自国から去りたかったので、怪しい求婚だけど受けました。

しゃーりん

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もうどうしようもないことだとわかっていても、サミールはアミディアに謝罪の手紙を書いた。

返事が来ないので何度も書いた。読んでもらっているのかもわからない。
だけど、アミディアの髪色では次の婚約者もなかなか見つからないはず。
アミディアが許してくれれば、子爵になるサミールでも受け入れてくれるかもしれない。

元々、メレディスとは恋人でもなかったんだ。
僕が子爵になると知ってもメレディスの父親は責任を問うだろうか。

純愛だなんて言われても、そんなものどこにもない。
周りの勘違いなんだ。
アミディアが許してくれれば、周りも誤解だったとわかるはず。

僕とアミディアが今でも思い合っているとわかれば、メレディスは身を引くはずだ。
元々、アミディアの気を引くのに協力すると言ってそばにいるようになったんだ。
僕とアミディアを応援してくれていたはずなんだ。

僕がメレディスを好きではないように、メレディスが僕を好きだと感じたことはない。
だから、服を脱いで思い出が欲しいと迫ってきたあの時も意味がわからなかった。
反応してしまったことでどうしようもなくなって抱いてしまったが、後悔しかない。

お金で解決するのであればそれで済ませたい。
僕が結婚したいのはアミディアだけなのだから。


それなのに、アミディアが隣国の公爵令息と婚約してもうすぐ旅立つという話を聞いた。


婚約?……隣国?……嘘だろう? 

婚約解消でこの国に居づらくなったから?
僕のせい?
婚約にアミディアは納得しているのか?そんなわけないよな。



事前連絡をすることなく、アミディアを訪れた。

歓迎されていないことはわかる。
もう何年もサミールに笑顔を見せてくれない。
そんな状況にしたのは自分なのに、悲しかった。

アミディアは、この国にもサミールにも未練はないと言った。

そっか。そうなのか。もうとっくに見限られていたんだ。
アミディアが許してくれたら、という段階ではなかったんだ。

隣国にはアミディアの親戚もいる。
髪色も歓迎される。
この国を捨てるのも当然のことなんだ。



そんな僕に、アミディアは衝撃的なことを言った。

メレディスを監視するのが僕の役割だ、と。
 
メレディスの狙いは公爵家。
公爵家と弟を守るために、関わりを絶つべきだという。


そうか。僕は本当にまんまと嵌められていたんだ。


公爵家に嫁いで贅沢がしたかったのか?
子爵令嬢から公爵夫人になって地位や名誉を得るのが目的だったのか?
侯爵令嬢よりも自分が魅力的だと、公爵令息に選ばれたのだとそれが嘘でも認められたいのか?
 
弟、あるいは、弟の子供を狙うかもしれない。
僕を公爵に、メレディスの子供を公爵にするために?

僕に薬を盛ったメレディスならあり得そうだ。

彼女は僕が好きなわけではない。公爵令息である僕を狙ったんだ。


アミディアとの関係は、もう元には戻らない。

彼女はサミールの婚約者だったから、この国にいただけだった。
婚約者でなくなったから、喜んでこの国を出ていくのだ。



アミディアは、僕がこれからするべき助言をくれた。

僕は、これからは実家である公爵家に迷惑をかけないように暮らす必要があるのだ。

それが、アミディアとの最後の約束だと思おう。




 




 
 
 


 
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