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しおりを挟む2日後、伯父夫婦と母と一緒に公爵邸を訪れた。
緊張しながらも挨拶をすると、予想していなかったことを言われた。
いや、予想しておくべきだったのに、確認を怠っていたのはアミディアだった。
「まぁ!あんなに可愛らしかったお嬢さんがこんなに綺麗になったのね。
オルビスが逃がさないようにすぐに婚約したのも納得だわ。」
つまり、公爵夫人も昔のアミディアを知っていて、初めましてではなかった。
そうよね。11歳の男の子を単独で他家に遊びに行かせることは親戚でない限りしないわ。
あの場には公爵夫人もいて、私がオルビスに求婚したことも知っているということ。
恥ずかしい。
公爵夫妻がどこまで私たちの実情を知っているのかはわからないけど、王女の筋書きからひとまず逃げようと訪れた先に私がいて婚約することになったとはわかっているはず。
決して、私を一目見ようと国を出て隣国の卒業パーティーに向かったわけではないと知っている。
ということは、噂の一部は嘘だとご存知なのだけど、余程王女様が嫌なのか大歓迎だった。
半ば放心しながらも、親同士で結婚式の日取りは決められた。
元々、公爵夫妻と伯父夫婦は同世代で友人同士。
伯父の妹である母は、顔見知りなのは当然だし可愛がられるみんなの妹のような感じだったらしい。
「昔、子供の頃のアミディアちゃんに会う少し前に王女とオルビスの顔合わせがあったの。
王女の反応待ちで、まだ正式な婚約は結んでいなかったのだけれどね。
それがなければ、可愛いアミディアちゃんの求婚を喜んで受けられたのに。」
公爵夫人の言葉に、母が言った。
「夫はアミディアを遠くに嫁がせたくはなかったので、のらりくらりと躱したと思いますよ。
それからすぐに知り合いの息子に会わせたのです。
その男の子がアミディアを気に入ってくれたので婚約しましたが、結局ダメになってしまって。
でも、子供の頃に求婚した相手と結婚することになるなんて、本当に運命的ね。」
ダメだわ。7歳の私の求婚を大人たちの誰もが覚えているから恥ずかしい。
でも、サミールより前にオルビスに会っていたってことね。
花冠とうっすら求婚の記憶があるだけで、あとは何を話したかは全然思い出せない。
「あの後、オルビスはすごく落ち込んでたわね。王女じゃなくてアミディアが良かったのにって。
王女様は王女様で、オルビスを婚約者に選んでおいて優しくないから嫌だって後から言い出して。」
まさか、婚約直後からわざと嫌われるような行動を始めたのではないか。
そう思い至りオルビスを見ると、ニヤッと笑い返された。
つまり、最初の顔合わせでは王女様はオルビスを気に入る要素があった。
なので婚約者はオルビスに決まってしまった。
けれど、婚約してからのオルビスは王女様の思ったような男の子ではなかった。
オルビスは、王女様から嫌われたくて彼女の望む言動を取らないようにしたのではないか。
国王様的には娘である王女をオルビスに任せたいと思っていた。
けれど、2人は仲が悪い。
オルビスが王女様に他の男性を探せというくらいなのだ。
国王様もご存知だったのかもしれない。
婚約者でありながら、『仮の』と聞いたことがあったのはランス従兄様が言ったから。
オルビスと友人だから、婚約を解消するつもりだと聞いていたのだと思う。
王女様が他国の令息と恋人になったのは、まさかオルビスが仕込んだことだなんて言わないよね?
それはないか。
その令息のせいで、王女様が離婚だのオルビスと再婚だの面倒なことになって、私が今ここにいるという状況になってしまったのだから。
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