大丈夫だ。大部分の貴族が、カシュー伯爵がおかしくなったと思ったようだ。
もう表に顔を見せることはできないだろう。誰が見ても不敬だったからね。」
「もう今日は私たちにできることはないわ。帰りましょう。」
「セラフィーネ、帰ろう。どうした?」
「…ええ。あの男に私が死んだって誰が言ったのかしら?と思って。信じるなんてね。」
「確かに愚かだな。おそらく、それを信じたから音沙汰がなくなったんだな。
嘘を吹き込まれたか、吹き込んだ奴もそう信じていたか、だな。
今後の取り調べでわかるだろう。」
フィリーナに叔父の脅威がなくなったことを早く報告してやりたい。
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