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しおりを挟むアミディアはオルビスの唐突な求婚の理由に納得はしたが、疑問もあった。
「王女様ってどんな方なのですか?」
「気分屋でコロコロ言うことが変わるし、自分の言うことは聞いてもらって当たり前だと思っている。」
「……オルビス様と王女様はお互いに恋愛感情を持たなかったと言っていましたよね?」
「ああ。私が我が儘王女様の言うことに従うと思うか?
王女に傅かない男なんて、向こうにしてみれば天敵のようなものだ。
国王は私が躾けることを期待したみたいだが、そんなのはお断りだ。
だから、他に男を探すように王女には伝えていたし、彼女もそのつもりでいた。」
「それなのに王女様はあなたと再婚しようと?」
「妻にならなくても、公爵家の嫁としての立場で自由に暮らそうと思ったんじゃないか?
別に毎日顔を合わせる必要もない。
行事や夜会の時だけ我慢すればいいと思ったんだろう。こっちはご免だけどな。」
「……使用人の方々が苦労しそうですものね。」
公爵夫妻もそれを危惧して嫁として受け入れたくなかったのではないかしら。
「あら?でも、この話のどこが伯父様たちの態度に繋がるのですか?」
伯父様たちの、私たちの再会が嬉しくてたまらないだろう?といった温かい目は何なの?
「それは、私たちが運命の出会いをして婚約したと知れ渡っているからだ。」
オルビスが言うには、国王に婚約の承認を得る前に噂になるように話したことが伝わっているという。
オルビスは王女と婚約する前に、今回婚約することになったアミディアと出会っていた。
それはオルビスの初恋で、アミディアにとってもそうだった。
2人が一緒に過ごした時に花冠で結婚の約束をしていたのに、オルビスは王女との婚約が決まってしまった。
子供の口約束なんて、大人にとっては可愛い思い出話のような扱いをされた。
その後、アミディアも婚約をして、2人の約束は過去のものとなっていた。
オルビスが婚約を解消しても、アミディアは別の男と婚約している。
学園を卒業すると聞き、アミディアの幸せそうな姿をコッソリ見るつもりで隣国を訪れた。
すると、アミディアも婚約を解消したばかりだった。
運命を感じ、すぐさまアミディアに求婚をした。
アミディアはその場で喜んで求婚を受けてくれて、その場にいた隣国の王太子にも祝福された。
彼女の両親もオルビスのことを覚えていてくれて、結婚を喜んでくれた。
そう、幸せそうにオルビスは周りに語ったという。
……ほとんど嘘じゃない?
「ちょっと脚色はしているけれど、そんなにズレてはいない。
昔、私は確かにアミディアが可愛いと思って一緒に遊んであげていた。
花冠を頭に乗せてやると、君は『花嫁さんみたい?』と嬉しそうに聞いてきた。
だから『なら僕が花婿になるよ』と私は答えた。
そして手をつないで親たちのところに行って『オル様と結婚するの~』と君は言った。」
「……え?ほんとに?……『オル様』って……あ、そう、だったかも。」
『オル様』と聞いて、花冠と一緒に少し思い出した。
初恋だったかどうかはわからないけれど、一緒に遊んでくれた年上の男の子が優しくて楽しかった。
ということは、確かに脚色はあるけれど、辻褄は合う。嘘とは言い切れない?
伯父様たちも私の母もあの場にはいたと思う。
求婚された夜にオルビスが両親に語ったことは作り話かと思っていたけど、母がすぐ信じたのは花冠と求婚のことを覚えていたから?伯父様たちも。
「つまり、お互いが初恋同士で、婚約者がいない状態で運命的な再会をして婚約。
この噂が広まっているから、伯父様たちはそれを信じていて嬉しそうなのね?」
オルビスがニヤッと笑った。
その噂を否定するわけにはいかない。つまり、アミディアはそう振る舞う必要があるということだ。
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