19 / 21
19.
しおりを挟むもうどうしようもないことだとわかっていても、サミールはアミディアに謝罪の手紙を書いた。
返事が来ないので何度も書いた。読んでもらっているのかもわからない。
だけど、アミディアの髪色では次の婚約者もなかなか見つからないはず。
アミディアが許してくれれば、子爵になるサミールでも受け入れてくれるかもしれない。
元々、メレディスとは恋人でもなかったんだ。
僕が子爵になると知ってもメレディスの父親は責任を問うだろうか。
純愛だなんて言われても、そんなものどこにもない。
周りの勘違いなんだ。
アミディアが許してくれれば、周りも誤解だったとわかるはず。
僕とアミディアが今でも思い合っているとわかれば、メレディスは身を引くはずだ。
元々、アミディアの気を引くのに協力すると言ってそばにいるようになったんだ。
僕とアミディアを応援してくれていたはずなんだ。
僕がメレディスを好きではないように、メレディスが僕を好きだと感じたことはない。
だから、服を脱いで思い出が欲しいと迫ってきたあの時も意味がわからなかった。
反応してしまったことでどうしようもなくなって抱いてしまったが、後悔しかない。
お金で解決するのであればそれで済ませたい。
僕が結婚したいのはアミディアだけなのだから。
それなのに、アミディアが隣国の公爵令息と婚約してもうすぐ旅立つという話を聞いた。
婚約?……隣国?……嘘だろう?
婚約解消でこの国に居づらくなったから?
僕のせい?
婚約にアミディアは納得しているのか?そんなわけないよな。
事前連絡をすることなく、アミディアを訪れた。
歓迎されていないことはわかる。
もう何年もサミールに笑顔を見せてくれない。
そんな状況にしたのは自分なのに、悲しかった。
アミディアは、この国にもサミールにも未練はないと言った。
そっか。そうなのか。もうとっくに見限られていたんだ。
アミディアが許してくれたら、という段階ではなかったんだ。
隣国にはアミディアの親戚もいる。
髪色も歓迎される。
この国を捨てるのも当然のことなんだ。
そんな僕に、アミディアは衝撃的なことを言った。
メレディスを監視するのが僕の役割だ、と。
メレディスの狙いは公爵家。
公爵家と弟を守るために、関わりを絶つべきだという。
そうか。僕は本当にまんまと嵌められていたんだ。
公爵家に嫁いで贅沢がしたかったのか?
子爵令嬢から公爵夫人になって地位や名誉を得るのが目的だったのか?
侯爵令嬢よりも自分が魅力的だと、公爵令息に選ばれたのだとそれが嘘でも認められたいのか?
弟、あるいは、弟の子供を狙うかもしれない。
僕を公爵に、メレディスの子供を公爵にするために?
僕に薬を盛ったメレディスならあり得そうだ。
彼女は僕が好きなわけではない。公爵令息である僕を狙ったんだ。
アミディアとの関係は、もう元には戻らない。
彼女はサミールの婚約者だったから、この国にいただけだった。
婚約者でなくなったから、喜んでこの国を出ていくのだ。
アミディアは、僕がこれからするべき助言をくれた。
僕は、これからは実家である公爵家に迷惑をかけないように暮らす必要があるのだ。
それが、アミディアとの最後の約束だと思おう。
193
お気に入りに追加
2,019
あなたにおすすめの小説

ダンスパーティーで婚約者から断罪された挙句に婚約破棄された私に、奇跡が起きた。
ねお
恋愛
ブランス侯爵家で開催されたダンスパーティー。
そこで、クリスティーナ・ヤーロイ伯爵令嬢は、婚約者であるグスタフ・ブランス侯爵令息によって、貴族子女の出揃っている前で、身に覚えのない罪を、公開で断罪されてしまう。
「そんなこと、私はしておりません!」
そう口にしようとするも、まったく相手にされないどころか、悪の化身のごとく非難を浴びて、婚約破棄まで言い渡されてしまう。
そして、グスタフの横には小さく可憐な令嬢が歩いてきて・・・。グスタフは、その令嬢との結婚を高らかに宣言する。
そんな、クリスティーナにとって絶望しかない状況の中、一人の貴公子が、その舞台に歩み出てくるのであった。
双子の妹を選んだ婚約者様、貴方に選ばれなかった事に感謝の言葉を送ります
すもも
恋愛
学園の卒業パーティ
人々の中心にいる婚約者ユーリは私を見つけて微笑んだ。
傍らに、私とよく似た顔、背丈、スタイルをした双子の妹エリスを抱き寄せながら。
「セレナ、お前の婚約者と言う立場は今、この瞬間、終わりを迎える」
私セレナが、ユーリの婚約者として過ごした7年間が否定された瞬間だった。

神託の聖女様~偽義妹を置き去りにすることにしました
青の雀
恋愛
半年前に両親を亡くした公爵令嬢のバレンシアは、相続権を王位から認められ、晴れて公爵位を叙勲されることになった。
それから半年後、突如現れた義妹と称する女に王太子殿下との婚約まで奪われることになったため、怒りに任せて家出をするはずが、公爵家の使用人もろとも家を出ることに……。

愚者(バカ)は不要ですから、お好きになさって?
海野真珠
恋愛
「ついにアレは捨てられたか」嘲笑を隠さない言葉は、一体誰が発したのか。
「救いようがないな」救う気もないが、と漏れた本音。
「早く消えればよろしいのですわ」コレでやっと解放されるのですもの。
「女神の承認が下りたか」白銀に輝く光が降り注ぐ。

姉と妹の常識のなさは父親譲りのようですが、似てない私は養子先で運命の人と再会できました
珠宮さくら
恋愛
スヴェーア国の子爵家の次女として生まれたシーラ・ヘイデンスタムは、母親の姉と同じ髪色をしていたことで、母親に何かと昔のことや隣国のことを話して聞かせてくれていた。
そんな最愛の母親の死後、シーラは父親に疎まれ、姉と妹から散々な目に合わされることになり、婚約者にすら誤解されて婚約を破棄することになって、居場所がなくなったシーラを助けてくれたのは、伯母のエルヴィーラだった。
同じ髪色をしている伯母夫妻の養子となってからのシーラは、姉と妹以上に実の父親がどんなに非常識だったかを知ることになるとは思いもしなかった。

【完結】え、お嬢様が婚約破棄されたって本当ですか?
瑞紀
恋愛
「フェリシア・ボールドウィン。お前は王太子である俺の妃には相応しくない。よって婚約破棄する!」
婚約を公表する手はずの夜会で、突然婚約破棄された公爵令嬢、フェリシア。父公爵に勘当まで受け、絶体絶命の大ピンチ……のはずが、彼女はなぜか平然としている。
部屋まで押しかけてくる王太子(元婚約者)とその恋人。なぜか始まる和気あいあいとした会話。さらに、親子の縁を切ったはずの公爵夫妻まで現れて……。
フェリシアの執事(的存在)、デイヴィットの視点でお送りする、ラブコメディー。
ざまぁなしのハッピーエンド!
※8/6 16:10で完結しました。
※HOTランキング(女性向け)52位,お気に入り登録 220↑,24hポイント4万↑ ありがとうございます。
※お気に入り登録、感想も本当に嬉しいです。ありがとうございます。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる