自国から去りたかったので、怪しい求婚だけど受けました。

しゃーりん

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公爵邸に戻り、サミールは父と話をした。

2日後、メレディスの子爵家と結婚の話し合いをする。
その時に、メレディスは僕が子爵になるということを知る。

どういう反応を見せるか。

アテが外れて結婚しないというのであればお金で解決することにして結婚はしない。
それでも結婚すると言うのであれば、僕は自分の子種を殺したい。そう父に言った。

父はメレディスの企みを阻止したい僕の気持ちを察したのか、しばらく考えていた。
だが、弟が結婚して子供ができるまでは許可できないと言った。
万が一にも血筋が途絶えることを懸念しているのだろう。

父は、メレディスの方に避妊薬と妊娠しにくくなる薬を飲ませるように手配すると言った。
サミール以外の子を妊娠する可能性があるための対策だろう。
毎日食事や飲み物に混ぜるようにするのだろう。

それに、また僕に薬を盛らないとも限らないため避妊対策は必要だ。

メレディスが無害だと確信できるまでは特に。


正直、僕はメレディスが子爵領で大人しく過ごしたとしても自分の子供はいらないと思った。
疑いながら暮らすのは疲れる。
2人だけで老いていけばいいのだと思った。

そして父に、メレディスが結婚を選べば公爵家と関係を絶つことも伝えた。

父は僕の覚悟を認めてくれた。



そして話し合いの日、僕が子爵になると知ったメレディス親子は激怒した。
だが、侯爵令嬢との婚約解消の責任の一端がメレディスにあると告げれば口を噤んだ。

そして、僕とメレディスが付き合っていたわけではないことと、メレディスから肉体関係を迫ったことを子爵に告げると、子爵は驚いてメレディスに確認していた。

メレディスは開き直って、そうだと認めた。

今更、後戻りはできないから、とメレディスは結婚を受け入れた。




そして、3か月後に結婚。

王都に家を用意しなかったため、メレディスは王都の公爵家で暮らすと思っていたらしい。
勘違いしているのは知っていた。部屋を見せてほしいと言っていたから。


「え?このまま領地に?初夜は?せめて王都の綺麗で豪華な部屋がいいわ。」

「いや、次の街で泊まる。普通の宿だ。僕たちは子爵だ。
 それと、僕は君を許していない。だから、部屋も別だ。」

サミールは初夜に、メレディスと閨を共にしないと告げた。
騙すように関係を迫ったことが許せなかったからだ。
メレディスはどうにかしてサミールに抱いてもらおうとしたが、サミールは徹底して身辺に気をつけた。

領地に着いてからも、公爵家のパーティーはいつあるのかだとか、夜会用のドレスを作りたいのに子爵領の店では流行の物を作れないだとか、散々文句を言いだしたのでハッキリ伝えた。


「実家とは関わりを持つことはない。パーティーにも出席しないし、援助もない。
 もちろん、王都に家を持つこともないので、当分の間は社交もせずに領地で過ごす。」

「嘘でしょ?なんで?!子爵でも公爵家からのお金があると思って結婚したのに。」

「騙すように迫ったお前を公爵家に出入りさせるはずないだろう?
 純愛だの何だのって結婚せざるを得ない状況に自分を追い込んだお前が悪い。」

「こんな田舎でずっと暮らすなんて……耐えられないわ。」


逃げたいなら逃げればいい。サミールはそう思っていた。

しかし、ひと月後、メレディスが妊娠しているのではないかと侍女が伝えてきた。
もちろん、サミールの子供ではない。閨を共にしていないのだから。
結婚前に既に孕んでいたのだろう。
結婚後の食事に避妊薬を混ぜても意味がなかった。

メレディスは医師の診断の前に流産を狙ったが、それを阻止した。
医師により、結婚前の妊娠と断定された。 

サミールは、メレディスの父親に報告した。
結婚前の明らかな浮気を理由に、娘を引き取りに来るように伝えた。

こうしてメレディスの愚かな妊娠により、結婚してわずかひと月半で離婚することになった。
 
思いの外、あっけなくメレディスは公爵家との関わりを無くすことになり、しかも、純愛だと言われた結婚の結末が女性側の浮気であったため、メレディスは爵位狙いの尻軽女だったと噂されるようになった。

アミディアに言われた通り、公爵家を守れてサミールは満足だった。

 
その後、サミールは再婚することもなく子爵領のために努力し、晩年は弟の三男を養子にして跡を継がせた。
 



 

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